2007年01月30日

携帯電話は全二重か半二重か(EJ第2009号)

 通信の専門用語に「全二重通信」と「半二重通信」というのが
あります。トランシーバという通信機器がありますが、この通信
機器は、こちらが話しているときは、相手は話すことはできませ
ん。どちらか一方向しか話せないので、切り替えながら通話を行
うことになります。これを「半二重通信」といいます。
 これに対して固定電話は双方向で話すことができます。相手が
話しているときにこちらも話すことができるのです。これを「全
二重通信」というのです。整理しておきましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
     半二重通信 ・・・ half duplex 片方向
     全二重通信 ・・・ full duplex 双方向
―――――――――――――――――――――――――――――
 それでは携帯電話はどちらだと思いますか。全二重通信でしょ
うか。それとも半二重通信でしょうか。
 実は両方あるのです。携帯電話が採用する方式によって、どち
らもあり得るのです。
 携帯電話では、次の2つの方法で双方向通信を実現させている
のです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     時  分割複信・・ TDD/半二重通信
     周波数分割複信・・ FDD/全二重通信
―――――――――――――――――――――――――――――
 TDDというのは、1つの周波数を使って高速にデータの送信
方向を切り替えて双方向を実現します。時間軸で周波数を分割す
るので、「時分割複信」(Time Division Duplex)といっていま
すが、周波数はひとつですから、半二重通信です。
 TDDの場合、データ通信では多少通信が途切れることがあっ
ても最終的にひとつのファイルにまとめられるので問題はありま
せんが、音声通信ではそういうわけにはいかないので、切り替え
が高速に行われる必要があります。
 そのため、携帯電話でTDDを採用するときは、かなり高めの
周波数を利用する必要があります。高い周波数を使うと、一度に
送れる情報が多くなり、非常に短時間で送信と受信のタイミング
を切り替えられるので、音声が途切れることはないのです。
 TDDを採用している代表的な例にPHSがあります。PHS
は、1.9GHzという高めの周波数を使っているので、データ
通信に向いているうえ、通話も途切れることはないのです。
 もう一つの方法はFDDです。これは送信用と受信用のそれぞ
れ2つの周波数を使って双方向通信を実現する方法で、「周波数
分割複信」(Frequency Division Duplex) といわれます。この
方法では、つねに送受信両方向で通信が行われるので、全二重通
信ということになります。
 FDDでは音声が途切れる心配はないので、音声通信が重要な
位置を占めている携帯電話に向いている方式といえます。しかし
2つの周波数を使うので、TDDと比べると多くのチャネル(周
波数帯)を用意しておく必要があります。
 送信用と受信用の2つの周波数を使うといっても、あまり近接
している周波数を使うと、それぞれの電波が干渉し合い混線する
恐れがあるので、少し離れた周波数帯を使う必要があります。
 ここまで説明すると、携帯電話における「上り」と「下り」が
理解できます。
―――――――――――――――――――――――――――――
        携帯電話 →  基地局/上り
        基地局  → 携帯電話/下り
―――――――――――――――――――――――――――――
 携帯電話を中心として、携帯電話から基地局に向かって発信さ
れる電波を「上り」、反対に基地局から携帯電話に向かって発信
される電波を「下り」というのです。ちなみに、日本の携帯電話
で利用されている「W−CDMA」、「cdma2000」、PDC
はいずれもFDDを採用しています。
 ここで、電波と周波数について少し知っておくと、ケータイに
強くなると思います。
 電波の伝わり方――電波伝搬という――には、次の3つがある
のです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.直進する電波で届く ・・・ 「直進」
     2.反射した電波で届く ・・・ 「反射」
     3.回折した電波で届く ・・・ 「回折」
―――――――――――――――――――――――――――――
 「直進」については説明不要ですが、「反射」は山やビルなど
に反射して届く電波であり、「回折」は障害物を回り込んで届く
電波です。このような電波の伝わり方は、周波数によって変わる
のです。一般的に次のことがいえます。
―――――――――――――――――――――――――――――
    周波数の高い電波は、反射や回折が起きにくい
    周波数が低い電波は、反射や回折が起きやすい
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように電波は周波数の高低によって性質が異なるのです。
高低といっても、どこからが「高」かどれより下が「低」かわか
らないので、同じような性質を持つ周波数を区切って分類してい
るのです。その区切りのことを「周波数帯」といっています。つ
まり、周波数帯が異なると電波の性質も異なるのです。
 実際にデータや音声を送るときは、この「周波数帯」の中をさ
らに小さく区切って使うのです。その区切りの一定の幅――帯域
幅のことを「チャネル」というのです。よくテレビでは「チャン
ネル」といいますが、チャネルもチャンネルも同じ意味です。
 「音声を送る」とは、送受信しやすい電波に音声を乗せ、その
合成した電波をやり取りするのです。このように情報を電波に乗
せることを「変調」というのですが、「変調」については改めて
ご説明します。         ・・・・ [通信戦争/17]


≪画像および関連情報≫
 ・「変調」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  変調方式は、変調すなわち情報を記録・伝送するにあたり、
  情報および記録・伝送媒体の性質に応じて最適な電気信号に
  変換する操作の方式である。無線通信では一定周波数の電波
  を発生し、それを変調することにより情報を伝送する。この
  変調を受ける電波を搬送波(キャリア)という。
                    ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

電波の3つの届き方.jpg
posted by 平野 浩 at 04:40| Comment(0) | TrackBack(0) | ケータイ通信戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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