2007年02月08日

不可解な日本端末のSIMロック(EJ第2016号)

 国民の90%近くが持っている携帯電話、テレビやカメラを含
む高度な機能が詰め込まれた携帯電話端末――こういうものを見
ていると、日本のケータイは世界に冠たるものであると考えてし
まいます。
 ところが実際は、日本の端末メーカーが束になっても、世界に
出ると韓国のサムソン電子や、フィンランドのノキアの1社分の
シェアにすらかなわないのです。
 どうしてこんなことになったのでしょうか。
 これは、国の通信政策と日本の支配的通信事業者であるNTT
の政策の失敗といわざるを得ないのです。その代表的な例がNT
Tドコモが採用した第2世代携帯電話の規格「PDC」です。こ
のPDC規格は日本が先行して開発しながら、それを世界標準に
できなかった規格なのです。
 それは、最新技術に異常にこだわり、急いで商用化しようとす
るNTTの体質と、NTTの海外進出を縛るNTT法によって、
PDC規格は世界標準とはなり得ず、GSM規格が世界の標準と
なったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 PDC ・・ Personal Digital Cellular
 GSM ・・ Global System for Mobile Communications
―――――――――――――――――――――――――――――
 こういう技術優先の傾向は、ADSL技術を熟知しながら電話
を守ろうとして結局失敗(認めていないが)したISDN、アナ
ログの独自技術にこだわり、世界のデジタルTV化に乗り遅れた
NHKなどにも見ることができます。
 しかし、日本がGSM規格に乗れなかったことは、後々まで尾
を引くことになります。それは海外でケータイを使う機会が非常
に多くなったことです。ケータイを海外で使うことは現在ではい
ろいろな方法で可能になっていますが、基本的には次の方法で外
国で使うことができます。
 GSM方式の携帯電話機は、次の2つの部分から成る構造をし
ているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  GSM方式の携帯電話機 = 本体 + SIMカード
―――――――――――――――――――――――――――――
 SIMカードは、他の一般的なICカードと同様にクレジット
カードサイズで提供されるのですが、ICチップの部分だけを切
り離して使うようになっています。
 なお、3Gのケータイでは、NTTドコモのFOMAとソフト
バンクでは、「W−CDMA」という規格を使っているので、S
IMカード構造になっていますし、auはW−CDMA方式では
ないものの、SIMカード構造の携帯電話機を採用しています。
 海外でケータイを使う場合は、その国のプリペイドSIMカー
ドを購入して携帯電話機にセットすれば良いのです。各国のプリ
ペイドSIMカードは、空港などでパスポートを示せば入手でき
ますが、そのカードを日本で使われている携帯電話機にセットす
ることはできない構造になっています。もちろん、SIMカード
がセットできる構造になっている日本の3Gの携帯電話機でも使
えないようになっているのです。それは、自社の以外のSIMカ
ードが使えないようにロックがかけられているからです。これを
「SIMロック」と呼んでいます。
 それではどうすればよいのでしょうか。
 各国のSIMカードがセットできる携帯電話機――つまり、S
IMロックのかかっていない携帯電話機をわざわざ購入すること
によってはじめて可能になります。NTTドコモとソフトバンク
のどちらでも利用できるSIMロックフリーの携帯電話機として
は、ノキア製の6650、7600、6630、E61の4種類
がそれに該当します。
 さて、ここからが少しややこしい話なのです。そのプリペイド
SIMカード――それぞれの各国のキャリアのものを購入して使
う場合と、日本の国際ローミングSIMカードを使う場合とでは
料金がぜんぜん違ってくるのです。
 例えば、A国のプリペイドSIMカードをA国のキャリアから
購入(A国の空港など)して使う場合について説明します。A国
に滞在してA国内の人と通話した場合は、当然ですが、国内通話
になります。もし、その電話機でA国から日本のX氏に電話する
と「端末→日本→X氏」となるので、国際通話になるのです。
 しかし、日本の国際ローミングSIMカードを使う場合、すべ
ての通話は次のように日本経由の国際電話になるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪A国に滞在してA国のB氏に電話≫
  ・端末→日本→A国→B氏の折返し国際通話
 ≪A国に滞在して日本のX氏に電話≫
  ・端末→日本→X氏の国際電話
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在では、3Gケータイの申し込みのとき、国際使用の手続き
をしておけば、自分の携帯電話機に付いているSIMカードを海
外で利用可能の携帯電話機(レンタル可能)にセットして使えま
すが、すべて国際通話になります。
 FOMAのケースでいうと、ドコモからワールド・ウイング対
応の携帯電話機をレンタルして、自分のFOMAにセットされて
いるSIMカード――UIMカードと呼称――を抜いて、そのレ
ンタルした携帯電話機にセットすれば使えるのです。
 どうして、こんなに面倒なのでしょうか。
 要するに、日本の国内で使われている携帯電話端末は、SIM
カードは付いていても、端末自体は海外では一切使えないことに
なります。逆に外国から日本へのGSM方式の携帯端末を持込使
用はできないことになっています。しかし、SIMカードは日本
国内に対応している端末を購入するかレンタルすればそれにセッ
トして使えることになります。  ・・・・ [通信戦争/24]


≪画像および関連情報≫
 ・ローミング(roaming)とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ローミングは、携帯電話やPHS、またはインターネット接
  続サービス等において、事業者間の提携により、利用者が契
  約しているサービス事業者のサービスエリア外であっても、
  提携先の事業者のエリア内にあれば元の事業者と同様のサー
  ビスを利用できることをいう。    ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

SIMロック
posted by 平野 浩 at 04:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ケータイ通信戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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