BSデジタル放送、東経110度CSデジタル放送のすべてが視
聴できるとのことです。もちろんアンテナも1本ですべて視聴で
きます。
しかし、気になるテレビ受像機の価格は、どのくらいになるの
でしょうか。まったくアンウンスされていませんが、かなり高め
の価格になると思われます。いずれにしても、いまデジタル対応
テレビに手を出すのは、やめた方がいいと思います。
そういうわけで、地上波デジタル放送が開始されると、今まで
どちらかというと、遠いところにあったCSデジタル放送が身近
なものになることは確かです。
CSデジタル放送の最大の特色は、多チャンネルという点にあ
ります。そういう多チャンネルが、一般の視聴者にどのようなメ
リットをもたらすのでしょうか。
日本のテレビ局の今までの番組作りは、視聴率を高めようとす
る狙いから、多くの人の平均的な要望を満たす内容にならざるを
得ません。
しかし、日本は単一民族ですから、大多数の平均的内容の番組
が作成可能ですが、米国の場合は、広大な国土の中に多言語・多
民族を抱えているので、平均的な要望を満たす内容など作ること
は不可能なのです。そのため衛星放送が発達したのです。
ヨーロッパの場合は、もっと特殊な事情があります。それは、
米国と違って一定の限られた地域の中に言語も文化も異なる多数
の国々が隣接しているので、1ヶ国当りが保有できるテレビ放送
用の電波量に限界があるのです。そのため、テレビのチャンネル
数が各国とも絶対量として少ないので、多チャンネル放送に対す
るニーズが大きいのです。
しかし、日本には多チャンネルのニーズは少ないといえます。
そのため多くの国民にとってテレビといえば、地上波アナログ放
送であり、CSにもBSにも関心があまり高くないのです。そこ
で、多チャンネル放送にはどのようなメリットがあるのか少し考
えてみることにします。
多チャンネルの最大のメリットは、好きなときに見たい番組を
見られることです。今までのテレビは、放送スケジュールに自分
の都合を合わせる必要があったのですが、多チャンネルなら、自
分の都合に合わせてテレビが見られるというメリットを享受でき
るのです。
ニュースを見たい人は、ニュースばかりをやっている番組があ
るし、サスペンス・ドラマの好きな人は、今までのように、火曜
日と土曜日(火曜サスペンス劇場/土曜ワイド劇場)を心待ちに
することなく、サスペンス・ドラマばかりを放映しているチャン
ネルがある、そして、巨人戦以外の特定チームの全試合が見られ
るなど、便利なことがたくさんあるのです。
できるはずのないことができるのが現代の特徴です。できるは
ずがないと思っているものには、もともとニーズがないのです。
したがって、欲望も湧かないのですが、一度体験してしまうと、
こんな便利なものはないと考えるようになります。
しかし、日本人は有料放送に慣れていません。地上波放送では
NHKに視聴料を徴収されますが、他の民放テレビは無料であり
テレビは無料という感覚が根強くあります。だから、誰も見てい
ないのに、時計代わりにテレビをつけている家庭が多いのです。
ところで、有料放送といっても次の2つの方式があります。
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1.ペイ・テレビ
2.PPV(ペイ・パー・ビュー)
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ペイ・テレビは、有料放送を視聴するという契約を結べば、実
際に視聴者がその番組を見ていようといまいと、毎月定額の視聴
料金が徴収される方式です。逆にいえば、契約して料金を払って
いれば、あとは見放題ということになります。CSデジタル放送
の有料チャンネルは、ほとんどこの方式です。
PPVは、契約をしただけでは、料金はかからないのです。実
際に番組を視聴したときに、視聴した回数に応じて料金を支払う
システムになっています。
最近PPVの契約が伸びているのですが、劇場公開前の新作の
映画が、映画1本当り400円で見られる「試写会サービス」と
いうのが評判を呼んでいるからです。この傾向は、日本において
有料放送が少しずつ定着しつつあることを意味しています。
ところで、PPVではどのようにして番組の視聴状況を把握す
るのでしょうか。普通のテレビでは、どの番組を見たかは分から
ないはずです。
PPVは、CSデジタル受信用のチューナにモデムが内蔵され
電話回線と接続されていることが条件になります。つまり、テレ
ビ局から家庭には放送波、家庭からテレビ局には電話回線という
双方向サービスができるようになっているのです。
テレビ受像機にモデムがつき、さらにハードディスクまで内蔵
される――何となくテレビがPCに近づきつつあるような気がし
ます。実際に、松下、東芝、日立を中心とする家電メーカ連合が
設立したサービス会社の「イー・ピー」は、東経110度CS放
送を利用した蓄積型放送サービスを2002年から段階的に開始
していますが、その外付け専用チューナ「epステーション」に
は、60GBのハードディスクが搭載されているのです。
テレビとPCは、やがて一体化するのでしょうか。
ソニーの出井伸之会長が興味深いことをいっています。テレビ
とPCは仰角30度と傾角30度の違いがあるので、簡単には一
緒になれないというのです。
テレビは後ろに少しそっくり返って見るものですから仰角30
度、それに対してPCは、やや前傾姿勢になるので傾角30度と
いうわけです。確かにそういうことはいえるのではないかと思い
ます。これは、テレビでは株取引のような複雑な双方向取引は無
理であることを示唆しているような気がします。
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