2007年02月13日

固定電話と携帯電話の融合が進む(EJ第2018号)

 2007年1月末の時点で、日本の携帯電話とPHS(以下、
ケータイ)を合わせた契約総数が一億件を超えました。正確にい
うと、1億22万45OO件――2007年1月1日現在の日本
の人口は1億2千7百75万人ですから差を取ると、2752万
5500万人がまだケータイを持っていない計算になります。
 しかし、このうち9歳未満の子供は1815万3OOO人、さ
らに80歳以上の老人が669万6000人――これらの人はケ
ータイを持っていないと考えると、9歳以上、80歳未満の人で
ケータイを持っていない人はわずか937万2500人となって
しまいます。ほぼ国民一人一台のケータイを持っているといって
も過言ではない状況になっています。
 ところで、昨年の10月26日からスタートしたMNP制度に
よるケータイの顧客の奪い合い競争はどうなったでしょうか。ス
タート前の下馬評では、ソフトバンクはドコモとauの草刈り場
になり、その分を吸収してauは突出、ドコモは多少顧客数を減
らすものの、ソフトバンクの吸収分でそれを最小限に抑えるとい
われていたのです。
 しかし、実際はそうなっていないのです。一人負けになってい
るのはソフトバンクではなく、NTTドコモなのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ≪1月の携帯電話3社の純増減数≫
               全体   うちMNPの分
  NTTドコモ    +7000   −9万8500
  KDDI   +20万8400  +10万8400
  ソフトバンク +16万4000   −1万0000
      ――2007年2月8日付、日本経済新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 auは、新規契約から解約分を引いた純増分で20万8400
件と6ヵ月連続首位であり、ソフトバンクも16万4000件と
ボーダフォン時代を含め、3年1ヶ月ぶりの10万件超えを達成
しています。MNPスタート以来、孫社長が次々と打ち出した施
策が明らかに効いています。これに対してドコモは、純増が極端
に伸び悩んでおり、深刻な状態であると考えられます。この傾向
は今後さらに拡大すると考えられるからです。
 NTTドコモの失敗の原因のひとつと考えられるのは「ワンセ
グ」に対する取り組みの意欲の低さにあります。かつてJフォン
がケータイにカメラを付けて「写メール」をヒットさせたとき、
NTTドコモの幹部は「当社はケータイにカメラはいらないと考
えている」と発言した前科があるのです。
 しかし、それから数ヶ月も経たないうちにケータイにカメラを
付けて発売しているのです。先見性がないというよりも、顧客の
ニーズを掴んでいないところがドコモの問題点です。
 既にEJ第1997号でご紹介したように、ドコモの中村社長
は「サイマル放送のままのワンセグはドコモにとってメリットは
ない」と突き放しているのです。しかし、電話はあまりかけない
が、テレビは欲しいというユーザはたくさんおり、そういうユー
ザがドコモから逃げ出していることを中村社長は知らないようで
す。顧客の視点を忘れており、すべてが他社の後追いです。これ
では、ドコモからの顧客の流出は止まらないでしょう。
 ワンセグは通信と放送の融合のひとつのかたちです。もしかす
ると、近い将来現在のケータイに当然のようにカメラが付いてい
るように、すべてのケータイにTVが付き、ワンセグが見られる
ようになっている可能性があるのです。
 日本の場合は、通信(ケータイ)と放送(ワンセグ)の融合が
ハードウェアとしては実現しつつありますが、諸外国では固定電
話と携帯電話の融合が進められつつあります。従来は別々に営ん
できた事業を統合することで、利便性を高める狙いがあります。
 これは、英国のBTフュージョンが2005年9月から開始し
ているサービスです。BTフュージョンで使われる携帯電話機は
携帯電話機能のほかブルーツゥースと呼ばれるごく短距離の無線
通信機能を備えているのです。
 この機能によって、携帯電話機を家で使うと固定電話とブルー
ツゥース経由でつながり、ブルーツゥースのエリアから外れると
携帯電話となるのです。この切り替えは自動的に行われ、携帯電
話で話しながら家の中に入ると、ブルーツゥースのエリアに入る
ので、その時点で固定電話になるというものです。これによって
どうしても割高になり勝ちな携帯電話の料金を下げる効果がある
のです。もちろん料金請求は一本にまとめられ、電話番号もひと
つで済み、固定電話と携帯電話を別々に持つ必要がなくなってし
まうのです。
 この「固定と携帯の融合」のことを、「FMC」と呼んでいま
す。FMCは次の言葉の頭文字をひろったものです。
―――――――――――――――――――――――――――――
         FMC
         Fixed Mobile Convergence
―――――――――――――――――――――――――――――
 このBTフュージョンのサービスに対し、韓国のKT、テレコ
ムイタリア、オランダのKPN、日本のNTTグループとKDD
Iもその取り組みを表明しています。
 しかし、この動きは、電話事業の発展のかたちとしてとらえる
よりも、携帯電話の普及による固定電話の減収に危機感を抱いた
固定電話業者による移動通信の取り込みとしてとらえるべきもの
です。しかし、携帯電話は端末もネットワークも技術革新が激し
い分野なのです。それを時間の流れの遅い固定電話と融合してし
まってよいのものでしょうか。
 2007年1月18日に、総務省の情報通信審議会電子通信事
業部会は「FMCサービスの導入へ向けた報告書(案)」を発表
しています。そこでは、FMCサービス用の新規番号は、「06
0」になることが記述されています。固定と通信の融合は急ピッ
チで進められているのです。   ・・・・ [通信戦争/26]


≪画像および関連情報≫
 ・FMCとは何か
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 携帯電話は便利だが,通話料やパケット代が高いのが難点。そ
 う感じている人はたくさんいるだろう。一方で,自宅から電話
 をかけるときでも,電話帳から簡単にかけられるという理由で
 固定電話ではなく高い携帯電話を使ってしまう人も少なからず
 いるだろう。こんなとき,「携帯電話を使いながら固定電話経
 由で通話できたら」なんて夢見る人もいるかもしれない。これ
 を実現するのがFMC。すなわち携帯電話と固定電話の融合で
 ある。
 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/DENWA/20050829/220191/
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FMCdg.jpg
posted by 平野 浩 at 06:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ケータイ通信戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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