2012年12月19日

●「表の交渉団と裏の交渉団」(EJ第3452号)

 領土問題を含む関係国との外交交渉は、表の交渉だけではうま
くいかないことが多いものです。日韓交渉がまさにそれであった
といえます。朴正煕大統領は、表の外交では金東祚主席代表と李
東元外務長官、裏の外交では丁一権国務総理を立て、実際には金
鍾泌氏の兄である韓一銀行常務の金鍾珞氏を使うという二面作戦
をとったのです。
 金東祚主席代表は、矢次一夫氏に接近し、当時の岸首相に会い
交渉を進めていたことは既に述べた通りです。しかし、韓国では
李承晩大統領、日本では岸首相が退陣し、そこで金東祚代表の役
割は終わっていたのです。
 しかし、不思議なことに1964年10月6日に駐日大使とし
て金東祚代表が東京に赴任した2週間後に岸系の佐藤栄作氏が首
相に就任したのです。ここで、矢次・佐藤ラインが復活していま
す。しかし、ラインのなかに河野一郎氏は入っていなかったので
す。そこで、朴正煕大統領は裏のルートを使い、河野一郎氏に接
近させたのです。
 ここで重要なのは、表の交渉団と裏の交渉団はお互いにその存
在については知っていたものの、相互に情報の交換などはなかっ
たことです。これについて、金東祚代表は裏の交渉団について強
い不信感を抱いていたようです。
 なぜ、裏の交渉団が必要だったかについて、当時NHKの記者
で、河野一郎代議士の番記者を務めた渡部亮次郎氏は次のように
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 交渉はもちろん政府機関によっておこなわれたが、国内的にさ
 まざまな利害がからむ問題だけに真の取りまとめ役が必要とさ
 れ、池田内閣では大野伴睦がその任にあたった。その死後は河
 野一郎が無任所大臣としてこれにあたらされた。佐藤内閣でも
 引き続きその位置にとどまった。これにともない大野時代には
 中川一郎、渡遽恒雄らが、河野時代は宇野宗佑が、それぞれ実
 務を担当した。彼らはこの実績をもとに韓国通として「成長」
 していく。 ──ロー・ダニエル著/「竹島密約」/草思社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 なぜ、金鍾珞氏が重用されたのかというと、彼が金鍾泌氏の兄
であって信頼できるということと、日本語が流暢であり、通訳な
しで日本の政治家と話ができる点にあったといえます。
 しかし、金鍾珞氏は河野一郎氏には相当手を焼いていたといわ
れます。河野氏の態度は金鍾珞氏に冷たく、取りつく島がなくて
悩んでいたといわれます。そういうとき、金鍾珞氏を食事に誘い
慰めていたのは河野派の中曽根康弘氏だったといいます。
 このように、韓国から見て難攻不落であった河野一郎氏が日韓
交渉に出馬する決意を決めたのは、1964年12月21日のこ
とです。この日、丁一権国務総理宛てに河野一郎氏の親書が送ら
れているからです。
 1964年9月頃のことですが、時の池田勇人首相は喉頭がん
を患っていたのです。当時はがんは告知しないことになっており
池田首相自身には知らされていなかったのですが、前尾繁三郎氏
と大平正芳氏には病院から病状は伝えられていたのです。
 前尾、大平両氏は、医師との相談で、9月のIMF総会での演
説のあと、築地のがんセンターに入院させることにしたのです。
池田本人には「がんではないが、最新の治療設備がそこにしかな
いから」と説明して本人の了承を得たといわれます。
 10月10日には東京オリンピックが開幕されることになって
おり、両氏は開会式には何も知らせずに元気に出席させてもらう
よう医師を説得し、オリンピック閉会式直後に退陣するよう医師
から説得してもらいたいと伝えています。がんセンターの比企能
達総長は、池田首相に次のように伝えたといわれます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 比企総長:治療1ヵ月で経過はきわめて良好です。局所の上部
      はよくなって奥が見えてきました。これで放射線治
      療は約1ヵ月間やらねばならぬことになり、副作用
      も考えられます。ここ3、4カ月は声を使うことが
      できません。治るには半年かかるでしょう。
 池田首相:死ぬ気でやったら、辞めなくてもやれるのではない
      のか?
 比企総長:とんでもない。医師として生命をかけるようなこと
      はおすすめできません。
 池田首相:誰がこの話を仕組んだのか。
 比企総長:前尾さんと大平さんです。8日にお2人に会って相
      談しました。
 池田首相:(長い沈黙の後)そうか。2人がやっているのか。
      それなら2人に任せよう。
 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK28014_Y1A121C1000000/
―――――――――――――――――――――――――――――
 池田首相は、前尾と大平が動いていることを聞いて、すべてを
悟ったといわれます。その時点から、次の首相をめぐる自民党の
内部抗争がはじまったのです。結局、池田裁定による次期首相は
佐藤栄作氏に決まり、河野一郎氏は破れたのです。
 河野氏に対する日韓交渉に出馬して欲しいとの要請が強くなっ
たのは、河野氏が佐藤栄作氏に破れた直後だったのです。当時の
河野一郎氏は人気のある政治家であり、『女性自身』/1963
年12月23日号誌が実施した読者アンケートによると、「尊敬
する政治家」のトップに選ばれているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
          1位/  河野一郎
          2位/  池田勇人
          3位/  江田三郎
          4位/  吉田 茂
          5位/ 藤山愛一郎
―――――――――――――――――――――――――――――
                 ── [日本の領土/56]

≪画像および関連情報≫
 ●池田勇人首相のエピソード
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ・池田と会談したフランスのド・ゴール大統領が池田を「ト
  ランジスタラジオのセールスマン」と評したことは良く知ら
  れている。当時は首脳が経済について語ることが珍しかった
  ため、ド・ゴールも意外に思ったのである。しかし、今日で
  は経済について語ることが出来ない首脳など使い物にならな
  くなっているし、当のフランス大統領は、エアバス機や武器
  のトップセールスを世界中で行っている。こうした点を捉え
  八幡和郎は、池田勇人を「経済重視の首脳の先駆として、世
  界的な偉人である」としている。
  ・中曽根康弘は、2008年9月3日付の読売新聞朝刊に、
  同年9月1日に辞任会見を行った福田康夫に関する文章を寄
  稿。文中で「我々先輩の政治家から見ると、2世、3世は図
  太さがなく、根性が弱い。何となく根っこに不敵なものが欠
  けている感じがする」と述べ、その例えとして、がんで入院
  して生命力もないという段階においてぎりぎりまで耐え抜い
  て後継に佐藤栄作を指名した池田を挙げ、政治家としての最
  後までの志、執念を持つべき、と記した。
                    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

築地がんセンターに入院する池田首相.jpg
築地がんセンターに入院する池田首相
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本の領土 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「日本国憲法は総務省にただちに最高裁判事国民審査全投票用紙再集計再開票の結果公開を厳命する」

発展途上国並の壮大なる不正選挙?(続き)、有り得ないことがありえーる(笑):いかりや爆師匠
http://blog.goo.ne.jp/ikariyax/e/3cec4d06784d8569c86eb297df2cc1e1

師走の選挙 (通りがけ)
2012-12-19 06:22:22
さすがの私も忙しすぎて書き込みができない。かろうじて認知症の母親を手を曳いて投票所で認知障害者老人を介助者から引き離して孤立させようとする小役人を「憲法違反の投票妨害である」と怒鳴りつけて退け、保護責任者たる私が介助して黒ボールペンでともに国民審査オール×投票して帰ったのが精一杯である。認知症の母親には選挙違反にならぬよう候補者も政党も×印をつけるよう指導し、私は日本未来の党と書き候補者がいなかったので共産党候補者名を書いて投票した。

いかりや師匠の冷静で鋭い分析は、さすが我が師匠です。日本常民の慈悲倫理道徳平和の徳にあふれておられる本エントリーのご指摘はすべてご名答オール◎。

史上最低の投票率。
これを強調するのが今度のユダキン解散師走選挙の最大の狙いです。

かつて上の句にバカ森総理もとい神の国バカ森総理がばらした不正選挙のやり方「投票日には有権者は寝ててくれたら良い」を、師走のど真ん中投票というこの時期を狙って文字通り決行したバカユダキン捏造選挙です。ユダキンですから日本国憲法を無視して(ほんとは低脳すぎて知らないだけですがw)マスゴミが大暴れ公職選挙法違反憲法違反やりまくりの何でもありの、あの時と同じバカの一つ覚えで公明党組織票頼み一辺倒のまさに小泉詐欺師白痴テレビ劇場型ハリウッド西部劇無法選挙となりました。

反道徳ユダキンバカは最高裁判事国民審査のことも忘れて師走選挙を仕掛けてきたが、師走で多忙な道徳国民は選挙より国民審査にオール×投票して反道徳反憲法最高裁を自らの手で懲戒処罰するために師走で忙しい中じっちゃんもばっちゃんもみな投票所へせっせと足を運んだのです。私は手を引っ張って連れて行きましたがw

今まで選挙に行ったことが無い人も私の知り合いには何人もいますが今回はみな一様に「投票いってきたで。国民審査はオール×にきまっとるじゃろ」と口々に言っています。

史上最低の投票率とは真っ赤な嘘ですねw

まあ最高裁検審ソフトがバカの一つ覚えで使われたようですが、最高裁事務局が不正を認めない限り今度の選挙結果が合憲とされると見込んでいるのでしょう。
そして反道徳最高裁が黙秘で時間稼ぎをしている間にさっさと憲法9条を破壊して反道徳無慈悲戦争国家を「捏造」しようというのがユダキンの狙いです。
悲しいくらい丸わかりの低脳バカですな、ユダキン。最重症の知的発達障害者そのものです。

さて不正は明らかですが選挙の投票をすべて再開票再集計するのは物理的に時間がかかりすぎてなかなか当選無効を確定させるには至らないでしょう、ブッシュ大統領選のように。

しかし最高裁判事国民審査なら再開票再集計は小学生でもできる程度のあっという間も無くすんでしまうごく簡単な単純作業です。
信任か不信任かの○×二者択一だから、反道徳無法最高裁ご自慢の捏造ソフトも国民審査では通用しません。捏造したくても単純すぎて使いようが無いからw参考http://www.asyura2.com/12/senkyo141/msg/206.html#c204

しかも今回史上最低の投票率らしいが、国民審査の総投票数を数えるだけでほんとうの投票率がわかるのです。国勢調査よりもはるかに正確にね。

倫理道徳日本国民はただちにすべての国民審査投票済み投票用紙の総数再集計と不信任票の総数再集計を、主権者国民の公僕総務省に日本国憲法を用いて違背遅滞を許さず厳命しましょう。

総務省は全員「外患誘致罪」である。
Posted by 東行系 at 2012年12月19日 07:19
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