2013年03月18日

●「薄熙来はなぜ失脚させられたのか」(EJ第3508号)

 中国の全人代/2013で、閣僚人事が明らかになってきてい
ます。しかし、本稿執筆中の17日午前時点ではすべてが判明し
ていないので、これについては改めて述べるとして、薄熙来事件
についてさらに述べることにします。
 薄熙来はもともと上海派の江沢民の支持は取り付けていたので
すが、胡錦濤主席からは疎まれていたのです。そこで、胡主席を
追い込むために、汪洋の腹心である重慶市の司法局長の文強を王
立軍に命じて逮捕し、死刑に処したのです。司法局長というポス
トは、検察官と裁判官の上なのです。それを死刑にしたのですか
ら、凄いことであるのです。
 しかし、これが裏目に出たのです。既得の利益集団の頭目であ
る江沢民が薄熙来に距離を置きはじめたことです。さらに最大の
誤算だったことは王立軍が米国領事館に亡命したことです。これ
を理由として中国共産党は薄熙来を切ったのです。
 それでは王立軍はどうして米国領事館に亡命することになった
のでしょうか。
 まず、中国共産党は、薄熙来を切るために、王立軍副市長兼公
安局長の捜査を開始したのです。その捜査の目的のなかに、薄熙
来の妻の谷開来の殺人容疑がからんでいたのです。
 中国共産党の捜査を知った王立軍は薄熙来にそのことを打ち明
けたのです。これを知った薄熙来は非常に残酷な処置を下したの
です。それは、王立軍の役職である副市長兼公安局長から公安局
長職を解任し、副市長のまま教育を担当させたのです。これは事
実上解任されたのと同じであり、このままだと、中国共産党に逮
捕され、汚職や谷開来の殺人疑惑まで押し付けられると、命が危
ないと考えたのです。
 王立軍としては命の保証が欲しかったのです。そのためには、
何らかの事件を起こして世界中のニュースにすることです。そう
すると、事件は大きく報道されて国際問題になります。そうする
と、中国は簡単に王立軍を処分できなくなります。そこまで考え
た王立軍は、成都にある米国総領事館に亡命したのです。
 果たせるかな、中国の要人が米国総領事館に亡命するなど前代
未聞の出来事であり、国際問題になったのです。これで、中国は
王立軍を処分できなくなります。
 実際に王立軍は総領事館から1日で出されています。当然亡命
申請を受けた米国は、徹底的に王立軍から事情を聴取して、中国
と交渉しています。その結果、米国と中国との合意ができたから
こそ、領事館を出されたのです。しかし、王立軍にとっては、命
の保証はとれたものの、中国での政治活動はできなくなることは
必至です。
 習近平副主席(当時)はそれから8日後に訪米しています。お
そらく王立軍は、習近平訪米のスケジュールを計算に入れたうえ
で、亡命したのだと思います。
 それでは、薄熙来の妻の殺人疑惑とは何でしょうか。薄熙来の
一家は、ニール・ヘイウッドという英国人のビジネスパーソンと
親しく、薄熙来が遼寧省にある大連市長のときからの知り合いな
のです。薄熙来の長男が英国のオックスフォード大学に留学する
さいにもヘイウッドの世話になっているのです。
 ところが突然ヘイウッドは亡くなるのです。当初死因は過度の
アルコール中毒ということで火葬されたのですが、後から、彼に
飲酒の習慣がないことが明らかになったのです。そうなると、殺
人の疑いが出てくるのです。
 そこで英国政府は、中国共産党に調査要請を出したのです。さ
らに、英国政府も重慶にある米国領事館を通じてヘイウッド殺人
事件の調査をはじめています。薄熙来一家の周辺は、俄かに騒が
しくなったのです。そういうときに王立軍が四川省の成都の米国
総領事館に駆け込んだのです。
 2012年4月10日付の「新華社通信」は、中国の警察当局
が、英国人実業家ニール・ヘイウッドを殺害した容疑で、薄熙来
の妻の谷開来と使用人張暁軍が逮捕されたことを伝えています。
薄熙来に共産党当局の捜査が身近に迫っていたのです。
 結局判明したことは次のことです。薄熙来・谷開来夫妻は60
億ドル(約4800億円/当時)という不正蓄財を行い、海外送
金をしていたことが発覚したのです。そのさい、ヘイウッドが送
金先の口座開設などを手伝っています。
 その後谷開来とヘイウッドの間で何らかのトラブルがあって、
谷開来は秘密を知るヘイウッドを殺害したというものです。真相
のほどは不明ですが、今のところこういう説が有力になっている
のです。これによって、薄熙来の中央政界への返り咲きはほぼ絶
望になったのです。しかし、こういう不正蓄財は共産党の多くの
幹部がやっています。既に中国は終りとみて、海外に脱出した共
産党幹部も大勢いるのです。
 胡錦濤はケ小平の教えを受けており、それを忠実に実行してい
る思慮深い人物です。彼が今回のトップ交代でも忠実に守ったの
は、ケ小平の次の教えです。
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        我慢せよ。ナンバー2でもよい
                 ──ケ小平
―――――――――――――――――――――――――――――
 蓮舫議員の「2位はじゃ駄目なんでしょうか」とはまるで違う
意味ですが、ケ小平がいうのは、「一番は相手にとらせよ。二番
目を取ればよい。それで国が安定する」ということです。
 今回の習近平体制でも胡錦濤はケ小平の教え忠実にを守ってい
ます。見た目はほとんど上海派の江沢民寄りの人物が圧倒的に多
いですが、要所は押えています。
 国の最高意思決定機関である常務委員会の構成人数が9人から
7人に削減されましたが、その7人のなかの共青団は李克強ただ
一人ではあるものの、首相に押し込んでいます。胡錦濤が期待し
ている汪洋は4人いる副首相の1人に就任しています。これもか
たちを変えたケ小平式の2位戦略であると思われます。
                  ── [新中国論/06]

≪画像および関連情報≫
 ●薄熙来の妻 政変計画で重要な役割/大紀元
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  2012年2月、元重慶市副市長の王立軍が成都市の米国領
  事館に駆け込む事件が発生し、米国メディアにより、重慶市
  トップの薄煕来と中央政法委トップの周永康の政変計画が暴
  露された後、4月、薄煕来が解任された。その後の中共内部
  の通達では、薄煕来は「深刻な汚職問題」「殺人関与」「政
  変計画」に関与していたことが伝えられた。薄熙来の件は未
  遂に終わった政変である。本紙(中国語版)情報筋によると
  法輪功を積極的に弾圧してきた江沢民や周永康、薄煕来らは
  如何にして中共次期トップの習近平を2年以内に倒すかを企
  んだ。中共18大でまず先に政法委書記のポジションを確保
  して武装警察部隊の兵力を強化し、世論を作り、所謂「重慶
  モデル」の政治綱領などを宣伝し、各方面で「機が熟した」
  後に習近平を降ろして逮捕するというものだった。この政変
  はすでに半分の過程まで進んでいたが、王立軍の米領事館駆
  け込み事件ですべてが水泡に帰した。最近本紙(中国語版)
  が独自に入手した情報によると、谷開来はこの政変計画の中
  で重要な役を担当し、またイギリス人のヘイウッドも彼女に
  協力し、海外で関連の仕事をしていたという。
   http://www.epochtimes.jp/jp/2012/08/html/d34902.html
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薄熙来/谷開来夫妻.jpg
薄熙来/谷開来夫妻


posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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