2013年03月29日

●「投資の失敗で中国中に鬼城が増大」(EJ第3516号)

 リーマンショックは2008年9月15日にリーマンブラザー
ズが破綻したことによってはじまったのです。これは中国経済が
グローバル経済に密接に組み込まれるようになってはじめて遭遇
した未曽有の世界経済の大異変であったといえます。
 これによって中国では、沿海の輸出産業で、少なくとも、20
00万人近い農民工が職を失い、中国人もまるで空が落ちて来る
ような恐怖感を味わったのです。
 これに対して中国は直ちに4兆元(当時のレートで57兆円)
の途方もない財政出動を決めて、経済景気刺激策を導入したので
す。額が巨大であるだけに、従来どちらかというと、重厚長大産
業に設備投資して、後で過剰設備問題が深刻化したものですが、
その轍を踏まないように、次の3つに重点を絞って資金を投入す
ることに決めたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.都市インフラ ・・ 鉄道、道路、空港など
 2.  民生関連 ・・ 農村インフラ、医療衛生、文化教育
 3.    環境 ・・ 省エネ、環境保護
―――――――――――――――――――――――――――――
 4兆元の調達内訳は、中央財政から30%に当る1兆1800
億元を拠出し、残る財源は地方政府の金融借り入れによって調達
したのです。そして、この資金需要を賄うために、2009年か
ら空前の規模の金融緩和措置がとられたのです。
 このとき、中国の4大国有銀行──中国銀行、中国工商銀行、
中国建設銀行、中国農業銀行を中心に、合計17の国有金融機関
が、一斉に土木工事の巨大プロジェクト、マンション建設などに
対し、貸し付けを行ったのです。何しろ党から命令が出ているの
で、採算を度外視してジャンジャン貸し付けを行ったのです。
 経済性や効果などを無視し、とにかく「ハコモノを先に作れ」
ということで、これによって、空前の規模の不動産投機ブームが
到来したのです。これは実に劇的な効果を及ぼし、先進国経済が
苦しんでいるのを尻目に、中国だけがひとり勝ちの回復を成し遂
げたのです。
 しかし、その後遺症も深刻なのです。それは当然です。膨大な
数のデベロッパーが現れ、それらの会社のほとんどは、党幹部の
何らかの息がかかっている企業なのです。銀行は、党のコネがあ
ると、要求通りに資金を貸し出し、デベロッパーは、その資金を
使って採算性を度外視してハコモノを作る。これを繰り返すと、
何が起きるでしょうか。
 その結果、膨大な数の廃墟と化したハコモノが林立するゴース
トタウンが中国中にたくさんできたのです。このゴーストタウン
のことを中国では「鬼城」(グイチェン)と呼んでいます。建物
が林立しているが、住民のいない街や進出企業のない工業団地な
どを意味しています。鬼の棲む城というわけです。
 なかでも2011年4月5日号の「タイム」誌が写真入りで報
道した内蒙古オルドス郊外にあるカンバシ地区の鬼城が大変有名
ですが、それを実際に見学した中国研究家の宮崎正弘氏は、その
様子を次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 機内からパオトウ市全体を概観できた。いやはや飛行場付近は
 幽霊都市の趣きが強く、誰も入居していないマンション群が、
 ニョキニョキと林立している。鳥肌が立つほどに恐ろしい風景
 である。筆者は毛沢東の「大躍進」のネガフィルムを見ている
 ような錯覚を抱いた。そうか、中国のバブル破裂は飢餓が実態
 だった「大躍進」の裏返しか。オルドスからタクシーを雇い、
 草原の大地に忽然として開発されたカンバシヘ。中国各地の不
 動産バブル破裂状況のなかでも、このカンバシこそは世界中に
 報道された悪名高きゴーストタウン。ともかく砂漠に蜃気楼の
 ごとく突然、百万都市が出現したのだ。区役所、党委員会ビル
 学校、商店街、医院、ショッピング・アーケード街に映画館、
 豪華ホテル。人工首都ブラジリア並みと騒がれた。「経済急発
 展の中国、さすが実際にカンバシ新区の現場に立つと中国全土
 から「観光客」がうじゃうじゃと「廃墟」を見に来ているでは
 ないか。             ──石平/宮崎正弘共著
  「2013年の『中国』を予測する」/WAC BUNKO
―――――――――――――――――――――――――――――
 こうなったからくりを整理します。銀行はデベロッパーにお金
を貸すのですが、デベロッパーに直接貸すのではなく、○○開発
公社というのができて、銀行はそこにお金を貸すのです。
 公社はデベロッパーに命じて建設をするので、党にからんでい
るデベロッパーはあまりリスクはないのです。当然売れないので
不良債権は開発公社にストックされることになります。
 この開発公社はおよそ1万社あり、その99%は赤字経営で、
経営が成り立っていないのです。しかし、金を貸した国有銀行と
この1万社の開発公社は潰したくても潰せないのです。
 ある欧米系のシンクタンクの予測によると、中国の銀行の抱え
る不良債権は、最低でも邦貨換算で160兆円、最悪の予測では
260兆円といわれます。現在売れ残っているマンションだけで
も投資金額残高は70兆円もあり、これらは回収不能です。
 問題は、これをどのようにして処理するかです。現在、中国政
府は、固定資産税の導入を考えて、温州、上海、重慶などで実験
をしているのです。ヒントは日本です。日本の税収に占める固定
資産税の割合はかなり大きいので、思い付いたのです。
 しかし、本来中国では土地は国のものであり、固定資産税を取
るのはおかしいのです。その考え方を捨てるわけにはいかないの
で、使用権を現在の50年から75年にするのです。きっとそれ
を100年にするでしょう。
 さらに不良債権は、不良債権処理機関を作って、銀行に溜まり
に溜まっている不良債権をすべてそこに移動する方法です。しか
し、この手は朱鎔基首相のときに一度やっていますが、もう一度
やるのです。しかし、日本の国鉄の場合は民営化したのですが、
中国の場合、それはできないのです。 ── [新中国論/14]

≪画像および関連情報≫
 ●内蒙古省はゴーストタウンだらけに/パッピーブログ
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  中国バブル破綻の象徴=オルドスの鬼城(ゴーストタウン)
  の隣も。パオトウ東河区の開発区もバブル破裂、責任者ふた
  りが自殺の悲惨。内蒙古省オルドスに現れた「鬼城」(ゴー
  ストタウン)は世界のマスコミが報じた。百万都市ができて
  役所、学校、商店街、医院、ショッピング・アーケードに映
  画館。ブラジリア並みと騒がれて、世界の取材陣が飛んだ。
  「ところが住んでいる人はいない」と『タイム』誌がカラー
  グラビアで特集・報道した。オルドスは人口が150万。新
  開発区は、隣接する砂漠に建設した新造都市で、カンバシ区
  (康巴什区)。旧市内からバスで一時間ちかくかかる。もと
  もと高度成長にともなって需要がのびた石炭で、内蒙古省の
  パオトウからオルドスの景気が沸騰し、おまけにレアメタル
  相場が三十倍に跳ね上がり、「石炭成金」と「レアメタル成
  金」。「さぁ、次は新都心建設で儲けよう」とかけ声も勇ま
  しく、地元の起業家や行政側が強気の読みをしたのも無理は
  なかった。2003年頃から建設が始まり、07年頃までの
  地盤改良と造成期間だから土地の価格が上昇し続けていた。
  http://mituo-sangakukai-happy.at.webry.info/201206/article_109.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

中国/オルドス市の鬼城.jpg
中国/オルドス市の鬼城
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「アメリカの正体」

《悲報》 東京 ガチで超絶汚染されていたことが判明!!!!!!!!! (原発問題) 
http://www.asyura2.com/13/genpatu30/msg/871.html

90. 2013年3月29日 22:48:50 : rWn9PLlcps (ちょっと推敲)
沖縄を除く日本列島隈無く死の灰で被曝、がユダ金フリーメーソンの至上命令である。
過去2発の(3発との説もある)原爆投下でも為し得なかった本土放射能化を、福一一つでヒロシマ型原爆300発ぶんという大量の死の灰を日本の本土すべてに各地の原発からのと併せて拡散させてアメリカ建国以来の虚仮の一念で達成しようとしているだけだ。
まーこの期に及んでまでごちゃごちゃ言っとらんで、さっさと日米地位協定を破棄してやれば、たったの10分で本土と沖縄がいっぺんに明治時代以前並みにきれいになるよ。ユダ金CIAに占領されている朝鮮半島モナーw

92. 2013年3月29日 22:55:26 : rWn9PLlcps
>>90が正しいという証拠の長周新聞記事
辺野古埋立て申請を強行 米軍に基地差出す売国ぶり 
>>http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/beigunnikitisasidasubaikokuburi.html


「危険保障」の日米安保 沖縄戦で基地奪い

 アメリカは沖縄戦で1500隻の艦船と55万人の兵力を動員し、18万7000人も大殺戮して沖縄を奪いとり基地にした。それから戦後67年へた現実は、新しく基地を整備して永続的に居座り続け、日本中を核攻撃の標的にさらす危険な現実が浮き彫りになっている。
 沖縄侵攻にさいしてアメリカがやった「アイスバーグ作戦」では沖縄戦の任務を「沖縄を解放し、基地として整備し、沖縄諸島における制空、制海権の確保」と規定。当時の沖縄戦米艦隊司令官ハルゼーは「ジャップを殺して殺しまくれ。もしみんなが自分の任務を立派に遂行すれば各人が黄色い野郎どもを殺すのに寄与することになる」と檄を飛ばした。当時の米陸軍参謀長マーシャルも「戦後に予想される紛争地域のなかに黄海周辺がふくまれる。従って琉球に基地を置き、残りの地域を非軍事化して友好国にゆだねることが望ましい」とのべている。
 1945年8月15日付のニューヨーク・タイムスは「太平洋の覇権をわが手に」と題して「われわれはペルリ(ペリー)以来の願望を達した。もはや太平洋に邪魔者はいない。これで中国大陸のマーケットはわれわれのものになる」との記事を掲載した。アメリカは明確に沖縄、そして広島、長崎に原爆を投げつけ、全国空襲で焼き払って日本全体を占領し、中国の侵攻拠点とする目的をもって武力で基地を奪いとった。
 そして戦後67年間、日本を占領し続けたうえまだ沖縄や岩国に新たな基地増強を押しつけている。「日米安全保障」の現実は「危険保障」である。それがTPPで対中国包囲網をつくって日本の富を根こそぎ奪いとり、日本全土を基地化する米軍再編を強行してアジア諸国との対立を煽り、あげ句の果てはアメリカのための対中国戦争の盾となる屈辱に通じている。
 失業や生活苦など国民生活でのあらゆる苦難の根源は敗戦後から続くアメリカの日本支配、国益を売り飛ばす日米安保体制を軸にした売国政治にある。日本とアジアを再び原水爆戦争の火の海にさせないため米軍基地を撤去させ、日本の独立・平和をめざす生産点を基礎にした全国的な下からの大衆行動が求められている。
Posted by 東行系 at 2013年03月30日 00:00
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