2003年04月17日

●地上波デジタルは本当に成功するのか(EJ第1088号)

 2003年12月から、関東、中部、近畿の3大広域圏で、地
上波デジタル放送が始まることになっています。しかし、この地
上波デジタル放送――本当にうまく行くのでしょうか。
 地上波テレビというのは、東京タワーのような送信塔から電波
を発信し、いくつもの送信所を経由して、電波が伝えられるので
す。アナログ波は波を描いて進むので、ある程度は弾力的に進ん
で行くのですが、途中で電波が弱くなるので、それを補強し、中
継するための送信所が必要になります。現在、関東地区だけでも
200ヶ所近い送信所があります。
 それにもかかわらず、東京23区で直接アンテナを立ててテレ
ビを視聴している世帯は、全体の40%ぐらいのもので、残りの
60%の世帯は、ケーブルかマンション共聴で見ているのです。
アナログ波にしてこの有様なのです。
 それがデジタル波(UHF波)では、非常に直進性が強いので
相当高いところから飛ばさないと電波が届かないのです。関西地
区のように、親局が生駒山の山頂近くにあって、その下に街が広
がっているような場合は、相当広範囲に電波は届きますが、関東
平野とか、名古屋の濃尾平野のようなところでは、よほど高いテ
レビ塔を建てるか、どこか遠いところにある山の上に電波塔を建
てないと対応できなくなります。しかし、東京にはそういう適当
な山がないのです。
 電波塔を現在の東京タワーの倍ぐらいの高さにする計画もある
そうです。しかし、それでも親局から飛ばせる範囲は、せいぜい
横浜ぐらいなのです。そのため、中継基地としての送信所を現在
の倍以上に増やす必要が出てくるのです。しかし、それだけの投
資をNHKと民放キー局5社といえどもやる体力はないと考えら
れます。
 もともと東京タワーというのは、当時のVHFテレビ7局が、
東京を中心とした関東一円(北は水戸、東は銚子、南は沼津、西
は甲府)をサービスエリアとして電波を送る場合に333メート
ルあればOKということで、昭和33年に建設・開業されたはず
なのですが、専門家の話によると、かなり多くの世帯がケーブル
でテレビを視聴しているようなのです。
 もっとも333メートルという高さは、そういうもっともらし
い計算の根拠というよりも、エッフェル塔の320メートルを抜
きたかったことや開業年の昭和33年に合わせたかったというの
が真相ではないかということもいわれています。
 さて、2003年12月の時点で地上波デジタル放送が始まっ
ても、それを視聴できる地域は限られているはずです。せっかく
地上波デジタル放送対応のテレビを購入しても、視聴できるのは
NHKの総合放送とBSデジタル、東経110度CSだけという
エリアはかなりあるはずです。私が住んでいる埼玉県などはそう
なるでしょう。
 しかし、本当にそうなるとしたら、相当な苦情がテレビ受像機
を購入した販売店――ビックカメラなど――に殺到することにな
ります。本当は販売店に苦情を持ち込んでも意味はないのですが
文句のもっていきどころがないので、当面そのホコ先は販売店に
向けられるはずです。
 BSデジタル放送やCSと違って、2003年12月から始ま
る地上波デジタル放送は、現在、アナログで放送している番組を
2011年まではデジタルで流すだけです。これを「サイマル放
送」というのです。これが、テレビ局としては一種の「逃げ」に
なります。「テレビは視聴できます」というわけです。
 考えてみれば、最初に出てきたときのテレビは、6チャンネル
――NHK総合、NHK教育、NTV、TBS――までしか映ら
なかったのです。当時は、テレビ放送用に使える電波の帯域が限
られていたからです。
 その後、テレビ放送用の帯域が増やされて、フジテレビ、テレ
ビ朝日、テレビ東京が出てきたのです。当然のことながら、12
チャンネルまで映るテレビは、それに合わせて発売されたのです
が、当時テレビは高価な家電であったため、6チャンネルまでし
か映らないテレビと12チャンまで映るテレビは、しばらくの間
共存すすることになります。
 関東地方でのカバー率を見ても、NHKは別として、日本テレ
ビやTBSが95%くらいカバーしていたときに、フジテレビと
テレビ朝日は60%くらいのカバー率だったのです。テレビ東京
にいたっては、最初のうちは、中継局が少なかったことにより、
視聴できない地域は多くあったのです。
 したがって、地上波デジタル放送の場合も、2003年12月
から始まるにしても、2011年まではサイマル放送を続けなが
ら、少しずつカバー率を上げていく計画なのでしょう。したが
って、地上波デジタル、BSデジタル、東経110度CS対応の
受像機が登場しても、BSデジタルやCSを見たい人は別として
あせって購入しない方が得策というものです。
 ところで、現在販売されているデジタルテレビには、「B−C
AS」という機能が搭載されています。
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    B−CAS=BS−Conditional Access System
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 BSデジタル放送の受像機1台ごとに1枚ずつ固有のID番号
を持つB−CASカードがついてきます。このカードは、BS放
送局と視聴者を結ぶ役割をします。BSデジタル放送は、高画質
と双方向サービスが売りものですが、ユーザ登録はがきを郵便局
に投函して、B−CASカードを受信機に挿入し、テレビと電話
線をつなぐと、双方サービスが受けられるのです。
 すべてのテレビにB−CAS機能がつくと、NHKの視聴料を
払わないユーザのテレビのNHKの番組には、「視聴料のお支払
いにご協力ください」というテロップが始終流れて、テレビ画面
が見ずらくなるような処置がとられるということです。
 ところで、地上波デジタル放送の難視聴対策には、「光波長多
重技術」という切り札があるのです。
               −−− [デジタルTV/09]



posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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