2007年02月26日

KDDI首都圏の光ファイバー網を確保(EJ第2027号)

 このテーマになってからのEJブログの一日の総ページピュー
は上昇しています。一日1000回以下の日は1月は3日、2月
になってからも3回のみ――いずれも900回台でほとんど毎日
1000回以上を記録しています。2月21日には2510回を
マーク−−それだけ多くの方に読まれているということになりま
す。したがって、中途半端では終われなくなっています。
 ここまでソフトバンクとNTTを中心に書いてきたのですが、
今後の通信戦争を考えるとき、NTT対抗軸の最右翼に位置する
KDDIについても知っておく必要があります。NTTを追撃す
る先頭にいるといっても、NTTの連結売上高が10兆円である
のに対し、KDDIはせいぜい3兆円であり、収益規模の面では
KDDIはNTTに圧倒されているのです。
 そのKDDIの社長である小野寺正氏の口ぐせは「NTTから
自由になりたい」ということ――これは小野寺氏の夢なのです。
その意味は、NTTのネットワークに頼っている限り、われわれ
はNTTの基盤の上でしかサービスを展開できない――だから、
NTTから自由になりたいということなのです。
 そのKDDIは、2006年10月12日の夕刻、小野寺社長
のその夢の実現に一歩を大きく踏み出したのです。それは、一年
間にわたる交渉のすえ、KDDIに東京電力の光ファイバー事業
を統合することが正式に決まったからです。
 光ファイバーはユーザの自宅まで線を引き込まなければならな
いのです。しかし、KDDIはNTT東西地域会社のように電柱
をはじめ地下トンネルであるとう道や管路を持っていないため、
ユーザー宅まで光ファイバーを引こうとすると莫大な投資と時間
がかかってしまうのです。
 NTT東西の光ファイバーを借りる手もありますが、それでは
とてもNTTと勝負にならないのです。この事情はKDDIだけ
ではなく、ソフトバンクも同じ状況にあるのです。しかし、NT
T東西は目下急ピッチで光ファイバーを引いている――何か打つ
手はないかと小野寺社長は考えたのです。そして目につけたのが
東京電力の光ファイバーだったのです。
 東京電力の光ファイバー事業を統合したことによってKDDI
は、東京電力管内だけとはいえ、首都圏という日本最大の消費地
域において、膨大な規模の光ファイバー網を手に入れたことにな
ります。これでKDDIは、首都圏においてはNTTとまともに
戦える状態にになったといえます。
 KDDIは、光ファイバーと携帯電話を組み合わせた「FMC
サービス」や、家庭内の電灯線を使って通信する「高速電力線通
信」を組み合わせて、NTT東西とは一味違うサービスを提供し
て首都圏でのシェアを30%確保することを目標にしています。
 しかし、KDDIは自前のインフラを手に入れたことにより、
新たなリスクが生じたという見方があります。なぜなら、東京電
力の光ファイバー事業はこの3年間で、数百億円規模の赤字――
2004年度は306億円、2005年度は358億円――を出
しているからです。
 しかし、KDDIは業績が好調な携帯電話事業を抱えており、
それと連携するかたちで光ファイバー事業を進めれば、十分事業
を発展させることが可能です。KDDIとしては携帯電話事業に
特化させた方が高収益体質を作れることは確かですが、携帯電話
事業の今後のあり方を考えるとき、自前のインフラを持つことは
携帯電話事業を発展させるうえでも不可欠なのです。
 しかし、KDDIには別の意味のリスクもささやかれているの
です。それは、東京電力の光ファイバー事業を統合するさいの過
程で出てきたリスクなのです。
 実はKDDIは、東京電力の光ファイバー事業を統合するちょ
うど一年前に東京電力と包括提携を結んでいたのです。しかし、
そのとき決まっていたのは、東京電力の通信子会社である「パワ
ードコム」をKDDIが吸収合併することであり、光ファイバー
事業は東京電力とKDDIが協業するということだったのです。
 ところが、パワードコムの買収において、交渉は難航していた
のです。それは、パワードコムの企業価値の算定において、KD
DIの望む買収額と東京電力の売却額には大きな開きがあったか
らです。何回交渉を重ねてもこの開きは一向に縮まらず、合併は
破談寸前までいったのです。小野寺社長としては、社内には合併
反対勢力もおり、簡単に買収額を下げられなかったのです。
 この事態を憂慮した東京電力の交渉担当のトップは、東京電力
の勝俣社長に交渉の状況を説明し、援助を仰いだのです。勝俣社
長は、直ちに小野寺社長と連絡を取り、トップ同士の交渉をはじ
めたのです。そして、交渉は急転直下まとまったのです。
 トップ会談で何が交渉されたかは不明ですが、東京電力はパワ
ードコムを高めに売却する代わりに、光ファイバー事業を差し出
したのではないかといわれています。複数の証券アナリストの意
見をまとめると、株式交換の比率とKDDIの株価から算定する
と、パワードコムの株価は明らかに高く評価されていたといって
います。
 もともとKDDI社内には、東京電力との提携には消極的なグ
ループがおり、交渉は小野寺社長の社長権限による決断で決まっ
たのです。したがって、もしこれによってKDDIの業績が落ち
るようなことがあると、小野寺社長の責任問題にも発展する恐れ
があります。これが、東京電力との交渉の過程で生じたKDDI
のリスクというわけです。
 東京電力との関係強化によって、東京電力はKDDIの持ち株
比率を増やし、京セラ、トヨタ自動車に続く第3位の株主に浮上
します。この株主構成の変化がKDDIの意思決定にどのような
影響を与えるかが不透明である――こういう指摘をする専門家も
いるのです。いずれにしても小野寺氏は社長の在任期間が長く、
2005年6月からは会長も兼任しており、権力が小野寺社長ひ
とりに集中し過ぎているとの批判もあり、社内は一枚岩になって
はいないのです。         ・・・ [通信戦争/35]


≪画像および関連情報≫
 ・KDDIとパワードコムの合併比率
  ―――――――――――――――――――――――――――
  KDDIとパワードコムの合併比率は、KDDIが1に対し
  てパワードコムが0.0320で、合併に伴い発行する新株
  式数は、普通株式が18637648株。ただしKDDIが
  保有するパワードコム株式9897.34株については、合
  併に際してもKDDIの株式を割り当てない。合併終了後の
  東京電力の出資比率は4.81%となる。
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/10/13/9470.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

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posted by 平野 浩 at 04:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ケータイ通信戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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