が、どのような特色を持っているのでしょうか。現代中国研究家
の津上俊哉氏の本からまとめると、3つの特色があります。
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1.政府および国有企業(広い意味での官)が多くの経済資源
と富を支配・所有している。
2.政府に広範かつ強力な許認可権限と莫大な予算が集中して
資源の配分を制御している。
3.政府は審判であると同時に執行者であり、多くの基幹産業
を国有企業が独占している。
──津上俊哉著「中国台頭の終焉」/日経プレミアシリーズ
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実は2010年頃から西側先進国の間では、国家資本主義が大
きな関心の的になっていたのです。なぜなら、資源エネルギー、
メディア、金融、インフラ開発などの分野では新興国を中心に国
営企業の進出が激しいからです。なかでも中国の国営企業のプレ
ゼンスは目立っていたのです。
英エコノミスト誌は、株式市場においても国営企業のプレゼン
スが大きくなっていることを伝えています。中国株式市場では時
価総額の80%、ロシア市場でも時価総額の60%を国営企業が
占めているのです。
リーマンショック後において、カバナンスやコンプライアンス
によってがんじがらめにされた先進国の企業のCEOは、中国を
はじめとする国営企業の怒涛のような進出に、一種の「羨望感」
すら抱いていたのです。
前参議院議員の田村広太郎氏は、先進国の民間企業の悩みにつ
いて、次のように述べています。
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先進国の民間企業は、新興国の国営企業を真似することはなか
なかできない。執行役と取締役が分離され、強力なガバナンス
の下にある。株式市場は短期での業績向上を求めるため、目先
の損失を気にすることなく、長期戦略を考えるのは難しい。世
界の英語メディアの中には、「先進国の純粋な民間企業は、も
はや新興国の国営企業にかなわないのではないか」との論調も
ある。なぜなら、先進国の民間企業はリーダーシップをどんど
ん失っているからだ。数々のスキャンダルが明るみに出て、そ
の対処療法としてガバナンスを強化した結果、欧米の大企業は
民主的になりすぎた。この結果、経営者はリーダーシップとオ
ーナーシップを同時に失いつつある。
──「国家資本主義に“羨望”を感じる欧米CEO」/
田村耕太郎の「経世済民見聞録」/日経ビジネス・オンライン
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確かに西側先進国企業のCEOは、企業経営に窮屈感を感じて
いることは確かなようです。何かというと、コンプライアンスの
遵守が叫ばれ、執行役と取締役の分離によるガバナンスの強化、
それに透明性の向上と、四半期ごとの厳しい業績のチェックをク
リアしなければならないからです。
さらに多くの企業では、社外取締役がいて、それが外国人であ
るケースも多いのです。企業のCEOは、そういう社外取締役を
含めて、強いリーダーシップを発揮しないと、意図する経営が困
難になるという事態も考えられるのです。
しかし、田村耕太郎氏は、新興国の国家資本主義は、曲がり角
にきていることを指摘しています。その理由として3つのことを
上げています。
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1.国営企業で国際ブランドを構築できた企業は存在しない
2.国営企業には非効率な資金の運用や腐敗の可能性がある
3.国営企業の待遇は破格であるが、優秀な人材がとれない
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第1は、「国営企業で国際ブランドを構築できた企業は存在し
ない」ということです。
国営企業の場合、技術や人材を買って、一気に製品をコピーす
るのは上手なのですが、次のブランドにつながるイノベーション
が起こせないのです。イノベーションは、機動的な小さい組織の
方が生まれるのです。
第2は、「国営企業には非効率な資金の運用や腐敗の可能性が
ある」ということです。
ロシアのプーチン大統領の個人資産は実に5兆円といわれてい
ます。これだけの巨額な個人資産は、国営企業を通じて作られた
ものといわれます。独裁には腐敗がつきものなのです。なぜなら
国営企業は国民のチェックを受けない企業なのです。
国家資本主義の国では、欧米の自由主義国で経験を積み、高度
なスキルを持つ人材と、政府高官との間で経営をめぐる深刻な対
立が生まれているといいます。これは、中国だけでなく、中東や
シンガポールでも見られる現象です。
第3は「国営企業の待遇は破格であるが、優秀な人材がとれな
い」ということです。
優秀な人材は自由な環境において育つものです。そういう意味
において、何かと制約の多い環境に好んで長くいる人材は少ない
のです。したがって、外部からどんなに優秀な人材を連れてきて
も、その能力をフルに発揮できないのです。
また、国営企業を重視する国は、国営企業に低利で融資する関
係上、国民が受け取る利息が低く抑えられており、配当すらしな
い企業も少なくないのです。そのため、国営企業がどんなに利益
を上げても、国民には直接の恩恵はないのです。
また、中国のように、生産を過熱させるために大気汚染の酷い
環境になったりして、国民が豊かさを実感し、安心して住める環
境ができにくいのです。こういう国では優秀な人材が定着せず、
流出してしまう可能性が高いのです。このように、国家資本主義
は明らかに大きなかべに突き当たっているのです。そのため、内
需を増進させられないのです。 ── [新中国論/17]
≪画像および関連情報≫
●国家資本主義の中国/地場・旬・自給
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中国が世界の経済の牽引に成っている。ということが言われ
る。中国14億の人口の動向が世界に大きな影響を与える。
インド、パキスタン、バングラデッシュは中国を凌駕する人
口で、これから世界経済に強い影響を与え始めるだろう。そ
れはどちらかと言えば、負の影響だと考えられる。今膨れ上
がる人口を背景に消費が増加する。その需要と、より安い労
働力を期待して、進出するグローバル企業。資本主義経済が
崩壊する過程で、自国を空洞化しながら、発展途上国に進出
する企業形態。遠からずその構造も崩壊すると考えておいた
方がいいだろう。エネルギー使用の増大。食糧生産の限界。
近い将来全体の経済構造が大きく変わると見ておかなければ
ならない。経済が下り坂になれば競争はさらに深刻に激しく
なる。韓国のように、グローバル企業を絞り込み、国家とし
て一体化して競争を勝ち抜く方法を取る国は増えるだろう。
韓国は様々な国内の問題を、切り捨ててこの先鋭化に突き進
むことを選んだようだ。そして、一定の成功と、国内には深
刻な問題を内包しているはずだ。
http://blog.goo.ne.jp/sasamuraailand/e/b61a442cde7dd9f1871cd45f3287005f
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田村 耕太郎氏