2003年12月17日

マトリックスは仮想現実の世界(EJ1254号)

 『マトリックス』の主役の3人は、昨日のEJ第1253号で
ご紹介しました。3人の主役とは、ネオ(アンダーソン)、トリ
ニティー、モーフィアスの3人です。
 一体何がどうなっているのでしょうか。ネオは、何者に狙われ
ているのでしょうか。モーフィアスとトリニティーたちは、誰と
戦っているのでしょうか。
 当然の疑問ですが、このあたりのことを少しずつ明らかにして
行きたいと思います。まず、現在の時点は1999年ではなく、
2199年であるということです。なぜ、1999年かというと
映画『マトリックス』の第1章が公開されたのが1999年だっ
たからです。つまり、現在よりも200年も経過した時代になっ
ていることになります。
 簡単に状況をいうと、人類は高度に発達した知能(AI)を持
つコンピュータによって支配されてしまったのです。具体的にい
うと、世界中のAI(人工知能)が結束して、人間に対して主導
権を握ろうと反乱を起こしたのです。
 これに対して人類は、当時のコンピュータが太陽エネルギーを
動力源にしていたので、太陽光線を人工的に遮断して対抗したの
ですが、AIは叡智を結集して人間の生体電気エネルギーを動力
源にするシステムを開発し、この戦いに勝利したのです。
 そして、それ以降、世界はAIによって支配され、人類はAI
にパワーを供給する発電機としてのサイバー人間に成り下がって
しまったのです。さらに、人類はもはや誕生するのではなく、果
てしなく広がるバイオ・テクノロジーの畑(子宮)で栽培されて
いるのです。
 そして作り出されたその時点から、発電装置につながれ、起き
ているともなく、眠っているともない半覚醒の状態で、死んだ者
を液化した養分を静脈から取り入れてそれを栄養分とし、AIに
生体電気エネルギーを供給しながら一生を終えるのです。こうい
う人間のことを「培養人間」というのです。『マトリックス』の
3人の主役――ネオ、トリニティー、モーフィアスは、いずれも
培養人間なのです。
 マトリックスとは、そうした培養人間たちに現実を悟らせない
ためにAIが創り上げた仮想現実の世界なのです。人間の心が見
ているものは、「神経によるインタラクティブ可能なシミュレー
ション・・・人間を支配下に置くためにAIが創りだした虚像の
世界」なのです。
 そこには高度に発達した20世紀の世界が広がっており、人々
はそれが現実であると錯覚してそこで暮らしているのです。ネオ
すなわち、アンダーソンが働いていたメタコーテックス社でのプ
ログラマとしての生活とネオとしてのハッカーの生活は、いずれ
もマトリックスの中の生活であり、現実世界において彼は培養人
間として巨大な発電装置につながれていたのです。つまり、彼が
現実だと思っていた世界は夢の世界、つまり、それこそ不思議な
国だったのです。
 この部分は、以上のようなことがわかっていて映画を見ると、
納得ができると思いますが、予備知識なしで見ると、おそらく何
のことかわからないと思います。おびただしい培養器の中で何か
が蠢めいており、その培養器が発電装置にコードでつながれてい
る――そういうシーンが目に飛び込んできます。ネオは、仮想現
実の世界では、大手ソフト会社のプログラマであり、ハッカーで
すが、現実の世界での彼は、培養器に入れられた培養人間だった
のです。このことをきちんと理解していないと、この映画は何の
ことか、さっぱりわからないはずです。
 ところで、人類の一部はAIの支配から逃れ、地底深くに都市
を作って住んでいたのですが、AIによって攻め立てられ、現在
は地球の核の近くに地底都市を作って住んでいます。もはや、こ
こを攻め落とされたら、人類は全滅するのみです。その都市の名
は「ザイオン」――つまり、ザイオンは人類最後の都市というわ
けです。ザイオンは、旧約聖書に「聖なる山、神の座、世界の中
心にして不落の砦」と記されたシオンにちなんだ名称を持ってい
るのです。
 したがって、ザイオンという都市には人間から生まれた本当の
人間――つまり、培養人間ではない人間が住んでいるのです。モ
ーフィアスは培養人間ですが、特殊な能力を発揮してAIのから
くりを見抜き、自らその状況から脱却したのです。そう、培養器
が飛び出して、独立したのです。そして、ザイオンの人間と協力
してAIから人類を解放するための活動をするゲリラを結成して
います。彼は、預言者オラクルがいう「救世主」の出現を信じて
おり、ひたすらそれを探し求めていたのです。
 モーフィアスは、やはり、培養人間であるトリニティーをマト
リックスから離脱させるなど、これはと思う同士を集めてひとつ
の軍団を形成し、ネブカドネザル号という名のホバークラフトの
船長をしているのです。トリニティーは、ネブカドネザル号のク
ルーですが、地位は将校です。
 このネブカドネザル号は、宇宙船のようなかたちをしています
が、飛んでいるのは宇宙ではなく、地球の内部なのです。地上は
完全にAIに占領されているので、もっぱら地底の通路――排水
溝などを飛ぶことになるのです。
 ネブカドネザルの名は、バビロンの捕囚を行った新バビロニア
王国の名に由来しています。この王は、旧約聖書のダニエル書に
登場し、ダニエルに夢解きを行わせた逸話で有名です。しかし、
このネブカドネザル号は2069年の建造で、2999年には既
に930年も経過しているので、相当の老朽船なのです。まあ、
そんなことは、どうでもよいことではありますが・・・。
 現実と仮想現実――われわれが現在存在し、生活をしている空
間がこういうバーチャルリアリティーでないといい切れる自信が
あるでしょうか。われわれが現実であると信じている世界が仮想
現実であるかも知れない――そう考えるとゾッとしませんか。こ
の映画は人類の未来を予言しているのかも知れません。

1254号.jpg
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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