2007年02月23日

総務省が変身しようとしている(EJ第2026号)

 1985年から87年にかけて、政府は「3公社」を次々と民
営化していったのです。3公社とは次の3つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   日本国有鉄道   ・・・・・ JRグループ
   日本専売公社   ・・・・・ 日本たばこ産業
   日本電信電話公社 ・・・・・ NTT
―――――――――――――――――――――――――――――
 このうち、日本電信電話公社の民営化を担当したのが、「第二
行政臨時調査会」です。この調査会では、1982年の時点で、
日本電信電話公社については、組織分割が必要であるとして、次
の結論を出していたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 電電公社ほどの独占性と巨大さと併せ持った公社を民営化する
 なら分割するのが当然である。   ――第二行政臨時調査会
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、民営化する直前になって、分割は当面見送りになり、
「組織を民営化後、5年以内に見直す」という条件がNTT法に
明文化されたのです。このようにして、1985年に日本電信電
話公社は民営化されたのです。
 ところが、民営化してから5年後の1990年にはNTT分割
論は本格化せず、見直し規定は延長されたのです。そして、さら
に5年後の1955年、郵政省での大議論のすえ、1997年に
現在の組織形態になったのです。
 議論はNTTのすさまじい抵抗でなかなかまとまらなかったの
ですが、苦肉の策として持ち株会社制の導入によって決着がつい
たのです。そのとき、決着の条件としてNTT側から持ち出され
たのが、組織見直し規定の事実上の廃止です。
 どういうことかというと、今後郵政省(現総務省)はNTTの
組織問題には口を出さないという暗黙の了解です。その後、長年
にわたって、この暗黙の了解が総務省がNTTの組織問題を持ち
出すことを縛ったのです。
 その長年のタブーを破ったのが竹中総務相(当時)なのです。
彼はNTTと総務省の暗黙の了解を無視して、NTT組織改革に
向けて信じられないスピードでダッシュしたのです。
 竹中委員会発足の時点で、2006年9月には小泉首相と一緒
に引退することを決めていた竹中総務相は自分がいなくなった後
もNTT組織問題が前進する担保として次の2つのことが必要で
あると考えたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.NTT改革案を実効性のあるものにしておくこと
  2.自分の後任の総務大臣について配慮しておくこと
―――――――――――――――――――――――――――――
 1に関しては、昨日のEJで述べたように、NTT改革案に関
して政府与党合意を取り付けて実効性を持たせることに成功して
います。政府与党合意は、政府の経済財政運営の基本方針「骨太
方針2006」に盛り込まれて、政府として検討することが明確
に決まったことになります。
 しかし、肝心の竹中総務相がいなくなれば、この政府与党合意
文書を生かすも殺すも、竹中の後任の総務大臣しだいということ
になります。もし、総務大臣にNTT派が選ばれると、竹中委員
会の努力は水泡に帰してしまうことになります。
 しかし、驚くべきことに竹中総務相はこれにも手を打っていた
のです。それは、竹中の下で総務副大臣を務め、すさまじいNT
T派の圧力にも屈せず、竹中総務相を助けた菅義偉副大臣を後任
の総務省としてしかるべき筋に推薦していたのです。これが2の
対策です。
 小泉政権を引き継いだ安倍首相は、小泉の改革路線を継承する
とし、菅を総務大臣に任命したのです。管総務相は、就任挨拶で
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 竹中大臣の下で副大臣として、懇談会(竹中委員会)にも毎回
 出席して、一緒に方向性を出してきた。竹中さんが決めたこと
 は『政府与党合意』にしっかり書いてある。広範なテーマを一
 気にやるわけだから、大変なエネルギーが必要だけれども、着
 実に形にしていくつもりだ。         ――菅総務相
 ――日経コミュニケーション編『2010年NTT解体』より
                       日経BP社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここまで竹中委員会の話をしてきましたが、この委員会の発足
より前に総務省はもうひとつ、懇談会を設置し、竹中委員会と平
行して審議を積み重ねてきているのです。その懇談会は「IP懇
談会」と呼ばれてきたのですが、正式名称は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会
―――――――――――――――――――――――――――――
 この懇談会の構成メンバーは13人ですが、竹中委員会のメン
バーの林敏彦氏も入っています。この懇談会は、総務省が「通信
政策や制度の大幅見直し」のために立ち上げたもので、竹中総務
相の就任が明らかになる3日前の2005年10月28日からは
じまっています。
 IP懇談会については長くなるのでEJでは取り上げないが、
どういう内容が検討されたのかを知りたい方は、上記の長い懇談
会面をグーグルの検索窓に入れて検索すると先頭に出てきます。
 当初IP懇談会では、NTT組織問題を俎上に載せたいと考え
ていたのですが、竹中が総務相になってから、竹中委員会がスタ
ートし、そちらで組織問題をはじめたので、それに合わせるかた
ちで議論を進めてきています。
 いずれにせよ、2010年に向かって、日本の通信業界は大き
な局面を迎えます。通信事業者は従来の電話網からIPネットワ
ークへの移行を進めるからです。  ・・・ [通信戦争/34]


≪画像および関連情報≫
 ・竹中総務相の後任の菅総務相
  ―――――――――――――――――――――――――――
  日本の情報通信の技術力は本当に素晴らしい。GDPの成長
  分野に占める情報通信の割合は4割に上る。自動車産業と並
  ぶ産業になってもおかしくない。国際競争に打ち勝てる総合
  戦略を考えるつもりだ。          ――菅総務相
  ―――――――――――――――――――――――――――

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posted by 平野 浩 at 04:38| Comment(0) | TrackBack(0) | ケータイ通信戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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