円)と発表しました。日本の防衛関連予算の約2倍であり、AS
EAN10ヶ国の総軍事費の約4倍に当ります。
しかも、その予算の多くを海洋権益保護に使うというのですか
ら、日本にとって大変な脅威になります。2012年度は、「列
島線突破訓練」と称して、沖縄本島と宮古島の間を抜けて西太平
洋に出る軍事訓練を7回も実施して、近くに基地を持つ日米を牽
制しているので、今年はもっと派手にやる可能性があります。
実は中国にとってはこの海峡がかなめなのです。尖閣諸島はそ
の喉元に位置しているのです。ここを中国に取られると、中国の
原潜はゆうゆうと西太平洋に出てこれるので、米国の安全保障に
大きな影響を及ぼすのです。
もし、中国が本気でこのあたりの海洋を押えようと思ったら、
釣魚島のような岩礁の占領ではなく、宮古島、石垣島、下地島に
同時侵攻するはずです。この3つの島には、米軍も自衛隊の戦闘
部隊も駐屯していないのです。
この3つの島を取られると、そこに潜水艦基地ができ、中国の
核弾頭搭載の原潜がノーチェックで太平洋に出られるのです。し
かも、下地島には、3000メートルの滑走路があり、日本の南
西航路帯を完全に押え込むことができるのです。
中国がそんな明らかな侵略をするはずがないと考える日本人は
少なくないでしょう。しかし、中国は沖縄も中国領だといってい
るのです。したがって、これらの3つの島を侵略することぐらい
平気でやると思われます。
しかし、沖縄に米軍基地があり、米軍の力が強大である限りは
中国はすぐには仕掛けてこないでしょう。そのための尖閣諸島へ
の揺さぶりなのです。尖閣にプレッシャーをかけて、日本がどう
対応するか、米国がどう出てくるかを試しているのです。
日本にとって頼みは同盟国である米国です。米軍が強い間は中
国は手を出してこないでしょう。しかし、その米国のオバマ政権
は、大統領をはじめ、国務長官も国防長官も中国寄りなのです。
ケリー国務長官は、オバマ大統領のアジア戦略について記者に
聞かれ、次のようにコメントしています。
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オバマ大統領のアジアへの旋回戦略は支持するが、日本の米
軍基地は多過ぎる。 ──ケリー国務長官
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国防長官のチャック・ヘーゲル氏は、議会の猛反対でやっと就
任を承認されたのですが、米国の代表的な保守系週刊誌「ウイク
リー・スタンダード」のフレッド・バーンズ編集長は、ヘーゲル
氏について、次のように述べています。
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ヘーゲル上院議員は反ペンタゴン、反米軍派だ。朝鮮戦争が
始まったときのジョンソン国防長官と同じように、米国の国
防政策を混乱させる恐れがある。 ──バーンズ編集長
―――――――――――――――――――――――――――――
それに加えて「sequestration」 問題があります。「政府予算
を一律10%カットする」あの措置のことです。そもそもこれが
実行されると、とくに国防予算においては「ヒト・モノ・カネ」
すべての面において、現場で大混乱を招く恐れのあるとんでもな
い仕組みになっているのです。
なぜ、この措置が設けられたのかは、この措置の「トンデモナ
サ」が、きっと共和党と民主党の双方から一定の譲歩が引き出せ
るだろうとの思惑のもとに設けられたものだったのです。
もっとも昨年の暮れまでは、とくに国防費について、パネッタ
国防長官やカーター国防副長官が先頭に立って、「強制削減が起
きると、米軍の能力や抑止力にとって壊滅的な影響が出る」「軍
の能力が空洞化してしまう」というメッセージを出していたのが
功を奏し、政府予算削減はやむを得ないものの、国防費への影響
は最低限に抑えようという雰囲気が出ていたのです。
それが今年に入って雰囲気が一変します。受け入れムードに変
化したのです。そして、遂にオバマ大統領は「sequestration」
にサインしています。これが覆る可能性は、ほとんどないといえ
ます。米国は、どうして変わってしまったのでしょうか。
オバマ大統領は、第1期目の4年間で、大幅に防衛費を削減し
ている大統領です。彼はそれを福祉費に投入するという、きわめ
て内向きの政治をやってきています。そのため、外交には熱心な
大統領ではないのです。そういうことから、大方の予想ではオバ
マ大統領の2期目はないといわれてきたのです。ところが大きく
支持を落としたものの、2期目もオバマ政権になったのです。こ
れは日本にとって最悪の情勢です。
2期目の大統領は、選挙をしなくてよいので、自分がやりたい
と思っていたことをやるのが通例です。そうすると、防衛費から
福祉費へのシフトはさらに大きく進むと思われます。それに対し
て、中国は毎年防衛費を増大させていますので、米中のパワーバ
ランスは大きく変化することは間違いないのです。
一方の中国は、2017年にもGDPで米国を抜き、世界第1
位の経済大国になるといわれています。米国が今回の歳出カット
で経済が低迷すれば、さらにそれは早まる可能性もあります。日
本はどのように対処すればよいでしょうか。
2012年10月1日から、5ヵ月8日106回にわたって書
いてきた今回のテーマは、本日で終わります。しかし、来週から
は、中国をテーマとして書くことにします。というのは、中国経
済にいくつも変化のサインが出ているからです。
なかには、「中国がGDPで米国を抜く日は来ない」というこ
とまでいう人が出ています。中国は今後どうなるのでしょうか。
米国や日本は、中国に対してどのように向き合って行くべきなの
でしょうか。そういうテーマについて書くつもりです。長い期間
にわたって今回のテーマのご愛読を心から感謝いたします。11
日からの新テーマもよろしくお願いします。
── [日本の領土/最終回/106]
≪画像および関連情報≫
●「中国がGDPで米国を抜く日は来ない」/津上俊哉氏
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中国人はいま「GDPで米国を抜く日は来ない」といわれて
もすぐには納得できないだろう。だがいまの中国経済が「成
長市場」の化粧を落としたら、何ほどの魅力と優位性が残さ
れるのか、胸に手を当てて考えてみてほしい。中国は未だに
国民の3分の2に満足な公共サービスを提供できていない。
また少子高齢化が迫り来るのに、年金原資の積み立てもほと
んどないではないか。日中いずれも軍拡競争などをやってい
る時間も経済的余裕もないのであり、尖閣「国有化」を巡っ
て両国が互いに外交・経済関係を傷つけ合っている現状は、
愚かのきわみというほかはない。 ──津上俊哉著
「中国台頭の終焉」/日経プレミアシリーズ
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ケリー国務長官/ヘーゲル国防長官
天皇陛下は16日、東日本大震災の被災者や国民に向けたビデオメッセージを発表された。陛下がビデオでお気持ちを述べられるのは初めて。お言葉の全文は次の通り。
◇
この度の東北地方太平洋沖地震は、マグニチュード9・0という例を見ない規模の巨大地震であり、被災地の悲惨な状況に深く心を痛めています。地震や津波による死者の数は日を追って増加し、犠牲者が何人になるのかも分かりません。一人でも多くの人の無事が確認されることを願っています。また、現在、原子力発電所の状況が予断を許さぬものであることを深く案じ、関係者の尽力により事態の更なる悪化が回避されることを切に願っています。
現在、国を挙げての救援活動が進められていますが、厳しい寒さの中で、多くの人々が、食糧、飲料水、燃料などの不足により、極めて苦しい避難生活を余儀なくされています。その速やかな救済のために全力を挙げることにより、被災者の状況が少しでも好転し、人々の復興への希望につながっていくことを心から願わずにはいられません。そして、何にも増して、この大災害を生き抜き、被災者としての自らを励ましつつ、これからの日々を生きようとしている人々の雄々しさに深く胸を打たれています。
自衛隊、警察、消防、海上保安庁を始めとする国や地方自治体の人々、諸外国から救援のために来日した人々、国内のさまざまな救援組織に属する人々が、余震の続く危険な状況の中で、日夜救援活動を進めている努力に感謝し、その労を深くねぎらいたく思います。
今回、世界各国の元首から相次いでお見舞いの電報が届き、その多くに各国国民の気持ちが被災者とともにあるとの言葉が添えられていました。これを被災地の人々にお伝えします。
海外においては、この深い悲しみの中で、日本人が、取り乱すことなく助け合い、秩序ある対応を示していることに触れた論調も多いと聞いています。これからも皆が相携え、いたわり合って、この不幸な時期を乗り越えることを衷心より願っています。
被災者のこれからの苦難の日々を、私たち皆が、さまざまな形で少しでも多く分かち合っていくことが大切であろうと思います。被災した人々が決して希望を捨てることなく、身体(からだ)を大切に明日からの日々を生き抜いてくれるよう、また、国民一人びとりが、被災した各地域の上にこれからも長く心を寄せ、被災者とともにそれぞれの地域の復興の道のりを見守り続けていくことを心より願っています。
(転載元:msn産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110316/imp11031617200001-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110316/imp11031617200001-n2.htm