2003年12月25日

ネオは3回変身している(EJ1259号)

 キアヌ・リーブスが映画『マトリックス』で演ずるネオは、明
らかに3回変身しています。
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     1.トーマス・アンダーソン時代のネオ
     2.スミスによって殺され復活したネオ
     3.第2章で究極の選択をした後のネオ
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 映画『マトリックス』の物語がキリスト教的テーマをベースに
していることは明らかです。ネオは人類を救済する「救世主=選
ばれし者」といわれているので「イエス・キリスト」であり、救
世主の出現を固く信ずるモーフィアスは、洗礼者ヨハネに相当す
ると思われます。
 それでは、トリニティーはどうでしょうか。既に述べたように
トリニティーという言葉には、三位一体の意があることを指摘し
ていますが、具体的に誰に当たるかといえば、それはマグダラの
マリアではないかと思われます。それは、どちらも男社会のなか
でひときわ際立つ女性であるからです。
 一回目の変身をしたネオは、モーフィアス救出劇に続く画面で
エージェントのスミスと単身立ち向かい、近くのモーテルの30
3号室に逃げ込みます。そこには、マトリックスからの脱出口で
あるアナログ電話機があるのです。
 しかし、ネオが受話器を取り上げようとした瞬間、先回りをし
ていたスミスの銃弾を浴びて死ぬのです。ネブカドネザル号に横
たわるネオの生命維持装置も「死」を示す表示が出ます。「まさ
か!」と叫ぶモーフィアス。トリニティーは、預言者に「私の愛
する人が救世主」といわれたことを告白し、息のないネオに口づ
けする――そうすると、ネオは息を吹き返すのです。これは、明
らかにイエスの復活をあらわしています。
 トリニティーをマグダラのマリアであるとしたのには、2つの
ことが一致するからです。一つは、マリアはイエスが殺されると
きそばにいたことであり、二つは、イエスが復活して最初に顔を
見たのがやはりマリアであったという点です。
 トリニティーは、ネオが殺されるとき一緒にいる――現実世界
とマトリックスという距離感はあるが――それに、ネオが息を吹
き返したとき最初にその顔を見たのも、やはり、トリニティーだ
からです。役柄はマリアと一致しているのです。
 第1章で、モーフィアスがネオをマトリックスに住むオラクル
という預言者のところに連れていくシーンがあります。そのとき
オラクルはネオに次のようにいうのです。
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   あなたは救世主ではない。しかし、来世では・・・
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 確かに、一度死んで復活する――つまり、来世ですが、その後
のネオは明らかに変身しています。銃弾をすべて手で叩き落し、
カンフーも力強さを増し、そして空を飛ぶ――それに顔つきも少
し変貌しているように感じます。
 実は、イエスも復活前と復活後は違うのです。パウロは、「コ
リント人への第一の手紙」第15章44節で、「ソーマ・プニュ
マティコン」ということばを使ってそのことについて述べていま
す。「ソーマ・プニュマティコン」とは「霊のからだ」といった
ような意味になります。パウロは次のように書いています。
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 まかれるときは朽ちるものでも、朽ちないものによみがえり、
 まかれるときには卑しいものでも、栄光あるものによみがえり
 まかれるときには弱いものでも、強いものによみがえる。
       ――「コリント人への第一の手紙」第15章より
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 確かにネオの変身に共通性があることがわかると思います。復
活したネオの身体には光さえ差しているのです。まさに「ソーマ
・プニュマティコン」です。それに昨日のEJでご紹介した仲間
を裏切るサイファーですが、これはユダそのものでしょう。
 サイファーが隠れてスミスと会うのは、ユダが祭司長らと内々
に会ってイエスを裏切る相談をするのとそっくりです。ユダには
「秘密」という意味があるそうですが、サイファーにも「秘密」
という意味があり、一致しています。
 ここで、預言者のオラクルについて述べる必要があります。こ
のオラクル――見た目は普通のおばさんですが、かつてモーフィ
アスに救世主が復活することを予言し、人々にその運命を告げる
予言者としての役回りなのです。
 マトリックスの設計者であるアーキテクト――AIの代弁者は
オラクルは人間心理の探索のために作った「直感プログラム」で
あると語ります。第2章の「リローデッド」で、このオラクルに
ついてネオは、彼女とそのガードマンのセラフがバックドアから
出入りするのに気がついて、「あなたはプログラムだ」と迫るシ
ーンがあります。バックドアとは、ハッカーが再侵入のために作
っておく裏口のことです。システム開発者がセキュリティのため
に意図的に作るのも「バックドア」といいます。
 「リローデッド」で無数のドアが並ぶ廊下が登場しますが、こ
のドアはマトリックス内のあらゆる場所に抜けられるようになっ
ています。バックドアはそのドアの中に作られているのです。こ
の廊下に入ると、ネブカドネザル号の監視カメラから姿が見えな
くなることも覚えておくとよいでしょう。
 さて、「第2章で究極の選択をした後のネオ」とは何でしょう
か。「リローデッド」の終わりのところでネオは、マトリックス
の設計者アーキテクトという老人に会います。そのときのネオと
アーキテクトの会話は非常に重要な意味を持っているのです。
 アーキテクトは、ネオが救世主であることを認めた上でネオに
究極の選択を迫るのです。「人類を救うなら右のドアを、トリニ
ティーを救い、人類が滅亡する道を選ぶなら左のドアを――君は
どちらを選ぶか」と。このテーマは明日終了します。

1259号.jpg
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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