ります。2004年は5日からお届けします。今年一年EJをお
愛読いただきありがとうございます。
現在、私が直接お届けしているEJは567人――昨年12月
27日現在の配付数が503人でしたから、64人増えたことに
なります。もっともEJは真に読んでいただいている人に絞って
お送りしており、送信側で読んでいただいていないと思われる分
を相当数カットしていますので、純増分としてはまずまずのとこ
ろではないかと思います。今後ともご愛読のほど、よろしくお願
い申し上げます。
なお、EJが2部届くことがあります。それは、配信直後にミ
スが発見されたときに再送するからです。したがって、その場合
は後送の方を保存していただきたいと思います。
さて、今朝は映画『マトリックス』のテーマを一応しめくくる
ことにします。第2章でネオは、預言者のオラクルにザイオンを
救うためにはソース(マトリックスの中核部分)にたどり着き、
マトリックスの設計者であるアーキテクトに会う必要があるとア
ドバイスされます。
そのためには、キー・メーカーの持つ鍵が必要なのですが、そ
のキー・メーカーは、メロビンジアンというマトリックス内の古
いプログラムに幽閉されているのです。そこで、ネオたちは、メ
ロビンジアンのところに行き、キー・メーカーを奪還して、大変
な苦労をして、アーキテクトにたどり着くのです。
そのアーキテクトとネオの対話――ここにこの映画のすべての
謎が隠されているのです。ここで、2つの重要なことがアーキテ
クトによって語られるのです。
1つ目は、「なぜ、私はここにいる?」というネオの問いに対
する次のアーキテクトの答えです。話の内容は非常に難解ですが
意味がわかるでしょうか。字幕をそのまま掲載します。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
アーキテクト:
君はアンバランスな均衡の余剰だ。プログラム固有の問題だ。
つまり、君は変則的なアノマリーの産物だ。いまだ、排除でき
ずにいるが、本来求めたのは数学的な正確さだ。解決すべき問
題だが、予想範囲内でコントロールも可能だ。それで君は容赦
なくここに導かれた。
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要するにアーキテクトは、ネオは「アノマリー」だというので
す。「アノマリー」とは例外とか変則とか異例という意味です。
システム全体の設計思想に問題があると、このようなアノマリー
が生じてしまうのです。アノマリーは、システムの中に本来あっ
てはならないものです。
つまり、ネオやエージェントのスミスはアノマリーであり、本
来排除すべきものなのだが、いまだに排除できないでいる――と
アーキテクトはいうのです。しかし、もともとアノマリーはその
出現が予想されていたものであり、大きな意味ではシステムのコ
ントロール下にある――だからこそ、いや応なく君はここに導か
れてきたのだといっているのです。
重要なことの2つ目は、現在のマトリックスのバージョンが6
であるという事実です。バージョンが変わるたびに人類は危機に
瀕し、そのつど選ばれし者である救世主があらわれて、次に述べ
ることを行ってザイオンを再建してきたというのです。
アーキテクト:
ここでの「選ばれし者」の役割は、起動源(ソース)に戻って
自分が保持するコードの臨時配布を実行、基幹プログラムを再
挿入することだ。その上で、君はマトリックスから女性16名
および男性7名から成る23名の人間を選抜し、ザイオンを再
建する。この処理過程での不履行の発生は大規模なシステムク
ラッシュを招き、マトリックスに接続された全ての人間の生命
を奪う結果となる。それはザイオンの崩壊と併せて、最終的に
は人類の滅亡を意味するのだ。
アーキテクトによると、最初のマトリックスは、AIである自
分が制作したので、システム上完璧であって、いっさいのアノマ
リーが発生しないものだったが、人間がそれを受け入れなかった
というのです。そこで、システムのレベルを下げて、もっと乏し
い心、完璧のパラメータに束縛されない貧しい精神に基づくシス
テムを目指して6回も作り直した結果、ほとんどの人間がそれを
受け入れるようになっている――とアーキテクトはいうのです。
そういう人間にフィットするマトリックスのバージョン6がで
きたのは、本来は人間の精神を調査するために作られた直感プロ
グラム/オラクルが役に立ったとアーキテクトはいいます。そし
て、私がマトリックスの父であれば、オラクルは間違いなくマト
リックスの母であると。
そして、アーキテクトは、ネオに究極の選択を迫るのです。右
のドアを開ければ、人類の救済にいたる道が開ける。左のドアを
開ければトリニティーのところに行けるが、人類は全滅する――
ネオは何のためらいも見せず左のドアを開けて、トリニティーの
救出に向かうのです。
その後のことは、現在上映中の第3章「レボリューション」を
観るしかないのですが、それ以上踏み込むとネタバレになるので
今回の分析はここまでのことにします。いずれ、「レボリューシ
ョン」のDVDが発売された時点で、再びEJで取り上げてみた
いと思います。
映画『マトリックス』については、9回にわたってお送りしま
した。全原稿量は400字詰め原稿用紙63枚――それだけ書い
てもまだ書くことはたくさんあります。それほど奥が深い映画と
いうことがいえます。2003年は、新しいテーマで5日から配
信します。愛読者の皆様、どうか良いお年をお迎えください。
