いたします。ここまで30回は「北方領土」、32回は「竹島」
について書いてきています。そして、いよいよ今日からは「尖閣
諸島」について考えていきます。
尖閣諸島問題は、同じ領土問題でも、北方領土や竹島とは大き
く異なる面を持っています。それは、北方領土はロシアに、竹島
は韓国に実効支配されているのに対して、尖閣諸島は日本が実効
支配しているからです。
問題は実効支配のレベルです。野田政権は、実効支配のレベル
を上げるなどという意識なしに国有化したところ、中国はレベル
を上げたとして、関係が険悪なものになってしまったのです。
尖閣諸島の位置を確認しておきます。尖閣諸島は、東シナ海上
に浮かぶ次の8つの小さな島の総称です。
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1.魚釣島 5.南小島
2.久場島(黄尾嶼) 6.沖ノ北岩
3.大正島(赤尾嶼) 7.沖ノ南島
4.北小島 8.飛騨
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尖閣諸島のなかで一番大きな島である魚釣島は、石垣島の北北
西170キロにあり、台湾からも同じ170キロと等距離に位置
しています。中国大陸からは330キロ、沖縄本島からは410
キロ離れています。距離でみると微妙な位置関係にあります。
大方の日本人の尖閣諸島について考え方をまとめると、次のよ
うなものになると思います。
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尖閣諸島は日本固有の領土である。日本は明治時代から尖閣諸
島を正式に日本の領土としているが、長い間にわたって、それ
に対してどこからもクレームはきていない。ところが、海洋調
査で尖閣諸島付近の海域で相当量の石油資源が埋蔵されている
可能性が高いということがわかったとたん、中国と台湾は尖閣
諸島に対して、それぞれ領有権を主張しはじめている。実にけ
しからんことである。
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どうでしょうか。この考え方は正しいでしょうか。
結論をいうなら、それは一概に正しいとも正しくないともいえ
ないのです。ただ、既に尖閣諸島をめぐって中国と対立が続いて
いる現在、上記のような考え方ではいけないと思います。どこが
正しくどこが違っているか、詳しく検証していきます。
ひとついえることがあります。尖閣諸島をめぐって中国との対
立を引き起こした張本人ともいえる野田佳彦前首相が、尖閣諸島
についてきちんとした考え方をもっているとは到底思えないこと
です。彼が尖閣諸島について語ることは次のことだけです。
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尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土であり、解決
すべき領有権の問題は存在しない ──野田佳彦前首相
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もっとも中国との対立を引き起こしたのは、野田前首相ではな
く、石原慎太郎前都知事(現・日本維新の会共同代表)であると
いう意見もあります。
確かに火をつけたのは石原前都知事です。しかし、石原氏は尖
閣諸島について、野田氏とは比較にならないほど歴史などもよく
調べて熟知しており、今回の「尖閣諸島は東京都が買い取る」宣
言も戦略的に相当考えたうえでの行動だったのです。
尖閣買い取り問題について、山田吉彦氏と石平氏の対談の一部
を以下に抜粋します。
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石 :東京都が最後までやれば中国はどうにもならないです。
中国政府が東京都を相手に喧嘩できるわけがないですか
ら。後で政府が横車を入れてきたことで、情勢が変わっ
てしまいました。今のお話でよくわかったのは、東京都
の購入計画は、尖閣問題だけではなくて、中国の動きに
対する危機感が背後にあったということです。
山田:十分に分析できていました。中国の動きは用意周到にな
されているんだ、と。中国は、いずれ日本が国有化する
ことも視野に入れていました。ただ、その時期はもっと
先になると見ていました。つまり、中国にとって唯一の
想定外は石原慎太郎だったのです。あの発言は中国も予
想していなかったでしょう。「尖閣を買う」というあの
発言で、中国はかなり動揺しました。本来であれば、習
近平体制に移行して、安定した段階で次の戦略に打って
出ようと思っていた。そうすべきところを、日本政府が
焦って反応してしまった。その結果、国有化の動きが表
面化して、つられた中国もペースを上げすぎたのです。
──石平著『尖閣問題。真実のすべて』/海竜社刊
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ここで石平氏のいう「東京都が最後までやれば中国はどうにも
ならないです」という言葉は重要です。中国という大国が一地方
自治体のやったことには対応のしようがないからです。石原氏が
米国で発言をしたとき、中国が黙っていたのはそのためです。声
明だけで黙殺しようとしたのです。したがって、東京都が最後ま
でやったら、中国はどうしようもなかったのです。
ところが藤村官房長官(当時)が次のような余計なことをいい
反応してしまったのです。あまりにも中国のことを知らな過ぎる
対応といえます。
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国有化も視野に入れて検討する
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ここまでいわれたら、中国も黙ってはいられないのです。それ
でも中国はあの段階で問題を拡大させたくなかったのです。
── [日本の領土/63]
≪画像および関連情報≫
●野田首相演説に中国反発「自らを騙し、他人も騙している」
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【北京=川越一】中国外務省の秦剛報道官は9月27日、野
田佳彦首相が国連総会の一般討論演説で、沖縄県・尖閣諸島
(中国名・釣魚島)をめぐり対立する中国などを念頭に「威
嚇」に屈しない姿勢を示したことに対し、「自らを騙し、他
人も騙している」などと日本政府の対応を批判する談話を発
表した。秦報道官は「領土の帰属問題は歴史と法に従って解
決されるべきだ」とした上で、「史実と国際法を無視して、
公然と他国の領土主権を侵犯し、世界の反ファシズム戦争勝
利の成果を否定している国がある」と主張した。野田首相が
演説の中で中国や韓国の名指しを控えたことから、秦報道官
も最低限の「礼儀」は守り、日本を直接批判することは慎ん
だようだ。しかし談話には、「その国は戦後の世界秩序に挑
戦し、国際法規則を隠れ蓑にしている」などとこれまで中国
側が日本を批判する際に使ってきた言葉が連ねられた。「関
係国は歴史を正視し、国際法を適切に順守し、他国の領土主
権を損害する一切の行為を停止しなければならない」とする
秦報道官の談話は、日本政府に向けた同諸島の国有化撤回要
求に他ならない。 ──MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120927/chn12092710150002-n1.htm
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石平氏による尖閣問題の論評


