2007年02月20日

竹中委員会はどのように運営されたか(EJ第2023号)

 竹中委員会は何もかも異例づくめだったのです。その特異性を
まとめると、次の4つになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.総務省の官僚を委員にしないで、完全事務局化
   2.利害関係のある通信・放送業界も委員にしない
   3.メンバーは座長を含めて8人を竹中大臣が選出
   4.6ヶ月以内に一定の結論を出すと竹中大臣公言
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1は、「総務省の官僚を委員にしないで、完全事務局化」し
たことです。
 大臣の諮問機関を作るには、大臣の担当する省庁が事務局にな
り、委員の人選から検討するテーマ、資料づくりなどを一元的に
行うのが普通です。こうすることによって、事務局といっても会
議の主導権が握れるからです。しかし、竹中委員会ではこうした
慣例は一切無視され、総務省は会議の日程を決めて委員に連絡す
ることや委員から要請のあった客観的資料の作成をするという文
字通りの事務局の役割をさせられたのです。
 第2は、「利害関係のある通信・放送業界も委員にしない」と
いうことです。
 委員にはNHKとNTTの幹部はすべて外され、これらの業界
に詳しい御用学者――いつも政府の委員会のメンバーになってい
る――も委員になれなかったのです。利害関係者が入っていると
議論が紛糾し、まとまらないからです。これは、誰でもわかって
いることですが、大臣によほどの度胸とリーダーシップがないと
できないことです。
 第3は、「メンバーは座長を含めて8人を竹中大臣が選出」し
たことです。
 メンバーを選定する前に竹中大臣は、この委員会の座長を決め
ていたはずです。座長は、竹中大臣が郵政民営化を成し遂げたと
きの盟友である東洋大学経済学部教授松原聡氏だったのです。お
そらく竹中大臣は松原教授と相談して他の7人のメンバーを選ん
だと思います。全メンバーは次の通りです。確かにこういう問題
を検討するのにふさわしいメンバーだと思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
  久保利英明 ・・・ 弁護士
  菅谷  実 ・・・ 慶應義塾大学教授
  林  敏彦 ・・・ スタンフォード日本センター理事長
  古川  享 ・・・ 元マイクロソフト会長
  松原  聡 ・・・ 東洋大学教授(座長)
  宮崎 哲也 ・・・ 評論家
  村井  純 ・・・ 慶應義塾大学教授
  村上 輝康 ・・・ 野村総合研究所理事長
―――――――――――――――――――――――――――――
 第4は、「6ヶ月以内に一定の結論を出すと竹中大臣公言」し
たことです。
 この8人のメンバーに対し、竹中大臣は次のようにいい、6ヶ
月以内に結論をまとめるよう指示したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 通信と放送の融合を妨げているものは何かを突き止め、通信と
 放送のあるべき姿を描き出して欲しい。   ――竹中総務相
―――――――――――――――――――――――――――――
 竹中委員会の目的が外部に伝わると、通信・放送関係者はほっ
と胸をなで下ろしたといわれます。通信・放送業界全般のあるべ
き姿を描き出すなどという大きなテーマを6ヶ月以内という短い
期間で結論を出すなんて不可能と考えたからです。
 しかし、この予測は大きく裏切られるのです。竹中委員会は驚
くべきスピードで審議が重ねられ、2006年6月に最終結論が
出されたのです。念のため、竹中委員会の14回の会議の日を次
に示しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
    第 1回会合(平成18年1月20日(金)開催)
    第 2回会合(平成18年1月23日(月)開催)
    第 3回会合(平成18年2月 7日(火)開催)
    第 4回会合(平成18年2月21日(火)開催)
    第 5回会合(平成18年3月 9日(木)開催)
    第 6回会合(平成18年3月13日(月)開催)
    第 7回会合(平成18年3月22日(水)開催)
    第 8回会合(平成18年3月28日(火)開催)
    第 9回会合(平成18年4月11日(火)開催)
    第10回会合(平成18年4月20日(木)開催)
    第11回会合(平成18年5月 9日(火)開催)
    第12回会合(平成18年5月16日(火)開催)
    第13回会合(平成18年6月 1日(木)開催)
    第14回会合(平成18年6月 6日(火)開催)
―――――――――――――――――――――――――――――
 それぞれの会合で何が議論されたかを知りたい方は、グーグル
で次のキーワードで検索すると、トップに表示されます。
―――――――――――――――――――――――――――――
   キーワード:通信・放送の在り方に関する懇談会
―――――――――――――――――――――――――――――
 第14回会合の終了後、竹中委員会は次の結論を公表していま
す。それは、明らかにNTTの現体制の大改革を時期を付けて主
張しているといってよいでしょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2010年には通信関連法制を抜本的に見直して、NTT持ち
 株会社の廃止などを含む検討を速やかに始めるべき
―――――――――――――――――――――――――――――
 この結論が出されるまで、NTT持ち株会社の和田社長は片山
虎之助議員を何度も訪ねて裏工作を重ねたのですが、委員会の論
調を弱めることはできなかったのです。・・ [通信戦争/31]


≪画像および関連情報≫
 ・竹中委員会は「NTT解体を目指すものではない」
  ―――――――――――――――――――――――――――
  松原教授は2006年2月21日の竹中懇談会の内容を受け
  て一部の新聞が「懇談会がNTTを解体方針」と報じたこと
  に「誤解が生じている。大胆な改革が必要だが,NTTの解
  体を目指すものではない」(松原教授)として議論の趣旨を
  説明した。「96年にNTTの現在の形態が決まってから既
  に10年が経過している。持ち株会社を廃止して,現在の東
  西NTT、ドコモ,NTTコミュニケーションズをそれぞれ
  個別の会社にすればいいというものでもない。県内と県外や
  固定と携帯を分けて置くことがFMCの時代に意味があるの
  か」と述べた。
  http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060222/230382/
  ―――――――――――――――――――――――――――
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posted by 平野 浩 at 04:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ケータイ通信戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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