かの条件付きではありますが、このソフトバンク戦略は、同業他
社であるNTTドコモやau、とくにドコモには絶対に真似がで
きないのです。なぜなら、シェア55%のNTTドコモがそれを
やったら、一番重要な収入源の電話料金が激減し、電話事業が成
り立たなくなってしまうからです。
シェアが過半数を占めているということは、ケータイで誰かに
電話する場合、相手がドコモである可能性が高いということなの
です。したがって、それを無料にすると命取りになります。
ところで、ケータイはもはや電話とはいえないのです。ケータ
イには次の3つがあります。料金は3つの使い方によって決まっ
てくるのです。
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1.通 話
2.Eメール
3.パケット
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これについては改めて詳しく述べますが、ドコモは「通話」に
よる収入に一番重点を置いている企業なのです。したがって、多
くの限定条件付きならともかく、ソフトバンクのようなかたちで
の「通話無料」を打ち出すことはできないのです。これはauで
も同じことがいえます。
これら3つのうち、最初から2と3を入れて論ずると、話がや
やこしくなるので、しばらく「通話」に絞って考えることにしま
す。なぜなら、これら3つのなかでは「通話」が一番重要だから
です。ケータイでメールやイターネット、音楽のダウンロードな
どをやらない人はいても通話をしない人はいないからです。ケー
タイは機能がどんなに進化しても電話であることには変わりはな
いからです。統計データがあるわけではありませんが、ケータイ
を通話専用で使っている人の割合は一番高いと思うのです。
もし、ケータイを通話専用で使う場合、現在、どこの会社とケ
ータイの契約を結んでいる人でも、ソフトバンクケータイ宛の通
話が無料になるソフトバンクのサービスを利用するのが一番トク
になります。なぜなら、今までの通話のうち、ソフトバンクケー
タイ宛にかけていた分が無料になるからです。当たり前の話です
が、今までソフトバンクにかけていた分は有料だったからです。
したがって、MNP開始寸前の孫社長の通話0円発表は、ドコ
モやauにとって衝撃的だったのです。そのため、ドコモの中村
社長は、一部上場の大企業の社長としては、いささか感情的な発
言をしています。彼は、ソフトバンク同士の通話はすべてが無料
ではなく、無料でない時間帯があると噛みついたのです。
確かに、ソフトバンクのユーザ同士の「通話無料」には、次の
時間帯はユーザ同士であっても、「月に200分までは無料」だ
からです。
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午後9時〜午前1時までの通話は月200分限度で無料
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このように「一番大事なことが小さく書いてある」ことは確か
に問題ですが、これはケータイ各社の広告にもいえることであっ
て、ソフトバンクだけの問題ではないと思います。
「ケータイ・ウォッチ」というサイトに出ている記事をご紹介
しておくことにします。
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中村氏は「23日夜から言われっぱなしで、怒りすら覚える部
分がある」と発言。ソフトバンクの新聞広告を持ち出して0円
の表記と、孫社長の名前は大きく書いてあるが、大切な条件が
小さく書いてある。ソフトバンクモバイルに移動したが、請求
書を見て、こんなはずじゃなかったという人が増えることが心
配。こういう出し方はフェアなのかどうか」などと語った。同
氏がこれだけ他社を批判することは、これまでに例がなかった
だけに、記者の間からも驚きの声が出ていた。
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/31710.html
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考えてみると、普通の人は午後9時〜午前1時までは家にいる
ケースは多く、そのときは固定電話を使えばいいわけです。大半
の人にはあまり問題ではない制約であると思います。しかし、現
代の若者はこの時間帯で友達と長話をするということです。
しかし、対ソフトバンクケータイ宛の通話を無料にするには、
もうひとつ大事な条件があるのです。中村社長はなぜこの点を問
題視しなかったのでしょうか。それは次の条件です。
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「ゴールドプラン」に入っていること
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ゴールドプランについては改めて詳しく述べますが、このプラ
ンに入っていないと、通話もメールも無料にならないのです。こ
のゴールドプラン――本来は月額基本料が9600円なのですが
2006年1月15日までに申し込んだ場合は、70%割引きの
2880円で加入できるというのです。もちろん、今後もこの料
金はコースを変更しない限り変わらないのです。
ゴールドプランの加入によるソフトバンクケータイ宛の無料通
話サービスのヒントは、ウィルコムの「定額プラン」にあると考
えられます。しかし、ウィルコムはMNPの埒外にあります。
ウィルコムの前身はかつてのDDIポケットであり、KDDI
の傘下に入っていたのです。総務省が主体となってケータイ各社
を集めてMNPを検討していたとき、DDIポケットはKDDI
の傘下企業であったため、代表を出せなかったのです。その後外
資に買収されてウィルコムになったものの携帯電話会社ではない
ということにされてしまい、今回のMNPから外されてしまった
のです。このウィムコムのユーザ同士通話無料サービスについて
は、明日のEJで述べます。 ・・・・ [通信戦争/02]
≪画像および関連情報≫
・景品表示法とは何か
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景品表示法は一般消費者の保護及び公正な競争秩序の確保の
見地から、昭和37年に独占禁止法の不公正な取引方法の規
制を補完する法律として制定され、不当な顧客誘引行為のう
ち、過大な景品類の提供や不当な表示をより効果的に規制す
ることを目的としています。さらに、公正競争規約の制度を
定め、公正取引委員会の認定を受けて、景品類又は不当な表
示に関する事項について、業界が自主ルールを設定できると
しています。
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