2013年02月12日

●「敵国条項まで利用して尖閣を獲る」(EJ第3484号)

 中国海軍の火器管制レーダーの照射問題は、日本の安全保障に
とって深刻な問題になりつつあります。習近平総書記は一体何を
考えているのでしょうか。
 習近平氏は、日本の尖閣諸島国有化後の2012年9月19日
に人民大会堂で米国のパネッタ国防長官と会見していますが、そ
のときの発言をもう一度検討してみることにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪パネッタ米国防長官に対する習近平氏の発言≫
 1.米国は平和と安定の大局から言動を慎み、釣魚島の主権
   問題に介入しないよう希望する。
 2.日本の軍国主義は中華民族に深刻な災難を引き起こした
   だけでなく、米国を含むアジア太平洋国家に巨大な傷跡
   を残した。
 3.国際社会は、反ファシスト戦争勝利の成果を否定する日
   本の企みや、戦後の国際秩序に対する挑戦を絶対に認め
   ない。
―――――――――――――――――――――――――――――
 このとき、習近平氏はまだ総書記に就任していませんが、既に
事実上の総書記であり、その発言は注目に値します。
 「1」は、中国がかねてから主張していることです。中国とし
ては局地戦を展開して、尖閣諸島を奪取したいが、米国の出方が
気になるので、米国に対し、このような発言をして、さまざまな
牽制をしてきています。「2」は満州事変のことをいっているの
です。江沢民元総書記がいつもいっていたことをそのまま踏襲し
て述べています。
 「3」の「反ファシスト戦争」とは、第二次世界大戦のことで
す。気になるのは、中国が現時点になっても日本をファシスト呼
ばわりし、日本がその戦争の敗者であることを強調していること
です。それにしても、日本が戦後の国際秩序を乱しているような
表現は失礼な話であり、その言葉をそのまま中国にお返ししたい
と考えるのは私だけではないでしょう。
 2012年9月19日時点の習近平氏のこの発言とそっくりの
発言が、11月6日のラオス・ビエンチャンで開催されたアジア
欧州首脳会議(ASEM)において、中国の楊外相によってなさ
れているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪ASEMにおける中国楊外相の発言≫
 1.尖閣問題に関する中国政府の立場は、私が国連総会で明
   確にしたとおりであるが、重ねて次の点を強調しておき
   たい。尖閣国有化によって日本は、中国の侵略を行って
   いる。
 2.日本は反ファシズム戦争の結果を否定してはならない。
   日本の行動は、戦後の国際秩序と原則への重大な挑戦で
   ある。
―――――――――――――――――――――――――――――
 要するに中国は、尖閣国有化は中国領土に関する日本の侵略行
為であるといいたいのです。そのために「2」のフレーズを必ず
繰り返すのです。
 この発言ではっきりしたことがあります。中国は、野田政権が
尖閣国有化をしたことによって、これを尖閣諸島を奪い取る絶好
のチャンスととらえたのです。しかし、米国の存在がうるさい。
ただ、ひとつだけ、米国を押える方法があるのです。それは、国
連憲章の「敵国条項」を使うことです。これは、中西輝政京都大
学名誉教授が指摘していることです。国連憲章の関連部分を次に
示しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 第53条
 1.安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のため
   に、適当な場合には、前記の地域的取極または地域的機関
   を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会
   の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関に
   よってとられてはならない。もっとも、本条二に定める敵
   国のいずれかに対する措置で、第百七条に従って規定され
   るもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域
   的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基い
   てこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を
   負うときまで例外とする。
 2.本条一で用いる敵国という語は、第二次世界戦争中にこの
   憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される。
 第107条
   この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章
   の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について
   責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可し
   たものを無効にし、又は排除するものではない。
―――――――――――――――――――――――――――――
 国連憲章第53条第2項でいうところの「第二次世界戦争中に
この憲章のいずれかの署名国の敵国」とは、日本とドイツのこと
を意味しています。
 要するに中国は、尖閣国有化の行為を中国への侵略行為である
といいたいわけです。中国が日本のことを戦後国際秩序を乱す国
というのもこれを指しているのです。
 国連憲章の「敵国条項」は、日本とドイツが、戦後において他
国の侵略を行うなど、国際秩序を乱す行為を行ったときは、国連
憲章第53条の規定にもかかわらず、その該当国の政府は独自の
判断にしたがって、安全保障理事会にはかることなく、軍事的制
裁を行うことができるということを規定しているのです。
 もし、中国がこの敵国条項を使うと宣言して日本に対して軍事
行動に出た場合、米国はどう動くでしょうか。米国の立場として
は日米安保条約を守らなければなりませんが、国連憲章を無視す
るわけにもいかないという理屈も成り立つのです。少なくともひ
るむことは確かです。       ―─ [日本の領土/88]

≪画像および関連情報≫
 ●国連の「敵国条項」かざす中国の危険/MSN産経ニュース
  ―――――――――――――――――――――――――――
  京都大学名誉教授の中西輝政氏は中国がこの敵国条項を「日
  米安保を無効化する“必殺兵器”であると考えている可能性
  が高い」と見る。国連憲章の53条と107条は、日独など
  旧敵国が侵略行動や国際秩序の現状を破壊する行動に出たと
  き、加盟国は安保理の許可なく独自の軍事行動ができること
  を容認している。日本の尖閣国有化を憲章の「旧敵国による
  侵略政策の再現」と見なされるなら、中国の対日武力行使が
  正当化されてしまう。中国はこの敵国条項を援用して、日米
  安保条約を発動しようとする米国を上位の法的権威で封じ込
  めようとする策謀だ。この敵国条項については、1995年
  12月の国連総会決議で、日独が提出して憲章から削除を求
  める決議が採択されている。憲章の改定には3分の2以上の
  賛成が必要なために、決議によって条項を死文化することに
  した。確かに、この決議はいつの日か憲章を改定するときが
  あれば「敵国条項を削除すべきだと決意された」のであって
  厳密にはいまも残っている。
  http://sankei.jp.msn.com/world/news/121212/chn12121207530002-n2.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

中西輝政京都大学名誉教授.jpg
中西 輝政京都大学名誉教授
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本の領土 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんわ。

現実的に無理だと思います。

中国も敵国条項の廃止に賛成していますもの。
対立を煽るにしても、飛躍し過ぎています。

敵国条項の現状(wikipedia):

 第53条、第107条は、敵国の全てが国際連合に加盟し、
 国連憲章制定時と状況が大きく変化したため、
 事実上死文化した条項と考えられている。

 国連総会において、日本国やドイツ連邦共和国などが
 第53条と第107条を憲章から削除する決議案を提出し、
 1995年12月11日に、賛成多数によって採択されてもいる。

 そこでは、条項が時代遅れ(obsolete)であることが認識され、
 削除(deletion)に向けて作業を開始することが決議された。

なぜ彼ら都合の悪い部分は引用しないんですかね・・。

そんなことよりも、これから重要なのはこっちですね。
新世界秩序の中で起こる、国連安保理体制の大変革。

 敵国条項の存在が現実の安全保障体制に与える影響は極めて
 軽微であると考えられているが、多極化を極めた国連中心主義
 による外交の限界を提示する材料の一つとしてしばしば論題と
 されることがある

将来的に、安保理事国には、BRICSのメンバーである、
ブラジル、インド、南アフリカが加わると言われています。

欧米の影響力は低下し、代わりに新興国の発言力が強まります。
先進国(欧米)による、無意味な軍事介入はできなくなります。
Posted by 長野県民 at 2013年02月12日 05:23

補足ですけど・・。

中西○政さんや、櫻井○しこさん、石○さん。

彼らは、中国との対立を煽り、ナショナリズムを
利用して持ち上げられて、有名になった方々です。

学者としての実績で、特に国際的に認められている
とか、これいった物があるのでしょうか。

もし、日中が和解、あるいは領土問題が解決して
しまうと、彼らの仕事がなくなってしまう。

彼らが、愛国者としてチヤホヤされ続けるには、
日中関係を、ぶち壊し続ける必要があるんです。

参考に、
半年ほど前の世界好感度ランキングを参照します。

<BBCによる、世界好感度ランキング2012>
http://www.globescan.com/images/images/pressreleases/bbc2012_country_ratings/2012_bbc_country%20rating%20final%20080512.pdf

「中国に対する世界の好感度」のページを見て頂くと、
日本だけがとんでもない状態になっています。

 世界:  肯定50%  否定31% 

 日本:  肯定10%  否定50%

これがなにを意味するか。

それだけ日本の世論は、物事を色眼鏡で見ている
可能性が高いということです。

私も色々書籍やネットを見て廻っていますが、
大体この割合と一致しています。

つまり、冷静・客観的に論じたものが1割、
感情的に反中・脅威論などを煽ったものが9割です。

次に、同ページのアフリカ諸国の項目も見て下さい。

アフリカ諸国の中国への好感度は、
非常に高いことがわかります。

従って、よく脅威論を煽っている方々が発信している
「植民支配の中国はアフリカで嫌われている」といった
情報なども、少なくとも疑ってみる必要があります。

http://mediacritique.dip.jp/modules/pico/index.php?content_id=213
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2006C_Q2A720C1FF2000/

陰謀論を唱えだす方々のために、少なくとも、
以下の2つは否定しようのない事実だということです。

 ・中国の国際影響力は日本が想像している以上に強い
 ・中国の評価は、決して国際的に低いわけではない

さらにこういった研究報告もあります。

「将来、中国は米国を追い抜くか?」といった世界の
有識者アンケートでも、米、英、独、仏、露、中、日
の内、日本だけが「抜かない」と答えている。

わが国の国際認識がずれている可能性があるということです。

世界情勢の変化に、日本人の頭が追いついていない。
妄想を語っている間に、浦島太郎になりつつある。
Posted by 長野県民 at 2013年02月12日 07:01
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
RDF Site Summary