2007年02月14日

NTTグループの次世代ネットワーク構想(EJ第2019号)

 NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイル――この3社の競
合は今後ますます激しいものになっていきます。その中にあって
NTTグループがどう動くかは、他社に対して大きな影響を与え
ます。NTTグループは、どのような戦略で何を目指そうとして
いるのでしょうか。
 NTTグループは、2004年11月に固定電話のIP化を発
表してします。具体的にいうと、2010年までに光ファイバー
を3OOO万回線提供して、IP技術を使う次世代ネットワーク
(NGN)を構築する「中期経営計画」を公表したのです。
 電話網のIP化――IP技術は「距離」の概念のない技術なの
です。しかし、NTTグループは1999年のNTT再編の組織
のままです。これは「距離」に対応した組織です。
―――――――――――――――――――――――――――――
          I― NTT東西地域会社
  NTT持株会社―I  NTTコミュニケーションズ
          I― NTTドコモ
―――――――――――――――――――――――――――――
 NTT東西地域会社は地域通信、NTTコミュニケーションズ
は長距離通信、NTTドコモは移動体通信、この3社を純粋持株
会社であるNTT持株会社が統括している――これが現在のNT
Tグループの組織構造です。
 この場合、NTT東西地域会社とNTTコミュニケーションズ
の3社はNTT持株会社の100%子会社なのですが、NTTド
コモの資本については約60%しか持っていないのです。NTT
の問題を考えるとき、このことを頭に置く必要があります。
 はっきりしていることは、この体制のままでは、昨日のEJで
述べたFMC――固定通信と移動体通信の融合は困難であるとい
うことです。
 NTTの推進する次世代ネットワーク構想(NGN)では、次
のようになっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 次世代ネットワークを東西NTTが構築し、2008年以降に
 東西NTTのネットワークと、NTTドコモが構築を進める次
 世代携帯電話のためのIPネットワークを一体化する。この段
 階で固定と移動がバックボーンのレベルで融合する。
               ――日経コミュニケーション編
     『風雲児たちが巻き起こす携帯電話崩壊の序曲』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この構想では、次世代ネットワーク構築の主体はNTT東西会
社ということになります。しかし、NTTドコモは、2003年
からバックボーン・ネットワークのIP化に取り組んでおり、N
TT東西会社よりその技術ははるかに進んでいるのです。
 それにもかかわらず、次世代ネットワークはNTT東西会社を
中心として進められつつあり、それは固定電話の収入減に対処す
るため新しい収入源を移動体通信に求める構図になります。これ
では移動体通信を中心にFMCを構築しようとしているKDDI
やソフトバンクには対抗できないことになります。
 なぜなら、NTTドコモはNTT東西会社の固定電話サービス
を使わなくても、インターネット接続業者などが提供するIP電
話サービスを使うことができるからです。NTTドコモ自身もイ
ンターネット接続業者であり、やろうと思えば独自でFMCを実
現できるからです。
 もうひとつNTTグループが構築を進める次世代ネットワーク
には、わからない点があります。それは、次世代ネットワークに
おけるNTTコミュニケーションズの役割です。
 NTTコミュニケーションズは長距離通信において地域通信間
を中継する役割を担っている企業ということになっています。し
かし、この企業は「OCN」というインターネット接続プロバイ
ダ事業を行うかたわら、ポータルサイト「goo」を手がけ、ブ
ログやSNSまで手を伸ばしています。
 つまり、NTTコミュニケーションズでは早い時期からIP系
サービスを多く手がけてきており、多くのIPエンジニアをかか
えているのです。NTTグループが進めようとするNGNにはそ
うした人材が役に立つはずです。
 しかし、2006年8月の事業再編においては、NTT持株会
社は、なぜかNTTコミュニケーションズを次世代ネットワーク
の構築から外し、NTT東西会社から1200人規模の法人営業
部隊をNTTコミュニケーションズに移したのです。法人営業は
各グループ会社がそれぞれやっていたのですが、それをNTTコ
ミュニケーションズに一元化し、NTTグループのワンストップ
サービスができるようにするという構想です。
 しかし、IP技術に詳しい同社の技術陣は次世代ネットワーク
の担当としてNTT東西へは異動していないのです。これは実に
不思議な話です。本来であれば、IP技術に詳しいNTTコミュ
ニケーションズがグループ内のIP系のサービスを集約し、次世
代ネットワークを一元的に担当するべきです。
 しかし、どうしてもNTT東西会社を中心として考えるNTT
持株会社の幹部はそれを嫌ったのです。そういうわけで、NGN
の構築にはNTTコミュニケーションズを一切かかわらせず、販
売会社にするという案が激論のすえ採択されたのです。
 それにNTT持株会社は、もうひとつ大きなミスをしているの
です。昨年、通信に関わる国際規格を決める団体ITU――国際
電気通信連合の電気通信標準化局長選挙において、万全の根回し
で送り出した井上友二氏(NTT持株会社取締役)が3回目の選
挙で落選してしまったことです。
 しかも、その上の事務総局次長は中国、その上のトップ事務総
局長はアフリカに奪われてしまったのです。これは、NTT持株
会社の失敗というより、日本外交の敗北といってよい結果です。
 このような経緯から、NTTクループの次世代ネットワークは
失敗するといわれているのです。 ・・・・ [通信戦争/27]


≪画像および関連情報≫
 ・次期電気通信標準化局長、英国のジョンソン氏に決定
  ―――――――――――――――――――――――――――
  トルコ共和国アンタルヤで開催されている――本部・スイス
  連邦ジュネーブ――全権委員会議において、現地時間の11
  月14日(火)午後4時45分(日本時間同日午後11時45
  分)より、同電気通信標準化局長選挙が行われ、英国のジョ
  ンソン氏が投票数の過半数である82票を超える83票を獲
  得し、ITUの次期電気通信標準化局長に選出された。
  ―――――――――――――――――――――――――――

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posted by 平野 浩 at 04:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ケータイ通信戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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