2007年01月10日

0円戦略の元祖はウィルコム(EJ第1995号)

 通話無料サービスの元祖はウイルコムなのです。このウィルコ
ム――もともとKDDI傘下のDDIポケットというPHS最大
手の会社だったのです。
 KDDIの傘下にいるときのDDIポケットは、新規事業をや
ろうとしてもKDDIの意向を斟酌しながらやらなければならな
かったのです。まして、KDDIはauという携帯電話事業を有
しているので、少しでもauとバッティングする事業には手を出
すことができなかったのです。
 そういう状況のDDIポケットを救ったのは、カーライルとい
う米国の投資会社でした。カーライルは京セラと組んで、DDI
ポケットの株式を90%購入し、DDIポケットをウィルコムと
いう会社に生まれ変わらせたのです。これによって、ウィルコム
は、KDDIに気兼ねすることなく、自由に事業展開ができるよ
うになったのです。2004年10月のことです。
 このような経緯で2005年3月に発表したのが、「ウィルコ
ム定額プラン」なのです。このプランは、月に2900円でウィ
ムコムユーザ同士なら、通話無料というサービスです。毎日何時
間話しても無料なので、カップルや女子高校生間に爆発的に普及
したのです。最近は法人の採用も増えています。
 2006年8月末現在の契約数は419万100件と他のケー
タイ各社に比べて大きく見劣りはするものの、その契約の伸びは
急速であり、今後もさらに伸びる可能性があります。
 しかし、かつてPHSはつながりにくいという評価が下され、
各社がPHSから撤退するなかで、なぜウィルコムだけが定額制
を実現できたのでしょうか。
 それは同社が10年近い歳月をかけて築いてきた16万を超え
る基地局にあるのです。この全国16万基地局という数字は、現
在、NTTドコモのFOMAの基地局がせいぜい4万5000局
くらいでであることを考えるとき、それがいかに凄い数字である
かがわかると思います。
 PHSとケータイでは、基地局の設定の方式が違い、コスト的
にも低コストでできるのです。
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     1.マクロセル 方式 ・・・ ケータイ
     2.マイクロセル方式 ・・・  PHS
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 マクロセル方式というのは、ひとつの基地局が広いエリアをカ
バーするものをいい、ケータイで使われています。これに対して
マイクロセル方式とは、多くの基地局で狭いエリアをカバーする
方式で、「アダプティブアレイ」という技術が使われています。
 ケータイで採用されているマクロセル方式では、電波はアンテ
ナを中心に同心円状に飛ばされるのです。つまり、トラフィック
が集中するわけです。トラフィックとはネットワークを流れる情
報量のことです。
 これに対してアダプティブアレイ技術では同心円状ではなく、
ユーザの多いエリアに集中して電波を飛ばし、トラフィックを分
散させるのです。それに加えて「空間多重」という特殊な技術も
使われており、それによってひとつの電波を複数のユーザが同時
に使えるようにしているのです。このように、PHSの技術はと
ても進んでいるのです。
 それに従来のPHSではバックボーンとして、NTTの専用線
を使っていたのです。バックボーンというのは、通信事業者間を
結ぶ大容量の基幹通信回線のことです。
 ところが、これに非常にコストがかかったのです。音声やデー
タ通信を行うたびに高いアクセスチャージをNTTに支払わなけ
ればならず、この負担によってDDIポケットは革新的な経営が
何もできなかったのです。
 そこで、ウィルコムはこのバックボーンをIP網に変更したの
です。これによってNTTに支払う高いアクセスチャージが不要
になり、定額制を実施できる財務基盤ができたのです。16万基
地局から成るマイクロセル方式のPHSは、基地局ひとつ当りの
負荷が少ないので、これをコストの安いIP網と組み合わせるこ
とによって、定額制に十分対応できるようにしたのです。
 このウィルコムの定額プラン――月額2900円の定額でウィ
ルコムのユーザ(070)同士の通話は何時間話しても無料なの
です。これはケータイにおけるはじめての通話の定額サービスと
いうことができます。
 それだけではないのです。ウィルコムの端末から、ケータイや
PCに配信するEメールもすべて無料なのです。月額2900円
の定額料金で、一切の制約条件なしで070同士の通話と、ケー
タイやPCへのEメールはすべて無料になるのです。
 ウィルコムは電話機というより、電話機能が付いたPDA(パ
ーソナル・デジタル・アシスタンツ)なのです。現在、ウィルコ
ムの端末として最新型は次の機種(添付ファイル参照)です。
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          W−ZERO3[es]
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 W−ZERO3[es]の上蓋を開けると、小さなカードが入っ
ています。これは「W−SIM」といって、この中にPHSのア
ンテナや通信制御機能、電話帳データなどが入っています。ウィ
ルコム端末の特徴は、この「W−SIM」と本体の組み合わせで
できているところにあります。端末を変更するときは「W−SI
M」を抜いて、それを新しい端末にセットすればよいのです。W
−ZERO3[es]は超小型PCそのものです。
 ソフトバンクは明らかにウィルコムの料金プランを意識して今
回の「0円戦略」を立てています。ソフトバンクでは、1月15
日までの新規加入者には、本来9600円(月額)のゴールドプ
ランの料金を70%引きにし、月額2880円にするとしていま
すが、これはウィルコムの2900円を意識した料金であるとい
えます。            ・・・・ [通信戦争/03]


≪画像および関連情報≫
 ・空間多重技術とは何か
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  無線通信の技術革新は目覚しく、近年ではGbps オーダの高
  速伝送を実現する研究開発が進んでいる。有線と無線との格
  差はなくなり、無線通信の応用領域は益々拡大することが予
  想される。時間・周波数・空間領域における多面的な電波伝
  搬特性を積極的に利活用することで,限られた無線周波数資
  源を有効に利用し,高速・高品質・大容量伝送を実現する高
  能率無線技術が注目を集めている。
         http://yoshida.kuee.kyoto-u.ac.jp/sp.html
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ウィルコム端末.jpg
posted by 平野 浩 at 04:43| Comment(0) | TrackBack(0) | ケータイ通信戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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