2007年01月16日

データ通信か通話かの選択(EJ第1999号)

 ケータイ自体の月額基本料金に加えて4410円の料金プラン
はいかにパケット使い放題とはいえ高すぎるといえます。まして
NTTドコモの「パケ・ホーダイ」にいたっては、月額基本料金
6982円プラス4095円、合計11077円という超高額料
金プランになってしまっています。
 ウェブサイトを見たり、音楽をダウンロードしたりするのは主
として収入の乏しい若者なのです。まして学生にとってはとても
支払える金額ではないと思います。このあたりかつてのインター
ネット利用の初期の頃を思い出します。
 これではいけないと考えたのが、KDDI・au事業企画部、
多田一国料金制度グループリーダーです。そして智恵を絞って考
え出したのが「ダブル定額」という仕組みです。これは、2段階
にわたる定額方式――第1段階2100円/第2段階4410円
――なのです。だから、「ダブル定額」というのです。
 つまり、あまりパケットを使わない月は2100円で済み、多
く使っても4410円以上はかからない――というわけです。し
かし、それでも高すぎると、多田一国グループリーダーは考えた
のです。ウェブサイトを見るといってもニュースを見たり、乗換
案内をする程度という人は多く、月額2100円はそういう人た
ちにとっては高すぎる料金といえます。
 そこで登場したのが「ダブル定額ライト」です。導入したのは
2005年5月のことです。これは、ダブル定額の2段階の下に
もう一段階作り、その段階を月額1050円としたのです。
 そして通常なら月額2625円かかるところを1050円、そ
れを超えても加算される通信料は通常の60%OFFTがプラス
されるだけで済むのです。しかし、累計が52500パケットを
超えるときは、4200円(4410円/税込み)で、後はいく
ら使っても4200円どまりとなる――これが「ダブル定額ライ
ト」の仕組みです。
 ケータイのユーザは、通話しかしない人と通話にプラスして動
画や音楽を大量にダウンロードする人の2極に分かれます。au
は、このどちらにも属さない中間層――通話が中心だが、ニュー
スや天気予報、乗換案内などをときどき使う人に対して、もっと
ネットを使ってもらうために「ダブル定額ライト」を効果的に訴
求できないかと考えたのです。
 そこで考え出されたのがCMなのです。まず、中間層に対して
「ダウンロード」という言葉を覚えてもらう必要がある――KD
DI・マーケティング本部の村山直樹宣伝部長は考えたのです。
そして、CMキャラクターとして投入したのが「仲間由紀恵・ウ
イズ・ダウンローズ」です。
 当時仲間由紀恵はTV映画『ゴクセン』で人気があり、その年
の紅白歌合戦で赤組の司会を務め、2006年にはNHKの大河
ドラマ『巧名が辻』で山内一豊(上川隆也)の妻千代を演ずるな
ど国民的な人気が高かったのです。
 この仲間由紀恵とまったくキャラクターの異なる次の2人を加
えたグループ――「仲間由紀恵・ウイズ・ダウンローズ」はau
のCMのために生まれた音楽グループなのです。
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        ヴォーカル :仲間由紀恵
        MC/ダウン:藤田 正則
        DJ/ローズ:井田  篤
―――――――――――――――――――――――――――――
 「仲間由紀恵・ウイズ・ダウンローズ」は音楽アーチストとし
て、「恋のダウンロード」と「恋は無期限」の2曲のヒットを飛
ばしましたが、あくまでauの宣伝用であり、既に解散していま
す。現存する音楽グループをCMに起用したのではなく、CMの
ために新たに音楽グループを立ち上げたのですから、奇抜な試み
といえます。これはauが打ち出した新しい音楽ビジネスモデル
「着うたフル」と密接な関係があるのですが、これについては改
めて述べます。
 このようなauの攻勢に対して、NTTドコモはデータ通信用
の回線を整備して「パケ・ホーダイ」を6982円以上の高額プ
ランから、すべてのプランに解放したものの、auは既に「ダブ
ル定額ライト」をやっているにも関らず、使っても使わなくても
いきなり定額の4095円になる魅力の薄い制度のままだったの
です。NTTドコモはとにかくデータ通信よりも通話で稼ぎたい
一心なのです。このあたりにMNPスタート段階において、au
の一人勝ちを生み出す原因があると思います。
 こういうauのデータ通信の諸施策が着実に効果を上げるのを
見ながら、NTTドコモが打った手が「ドコモダケ」だったので
す。「何とかドコモの料金プランを訴求したい」と考えたNTT
ドコモが打ち出した施策です。NTTドコモが一番力を入れてい
るのが「ファミリー割引/以下、家族割」です。「ドコモダケ」
はこれを訴えたものだったのです。
 シェア50%を上回るNTTドコモの場合、家族の誰かがドコ
モである可能性は高いのです。とくに一家の主人は仕事の関係も
あって、ドコモであるケースは高いです。ドコモはそこに目をつ
けたのです。
 最近は子供もケータイを持つ時代です。家族がドコモであれば
家族割が効き、大幅に料金が安くなるということになると、一家
の主人は当然家族にもドコモを持つように主張します。子供は親
にケータイ代金を持ってもらう関係上、あまり自分の意思を通せ
ないものです。また、MNPスタートにおいて、誰かがauと契
約したいといっても、家族割があるので抜けることは困難である
――したがって、家族割は効果的であるとNTTドコモは考えた
のです。
 このようにNTTドコモは、明らかに通話で稼ぐことを最優先
に考えていることがわかります。そのため、相対的にデータ通信
面はauに遅れをとる結果になるのです。そのため成人若者には
そっぽを向かれることになります。・・・・ [通信戦争/07]


≪画像および関連情報≫
 ・「ドコモダケ」のCM
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  ドコモダケは、2005年1月に登場したNTTドコモの料
  金案内のCMやパンフレットなどに登場するキノコ型のマス
  コットキャラクター。現在、ドコモダケのストラップがゲー
  ムセンターの景品になるなど商品化も進んでいる。デザイナ
  ーはシンガタの黒須美彦、電通の原田睦子、東北新社の垣内
  美香。CMの共演は加藤あい。    ――ウィキペディア
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仲間由紀恵 with ダウンローズ.jpg
posted by 平野 浩 at 04:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ケータイ通信戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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