2012年11月12日

●「東郷和彦氏による領土交渉3原則」(EJ第3426号)

 日本は3つの領土交渉を抱えている国です。ロシアに対しては
北方領土、中国に対しては尖閣諸島、そして韓国に対しては竹島
──この3つがあるのです。しかし、この問題に対処する外務省
には領土交渉を行うさいの基本原則がないといわれます。
 その基本原則について、東郷和彦氏は次の3原則で領土交渉を
行うべきであると提案しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1原則:領土の現状を変更しようとする国は力によって行
      動してはならない
 第2原則:実効支配している国は、相手国との話し合いには
      応じるべきである
 第3原則:両国が知恵を出して、衝突にいたらないようなメ
      カニズムを考える
                ──保阪正康・東郷和彦共著
       『日本の領土問題/北方四島、竹島、尖閣諸島』
                  角川ONEテーマ21刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本は尖閣諸島を実効支配していますが、「尖閣諸島は日本の
固有の領土であり、日中両国間には領土問題は存在しない」とし
て中国との話し合いには応じていません。
 韓国は竹島を実効支配していますが、日本の尖閣問題と同様に
「日韓両国間には領土問題は存在しない」として話し合いは拒絶
しています。日本が国際司法裁判所(ICJ)に提訴しようとし
ても、韓国は一切応じようとはしないのです。
 しかし、ロシアはどうでしょうか。ロシアは北方領土を実効支
配していますが、日本との話し合いについては、EJでここまで
述べてきたように、何回も応じてきています。つまり、ロシアは
第2原則を守っているといえます。
 確かに、例えば尖閣諸島の問題のように、いくら日本が「領土
問題はない」と強弁しても、中国も「ここはわが国の領土だ」と
主張して、毎日のように日本の領海や接続水域に公船を繰り出し
てきています。当然のことながら、日本も巡視艇を出して領海の
外に出るよう警告しています。
 しかし、尖閣諸島には灯台や港などの日本の構築物はなく、人
も住んでいないので、歴史的事情を知らない国から見ると、日本
と中国のどちらの主張が正しいのか、わからないはずです。どち
らも同じ条件だからです。
 少なくともいえることは、尖閣諸島の領有権をめぐって、日本
と中国の間には「争いがある」ことは明らかです。外国から見る
と、そのように見えます。
 しかし、日本は、相変わらず、「固有の領土であり、争いはな
い」という主張を繰り返すのみです。したがって、東郷氏の領土
交渉の3原則にしたがえば、ここは領土問題があることを認めて
話し合いをするしかないのです。
 この点について、元外務省国際情報局長である孫崎亨氏は次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 まず大切なことは、尖閣諸島は係争地であるという認識に立つ
 ことです。米国の立場を考えても、それは明らか。米国は領有
 権問題に関しては「中立だ」と言っているわけです。問題のな
 いところに「中立」というものが存在しますか?係争地である
 ことを出発点にすれば、次は日本がどうやって実効支配を続け
 ていくか。そこで「棚上げ」論です。「棚上げ」によって、日
 本は有利な立場にいられたのです。このメリットを、いま一度
 考え直すことが大事です。          ──孫崎亨氏
                『朝日朝日』10月12日号
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本の領土問題──北方領土、竹島、尖閣諸島の3つのうち、
ここまで北方領土について述べてきましたが、明日のEJから次
の領土問題である竹島問題を取り上げます。
 北方領土についてまとめておきます。どういう状況で日本は終
戦を迎えたのでしょうか。10月16日のEJ第3407号を読
んでいただきたいのですが、いわゆる北方領土の日本の領有権は
次のようになっていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.南樺太
    2.千島列島
    3.択捉島・国後島以南の北海道までの島嶼
―――――――――――――――――――――――――――――
 敗戦した以上、戦争によって獲得した領土は返還するのは当然
のことですが、本来それは日露戦争で獲得した「南樺太」だけな
のです。もともと樺太は日本とロシアの共同保有島でしたが、日
本はロシアとの外交交渉を通じて、樺太の領有権を放棄する条件
として、千島列島(北千島)を日本領にしたのです。
 しかし、当時のルーズベルト米大統領は、千島は日本が日露戦
争で獲得したものと勘違いして、ヤルタ会談で次の秘密協定を結
んだのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 南樺太およびクリ―ル諸島(千島列島)全島のソ連への返還
―――――――――――――――――――――――――――――
 もちろんヤルタ会談などは日本抜きで進めた協定であり、日本
はそれに縛られる必要はないのですが、ソ連は「クリ―ル諸島」
という自国の言葉と「千島全島」という日本名称を巧みに使って
拡大解釈できるように巧妙な仕掛けを施したのです。
 千島列島は北千島と南千島に分かれ、南千島には択捉・国後が
入るのです。それを「千島全島」という表現で、択捉・国後を占
拠し、クリ―ル諸島というロシアの独自の表現で、歯舞諸島と色
丹島まで占拠したのです。明らかにこれは不法占拠です。
 日本人はこの歴史的事実を踏まえたうえで、今後のロシアとの
交渉を続けて行く必要があります。明日のEJから、竹島の問題
を取り上げます。         ── [日本の領土/30]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜアメリカは北方領土交渉を阻むのか
  ―――――――――――――――――――――――――――
  日本政府はこれまで、ロシアに対して北方領土四島の返還を
  求めてきました。歯舞・色丹の二島を先行して取り戻すか、
  四島を一括で取り戻すかの違いはあるものの、四島全てを取
  り戻すという点においては世論の同意も得ているように思い
  ます。しかし、日本の四島に対する立場は必ずしも一貫した
  ものではありません。実際、日本政府は当初、サンフランシ
  スコ平和条約において国後島と択捉島を放棄したという立場
  をとっていました。また、鳩山一郎政権において外務大臣に
  就任した重光葵も、歯舞・色丹の二島返還によってソ連と手
  を打とうとしていました。しかし、それに対してアメリカの
  ダレス国務長官が、もしソ連に譲歩して国後・択捉を諦める
  なら、沖縄に対する日本の潜在主権は保障できないと警告し
  てきたのです。いわゆる「ダレスの恫喝」です。近年の研究
  や公開された公文書から、ダレスの介入には主として二つの
  理由があったことが分かっています。一つはアメリカの沖縄
  支配を確実にすること、もう一つは日本とソ連の和解を阻止
  することです。─『サンフランシスコ平和条約の盲点』参照
   http://ameblo.jp/gekkannippon/entry-11365925926.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

東郷和彦氏.jpg
東郷 和彦氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本の領土 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
免疫力をつけて身体がウイルスに感染することを何とか避けたい。
同時にパソコンがウイルスに感染することも避けたい。
gooブログにアクセスすると、ウイルスに感染することがあるから、近寄らないことが望ましい。
URLがblog.gooで始まっている。また角の中にgが入った赤いマークが付いている。
ウイルス対策ソフトがパソコンに入っておれば問題ないと思われるが、念のため。
君子危うきに近寄らず。
Posted by どじょう at 2012年11月12日 07:05
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