2012年12月07日

●「講和条約前の韓国の微妙な立場」(EJ第3444号)

 サンフランシス講和条約に対する韓国の立場は微妙なものだっ
たのです。そもそも「講和条約」というものは、戦争状態を終結
させるための条約であり、そのため「平和条約」ともいわれるの
です。しかし、韓国と日本は戦争状態になかったので、講和条約
の対象国ではないのです。
 したがって、韓国は3回にわたって草案の修正案を米国政府に
提出したのですが、米国側は韓国の要求に応じなかったのです。
一方、英国政府は独自のかたちで講和条約の草案を作成していた
のです。その竹島部分は次のようになっていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本の主権は、次の線によって囲まれた区域内にあるすべての
 島、隣接小島及び岩に対して存続する。すなわち、北緯30度
 から北西方向へおおよそ北緯33度東経128度に至り、北へ
 進んで済州島と福江島の間を通り、北東方向に向かって朝鮮と
 対馬の間を通り、引き続き同方向に、隠岐列島を南東に竹島を
 北西にみて進み、本州の海岸線を沿ってカーブし・・・
    ──「日本史特殊研究レポート」/「竹島の取り扱い」
―――――――――――――――――――――――――――――
 これによると、竹島は韓国領になっているのです。竹島は、北
緯37度15分、東経131度52分、隠岐島の北西157キロ
の海上にあるので、英国案の線引き案によると竹島は日本領にな
らないのです。
 英国は何に基づいてそのように決めたのでしょうか。一番大き
な理由は、米国の初期の草案がそうなっていたからです。それに
英国はシンガポールの陥落や捕虜の扱いを巡って日本に不満があ
り、終戦直後は、日本に対して寛容ではなかったのです。
 この相違については、1951年5月から米英両国間で協議が
行われたのです。講和条約草案の初期の頃に比べると、この時点
では、中国を巻き込んで朝鮮戦争が拡大していたこともあり、日
本の戦略的地位が一段と高まっていたのです。
 それに米国は、経度緯度で日本の領域を表示する案は、日本を
柵の中に囲い込むようなものであり、その心理的不利益を指摘し
て反対したのです。英国もこれに同意し、1951年5月16日
の講和条約最終草案で、日本から排除される地域を特定するネガ
ティブ方式で決着したのです。そこでは竹島(独島)は、該当地
域には指定されなかったのです。
 それでも韓国は独島(竹島)にこだわったのです。それはもう
ひとつ別の事情があったからです。日本は、ポツダム宣言受託と
同時にそのとき韓国で生活をしていた日本人はすべての財産を韓
国に残して、身ひとつで日本に強制帰国させられたのです。
 そのとき、問題になるのは、その財産はどうなるのかというこ
とです。韓国に残された日本および日本人の帰属財産は、韓国の
全財産の80〜90%を占めていて、もし、これが持ち出される
と韓国は破産してしまうことになるのです。これには、当時の韓
国の政治家は強い危機感を抱いていたのです。
 したがって、韓国の戦略としては、やがて行わなければならな
い日韓交渉において、韓国が少しでも有利に日本と交渉できるよ
うに、このさい取れるものは何でも取っておきたいと考えたわけ
です。やがてそれは、李承晩ラインを侵犯する漁船を拿捕し、多
くの日本人を抑留して日本に帰国させず、それすらも交渉の材料
として使うという、成り振り構わないものになったのです。
 1951年7月19日に、駐米韓国大使館のヤンユチアン大使
は、当時駐韓米国大使のアレン・ダレスと協議を行ったのです。
そのさい、ヤン大使は韓国政府の5つの要求を行っています。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.韓国を太平洋戦争の交戦国として認めるべきである
  2.日本は韓国に対し、国内残留財産請求権を放棄する
  3.     韓国を対日講和条約の調印国とすること
  4.     韓日間の漁業水域を明確に決定すること
  5.日本は、対馬、パラン島、独島の領有権を放棄する
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで、1と3は同じことを要求しています。1が認められれ
ば、講和条約の調印国になるからです。しかし、韓国は日本と戦
争していないので、これは無理な要求です。
 2については、上記のように、韓国が当時最も恐れていたこと
です。したがってこれを何としても日本に認めさせないと韓国が
破綻してしまうことになるので、要求に入っています。
 4の漁業水域の明確化は、マッカーサーラインを日韓交渉がま
とまるまで残して欲しいと米国に要求したのです。しかし、マッ
カーサーラインは、漁業資源の乱獲を防ぐ目的で暫定的に引いた
もので、講和条約の成立とともに廃止されたのです。
 当時韓国の漁業能力は低く、日本に対抗できなかったのです。
米国にマッカーサーラインを残すよう要請したのはそういう理由
からです。しかし、米国は聞き入れなかったのです。これが韓国
が李承晩ラインを引くことにつながったのです。
 5については韓国は明らかに失敗であったと思われます。独島
(竹島)だけにすればよかったのに、対馬に加えてその存在すら
不明のパラン島(波浪島)まで返せと要求したことによって、か
えって米国の信用を失ったのです。「竹島密約」なる著書を著わ
している、ソウル生まれで、韓国にも日本にも詳しいロー・ダニ
エル氏は、これについて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 領土争いの対象にならない「対馬」について領土権を主張する
 大統領、存在が確定できない「波浪島」の領有権を主張する韓
 国政府の準備不足と軽率な態度は、韓国の主張自体の信憑性を
 疑わせることにつながったといえる。これは、首相をはじめ、
 外務省が一体になって「理論武装」していた日本とあまりにも
 対照的な風景だった。        ──ロー・ダニエル著
                  「竹島密約」/草思社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
                 ── [日本の領土/48]

≪画像および関連情報≫
 ●米国(連合国)はなぜ竹島を日本領としたのか
  ―――――――――――――――――――――――――――
  サンフランシスコ平和条約中では、日本が放棄する朝鮮の領
  域に竹島は文字はなかった。アメリカ側は竹島を日本の領域
  内に入れるために、この措置を行ったのは事実である。その
  方針は、自国の利害を考え、日本による領土主張を受けたシ
  ーボルトの勧告がきっかけであった。国務省政策立案者は日
  本や韓国についてそれほど知識を持っていたわけではなかっ
  たので、この出先機関からの勧告を重要視したものと思われ
  る。韓国側は竹島の条文からの除外によって、竹島が日本の
  領域と認定されることをおそれ、アメリカと交渉したが、そ
  の交渉は失敗に終わった。サンフランシスコ平和条約では竹
  島は日本領と認定されたと言える。しかし、その条約を作成
  したアメリカ側の竹島への知識は本当にあったのだろうか。
  アメリカは第3者的な立場に本当に立てたのだろうか。この
  ような疑問点が残るのも事実である。
    ──「日本史特殊研究レポート」/「竹島の取り扱い」
     http://www.bl.mmtr.or.jp/~k-hideya/takeshima.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

アレン・ダレス駐韓米大使.jpg
アレン・ダレス駐韓米大使
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 日本の領土 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「今度の12月16日国民審査は合憲である」

「未来の党が勝てば最高裁が違憲判決?」竹崎最高裁長官、23年ぶりの訪米
小沢裁判を仕切った伏魔殿:最高裁事務総局総長:竹崎博允
>>http://nueq.exblog.jp/19616764/
へのコメント。

阿修羅へ書き込みました
>>http://www.asyura2.com/12/senkyo140/msg/561.html#c30
まー憲法違反の政教一致(創価学会の政治部が公明党)政党公明党は奇形司法とならんで日本の最悪の破廉恥病原だから、今度の選挙と同日施行の「最高裁裁判官国民審査」で投票所へ行って持参の黒ボールペンで最高裁判事全員を投票用紙に力いっぱい「オール×印」刻み込んで全員不信任してやれば公明党も滅ぶから心配しなくても良いよ青木愛ちゃん。
ここに書いたこと「黒ボールペンで最高裁判事オール×印全員不信任懲戒審査」を、政策などどうでもいいから選挙カーの中から路上からどこででも有権者へ大声で訴えてくれれば日本国主権者国民完全勝利間違い無しです。
Posted by 東行系 at 2012年12月09日 09:35
「今度の12月16日国民審査は合憲である」推敲しました

「未来の党が勝てば最高裁が違憲判決?」竹崎最高裁長官、23年ぶりの訪米
小沢裁判を仕切った伏魔殿:最高裁事務総局総長:竹崎博允
>>http://nueq.exblog.jp/19616764/
へのコメント。

阿修羅へ書き込みました
>>http://www.asyura2.com/12/senkyo140/msg/561.html#c30
まー憲法違反の政教一致(創価学会の政治部が公明党)政党公明党は奇形司法とならんで日本の最悪の破廉恥病原だから、今度の選挙と同日施行の「最高裁裁判官国民審査」で投票所へ行って持参の黒ボールペンで最高裁判事全員を投票用紙に力いっぱい「オール×印」刻み込んで全員不信任してやれば公明党も滅ぶから心配しなくても良いよ青木愛ちゃん。
ここに書いたこと「黒ボールペンで最高裁判事オール×印全員不信任懲戒審査」を、政策などどうでもいいから選挙カーの中から路上からどこででも有権者へ大声で訴えてくれれば日本国主権者国民完全勝利間違い無しです。
Posted by 東行系 at 2012年12月09日 10:32
「黒ボールペン投票」

阿修羅にアメポチ地位協定スパイ法匪総務省の工作員がいたのでとっちめてやりました。

>>http://www.asyura2.com/12/senkyo140/msg/535.html#c138
(一部転載:>>135持参のボールペンで、投票用紙に記入したら無効票だろ?

私はもう何年も前から黒ボールペン投票やってるが全っ然オッケーだったよw)

>>http://www.asyura2.com/12/senkyo140/msg/535.html#c140
>>http://www.asyura2.com/12/senkyo140/msg/535.html#c141
>>http://www.asyura2.com/12/senkyo140/msg/535.html#c142
Posted by 東行系 at 2012年12月09日 13:00
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。