2007年03月06日

これは桶狭間の戦い−−孫社長(EJ第2033号)

 ソフトバンクの戦略を中心にケータイ戦争の実態を描く――こ
れが今回のテーマであり、全体で30回程度を考えていたのです
が、41回になってしまいました。このテーマは本日をもって終
了いたします。
 孫正義という経営者は、業界の革命児であるとか、風雲児であ
るとかいわれ、社内では何事でも独断専行で進める――そういう
ようなイメージが孫正義氏には付きまといます。
 2006年6月のことです。その日、ソフトバンクの株式総会
の後で、旧ボーダフォンの社員総会があったのです。そのとき、
孫社長は次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 普通にやっても勝てっこない。われわれは奇襲でいく。これは
 桶狭間の戦いなんだ。           ――孫正義社長
       ――週刊『東洋経済』2006.11/25より
―――――――――――――――――――――――――――――
 孫社長のやり方は非常に早いといわれます。即断即決でどんど
ん決めて行く。例を上げると、「ソフトバンク同士のメールはす
べて無料にしたい。できるかどうか返事してくれ!」。このよう
に何かを思いつくと、次々と幹部社員のケータイを鳴らします。
 「調べないといけないことがたくさんある。すぐには返事はで
きない」と幹部社員が返信すると、孫社長は「わかった。それな
ら、時間をやろう。5分後に返事してくれ」という具合です。
 そして、幹部社員のやりとりで納得のいく返事が得られないと
本部長を一同に集めて緊急会議が夜中に開かれるのです。そして
「その返事は朝にくれ」というのです。とても寝ているヒマはな
いのです。そのスピードは尋常なものではないのです。
 ソフトバンクモバイルでインフラを担当している宮川潤一取締
役は、孫社長の経営について次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ヤフーBBのときとスピードそのものは変わっていない。孫さ
 んはボールを直球でドーンと投げて、翌日までに投げ返してこ
 いという。そのリズムを理解していない人は急にエイリアンに
 侵略されたといって、相当胃を悪くするでしょうね。正直いっ
 て辞めた人も結構いる。でも、残った人たちがまた新しい血を
 集めながら形にしていく、というのは今までもやってきている
 ので、僕らは慣れていますけど。
       ――週刊『東洋経済』2006.11/25より
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、実際の孫社長のイメージはかなり違うようです。それ
は『プレジデント』/2007年2月12日号のユニクロの柳井
正社長と孫正義社長との対談を読むと、よくわかります。ちなみ
に柳井正氏は、ソフトバンクの社外取締役をしています。柳井氏
は孫社長のことを次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ソフトバンクの役員会は活発ですよ。外から見ていると、ソフ
 トバンクという会社は孫さんがひとりで全部決済しているよう
 な印象がある。だが、実際の役員会はみんなが議論して、物事
 を決めている。ソフトバンクの役員会に出ていると、孫さんは
 人の意見に耳を傾ける経営者だと感じます。  ――柳井正氏
       ――『プレジデント』/2007年2月12日号
                     プレジデント社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 孫社長は何でも即断即決といわれていますが、必ずしもそうと
はいえないのです。今回ソフトバンクがMNP制度に合わせて打
ち出したソフトバンク同士の「通話・メール料金0円」にしても
けっして思い付きの施策ではなく、相当考え抜かれており、利害
得失を練り上げた施策なのです。
 また、スタート直前まで、孫社長と数人の役員しか知らなかっ
たといわれていますが、もしそうだとしたら、システム開発がで
きるはずがないのです。今回の作戦に関与した関係者はかなりい
たはずであり、その関係者全員が秘密保持契約を結んで制度構築
に取り組んだのです。もちろん取締役会にもかけられ、柳井氏を
はじめとする社外取締役の意見も聞いているはずです。
 もうひとつソフトバンクは、NTTドコモやauに比べると、
ヨドバシカメラやビックカメラなどの量販店と太いコネクション
があるのです。ソフトバンクは1981年の創業から取り組んで
いるPC向けソフトウェアの流通で70%近いシェアを持ってお
り、携帯電話事業ではじめて付き合いのできたドコモやauとは
違うのです。
 また、ADSLサービスの「ヤフーBB」では、販売した代理
店には、その加入者が脱退するまで、継続的に手数料が入る仕組
みになっていて、ソフトバンクと量販店とは長い付き合いがある
のです。こんな話があります。MNP開始の朝、孫社長は秋葉原
のヨドバシカメラのイベントに出て挨拶するや、直ちに有楽町の
ビックカメラに行っています。この孫社長の行動は両量販店から
懇願された結果だというのです。
 今後の日本における通信戦争を考えるとき、ソフトバンクと巨
大量販店との深いつながりは、シェア戦争の行方に大きな影響力
をもつことになります。ソフトバンクが微温湯から熱湯に変わろ
うとする水槽から、いち早く飛び出すことができたのも、ソフト
バンクがこれらの強力販売店とのつながりがあり、今までとは違
う販売方法をとっても大丈夫だという確信が持てたからだと思う
のです。既にソフトバンクとドコモ、auの販売方法は、はっき
りとした違いが出てきていると思います。
 ソフトバンクの社外取締役の柳井氏は、孫社長が取締役会で提
案する案件のほとんどに否定的見解を示し、ブレーキ役を果たし
ているといわれますが、ボーダフォンの買収案件には積極的に賛
成したといいます。ボーダフォンの買収以降のソフトバンクの行
動には目をみはるものがあります。現在、日本の電話業界は大き
な転機にあるのです。       ・・・ [通信戦争/41]


≪画像および関連情報≫
 ・イー・モバイル携帯電話事業に参入
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  千本CEOは、現在の携帯電話市場が飽和状態にあるとの指
  摘を否定し、「携帯電話の普及率はまだ70%。海外では1
  人で2〜3台持つような普及率100%以上の国が少なくと
  も5カ国はある。電話モバイルでは100%が上限かもしれ
  ないが、新しい技術が出てきた時には今まで想定できなかっ
  たことがたくさん起こる」と述べて、「2年後を見ていて下
  さい」と市場開拓やシェア獲得への意気込みを語った。
  http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/26492.html
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posted by 平野 浩 at 04:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ケータイ通信戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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