2013年04月05日

●「中国国有企業の実態はどうなのか」(EJ第3521号)

 津上俊哉氏の本から、中国の国有企業のデータの一部をご紹介
します。中国の国有企業の富の配分の一端を示すデータです。
―――――――――――――――――――――――――――――
           社数 資産総額    売上  利益
      全企業           1121429 73714
    全国有企業 144700  854000   392500 25800
   中央直轄企業   117  608048   342653 20821
              資産総額/売上の単位:億元
 ─津上俊哉著「中国台頭の終焉」/日経プレミアシリーズ
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国の国有企業の中心に、国有資産管理監督委員会──国資委
が直轄する117社の中央直轄企業があります。この117社の
中央直轄企業の企業業績は上記の通りですが、全国有企業に対す
る割合を示すと、次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
        資産総額 ・・・・ 71%
        売上総額 ・・・・ 87%
          利益 ・・・・ 81%
―――――――――――――――――――――――――――――
 つまり、この117社は「国有企業のなかの国有企業」といわ
れ、全国有企業の富の大半を占める典型的なロング・テール構造
になっている──このように津上俊哉氏は述べています。
 この中央直轄企業は、1990年代までは中国経済の弱点であ
るといわれていたのです。赤字経営、債務の返済不能、経営効率
の悪さと余剰人員、社会的負担などさまざまな問題を抱え、どの
ようにして、社会的動揺を招かないようにこれに大ナタを振るう
かが課題とされてきたのです。
 ここで、ちょっと話が横道にそれますが、イアン・ブレマーと
いう米国の経済学者をご存知でしょうか。
 イアンの頭脳明晰さは際立っていて、24歳のときに、名門ス
タンフォード大学で政治学の博士号を取得したのです。天才経済
学者といわれるローレンス・サマーズ氏ですら、ハーバード大学
で博士号を取ったのは27歳のときなのです。
 イアン・ブレマー氏が「世界経済フォーラム(ダボス会議)」
について、面白いことをいっているのです。ダボス会議には、米
国と中国が顔を出していないのですが、その理由について、次の
ようにいっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国は、国際会議にノコノコ出てきて、そこでヨーロッパ人に
 民主主義や資本主義について説教されるのが嫌なんです。アメ
 リカは、自分でルールを作るのが大好きなので、ヨーロッパ人
 が主催する舞台にわざわざ参加する気があまりない。今年の会
 議では、日本が大きな存在感を示しましたが、世界で最も影響
 力を持つ中国とアメリカのプレゼンスがない場所だということ
 は覚えておいた方がいいでしょう。 ──イアン・ブレマー氏
     http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35113?page=2
―――――――――――――――――――――――――――――
 そのブレマー氏は、これまで中央直轄企業の課題解決に四苦八
苦していた中国について、西側陣営に次のように警告を発してい
るのです。中国の「国家資本主義」が西側自由主義陣営の脅威に
なりつつあるという指摘です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国は国家の利益を追求するために国有企業を経済に関与する
 手段として使っているとして、中国の体制を「国家資本主義」
 と名づけた。そして「国家資本主義」のモデルがロシア、中東
 アフリカにも広まりつつあり、アメリカなど西側自由主義陣営
 の脅威になりつつある。      ──イアン・ブレマー氏
            ──丸川知雄東京大学教授の論文より
 「中国の国有企業/「問題」から「パワー」に転換したのか」
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、中国が1990年代後半からの実施した国有企業改革の
理念を忘れずに「国退民進」を現在も続けていれば、イアン・ブ
レマー氏が指摘するように、その経済モデルは西側陣営の脅威に
なっていたと思われます。欧米諸国の経済が好調でないため、余
計にそれが目立ってしまうのです。
 しかし、企業業績が好調になり、多くのカネが入って来るよう
になると、国有企業の経営陣がお手盛りで高給を取るなどの無駄
遣いや、公費を私物化するなどの腐敗が進み、それが社会の批判
を浴びるようになっているのです。
 今年の全人代で「腐敗の防止」が何回も強調されていましたが
全人代に集まっている共産党幹部自身がそういう腐敗を起こして
いる当事者なのです。彼らまたはその家族は、国有企業に何らか
のかたちで関わっており、甘い汁を吸っている幹部が多くいるの
です。したがって、それができなくなる改革を進んでやるはずが
ないのです。つまり、既得権益を守ろうとするからです。
 国有企業を所管する国有資産管理監督委員会(国資委)は、最
初のうちこそ「国退民進」を行っていましたが、現在では「国家
企業権益」の代弁者として、国有セクターのダウンサイジングに
反対する存在になっています。
 しかし、どこの国にもいえることですが、国有企業というもの
は、効率の良くない企業なのです。マサチューセッツ工科大学ス
ローン・スクールの華人教授である黄亜生氏によると、国有企業
が借り入れている銀行融資の利息を民営企業の水準まで引き上げ
たらどうなるかという試算をしているのです。
 それによると、国有企業の利潤はほとんど消えてしまうといわ
れます。特権や市場独占に擁護されている国有企業は、銀行利息
程度の利益しか出せないことを意味しているのです。中国は今こ
そ「民」でできることは「民」にやらせる民営化を進め、「国退
民進」を進めないと、収入分配が悪化し、国を衰退させる要因に
なると思われます。         ── [新中国論/19]

≪画像および関連情報≫
 ●国有企業の負の遺産を清算できるか/日経ビジネスO
  ―――――――――――――――――――――――――――
  中国の大手国有企業が抱える「負の遺産」に関する記事をお
  届けします。1990年代後半に市場経済が本格的に導入さ
  れるまで、中国の国有企業は従業員とその家族の教育、医療
  年金などを政府に代わって丸ごと面倒を見ていました。そこ
  に改革のメスを入れたのが朱鎔基前首相です。90年代末か
  ら2000年代初めにかけて、営利事業と非営利事業の分離
  や地方の国有企業の民営化などが大幅に進みました。しかし
  「国有企業の中の国有企業」と呼ばれる中央企業(中央政府
  直轄の大手国有企業)では、抜本的な改革が今日まで先送り
  にされてきました。政府の保護で経営基盤が安定していたこ
  ともありますが、中国経済の急成長とともに業績がどんどん
  拡大し、危機感に乏しかったことも大きいと思います。中央
  企業を所管する国資委が、今このタイミングで負の遺産の精
  算加速を打ち出した狙いはどこにあるのか。ことによると、
  中央企業のなかには経営が見かけよりもずっと脆弱で、ひと
  たび景気が減速すればたちまち窮地に陥るところが少なくな
  いのかもしれません。今や世界中で資源や企業を買いあさっ
  ている中国の国有企業ですが、その実態を慎重に見極める必
  要がありそうです。
  http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110218/218487/
  ―――――――――――――――――――――――――――

イアン・ブレマー氏.jpg
イアン・ブレマー氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
安倍内閣の正体は小泉鮫島売国汚職棄民テロ内閣【安倍内閣は200兆円建設国債発行国際汚職犯行するために誕生した】
http://blog.goo.ne.jp/ikariyax/e/1bbf3b09dd298c28bb0d000839905608
大阪庶民さんとやら、不正選挙で誕生した小泉チルドレン安倍内閣のとんでもない超巨額のトンネル汚職外患誘致犯罪を
わざと見えないふりをして、しょうもない書き込みごくろうさんですねw
日本人庶民は正直なものでっせ。
日本国政府が200兆円もの建設国債が発行できるんなら何故それを東北福島の復興へあてないのか?
日本人庶民なら誰でも311復興へ国債発行すべきだと思っているのに安倍(小泉竹中)自公連立内閣はそれをせずに、
なぜ小泉純一郎と李明博(大阪生まれの大阪育ち韓国前大統領でんがな、彼もかつては大阪庶民だったですなw)が
日本国憲法にも国際法にも違反して日本国国会に内緒で国際間密約談合した国境侵犯外交破壊トンネル着工超巨額
汚職プロジェクトなんぞに、東北福島含む全国の日本人庶民が納めた税金からなんで200兆円も支払わにゃならんのか?
大阪庶民さん、あんさんなんでかわかりまっか?
Posted by 東行系 at 2013年04月06日 12:52
「安倍棄民内閣の正体」
安倍は対馬の200兆円トンネル汚職さえ達成すればあとはどうでも良いのです。
日本が地位協定とTPPで国も人も全部アメリカの核兵器の牧場と奴隷になろうと、
沖縄がグアムのような未編入米国領米軍基地になろうと、尖閣が中国領になろうと
竹島が韓国領になろうと、日本の漁業も農業も医療も工業も文化芸術も全部崩壊しようと、
小泉純也(旧姓鮫島;田布施出身)の息子小泉純一郎と池口惠観(旧姓鮫島:田布施出身)が
李明博(今上天皇不敬発言で有名な元大阪庶民前韓国大統領小泉純一郎のそっくりさん)と
共謀して、出戻り現総理安倍晋三(祖父岸信介:田布施出身)に命じた建設国債200兆円発行
政策さえ達成すれば、彼らの血縁の源統一教会への忠誠と莫大な献金功績が認められる。
これでいつでもさっさと安倍は政権放棄できます。あとはCIAが望む橋下徹を首相にするよう
に前原と石原が創価選管と創価奇形司法を使って国内工作に励むでしょう。統一は名を捨てて
実利=200兆円建設国債を手に入れたというわけです。
この破廉恥が安倍晋三が明治新平民先祖達に躾られた結果であることはいうまでもあり
ません。親が日本人なら先祖代々「親父の小言」で躾けられているからこんな反道徳無躾
無節操な人間にはならなかった。安倍晋三も小泉純一郎も前原誠司も石原慎太郎も 橋下徹も
麻生太郎も鳩山菅野田も羽毛田も竹中もみな日本が恥ずべき破廉恥漢です
http://iiyama16.blog.fc2.com/blog-entry-4116.html#comment1438
Posted by 東行系 at 2013年04月07日 22:02
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