2012年08月21日

●「語録から橋下市長の政治信条に迫る」(EJ第3369号)

 橋下市長は、どのような政治信条の持ち主なのでしょうか。昨
日のEJで、「小泉・竹中政治と同類」であるとする植草一秀氏
の説を取り上げましたが、今回は、政治評論家の森田実氏の説を
ご紹介します。
 橋下氏の著書を読んでも、その政治信条が必ずしも浮かび上が
ってこないのです。森田実氏は、橋下語録にこそ資料的価値があ
るとし、語録から次の5つ政治的特色を抽出しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
         1.憲法改正論者である
         2.民主主義と独裁政治
         3.競争原理重視主義者
         4.選挙に対する考え方
         5.公務員に対する態度
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1は、橋下市長が「憲法改正論者である」ことです。
 「橋下語録」から、憲法改正に関するものをピックアップする
と次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎小泉元首相みたいなスーパーマンじゃないと、政権運営は
  できない。大統領制は天皇制に反するので、憲法を改正し
  て首相公選制を目指すべきだ
 ◎憲法9条は、自分が嫌なことはしないという価値観だ。自
  己犠牲しないのなら、僕は別の国に住もうかと思う
 ◎首相公選制や参院廃止は国会議員は絶対認めない。既存の
  仕組みでやってきた人は船中八策は受け入れられない
          ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
                      ──森田実著
    『「橋下徹」ニヒリズムの研究』/東洋経済新報社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 これによると、橋下徹氏は明らかに憲法改正論者であると読み
取れます。憲法9条を改正し、首相公選制を実施し、参議院を廃
止するには、憲法改正が不可欠だからです。
 第2は、「民主主義と独裁政治」についてです。
 橋下語録から、民主主義と独裁政治に関するものをピックアッ
プすると次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎今の日本の政治に必要なのは独裁。チェックするのは議会
  選挙、メディア。このバランスのなかで政治は独裁しない
  といけない
 ◎独裁政治にならぬよう民主主義がある。権力者が意思を通
  そうとすれば、民主主義のコストとしてお金がかかる
          ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対して森田実氏は、独裁的強権政治は百害あって一利な
しと批判しています。いま必要なのは独裁政治ではなく、調和と
合意の政治です。
 第3は、「競争原理重視主義者」であることです。
 ここでいう「競争原理重視主義者」は「市場原理主義者」のこ
とをいっているのだと思います。語録は次のものがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎競争力が働いていない。競争力は僕の政治哲学だ。
 ◎僕は、競争を前面に出して規制緩和する小泉・竹中路線を
  もっともっと推し進めることが、今の日本には必要だと思
  っている    ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 森田氏は、現在の日本の混迷と低迷は、競争原理重視の姿勢に
原因があるといっています。そして現在は競争至上主義を見直し
修正資本主義に移行すべきであると説いています。
 第4は、「選挙に対する考え方」についてです。
 選挙については多くの語録があります。ここでは、次の2つの
み上げておきます。これについて改めて取り上げます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎今度の選挙は「政策選択選挙」だ。候補者が誰かなんてこ
  とは重要じゃない。
 ◎選挙が全てじゃないと言われるが、民主主義の世の中で、
  じゃあ選挙以外にどうやって物事を決めるのかといえば選
  挙しかない   ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
――――――――――――――――――――――――――――
 森田氏は、現行の小選挙区比例代表並列制についての反対論者
です。これによって日本の政治は劣化し、幼稚化し、政治家がチ
ルドレン化したと嘆いています。政策選択選挙ではなく、「人を
選ぶ」選挙にすべきであると主張しています。
 第5は、「公務員に対する態度」についてです。
 公務員に関しては語録は多くあります。これについても、改め
て取り上げるつもりです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎僕はどういう理由があったにしても公務員は政治家の決定
  に従わなければならないと思う
 ◎選挙に関与した(府市)職員は本当なら身分を失うところ
  だ。選挙に負けたら全員クビ。仕事があるだけありがたい
  と思わないといけない
          ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 森田氏は、政治主導は貫かねばなりませんが、それは公務員を
説得して行われるべきであり、強制や命令で動かすのは真の政治
主導にはならないと述べています。独裁的な強制や命令によって
軍隊的に公務員を働かせようとすることは、あってはならないし
正しいことではないと説いています。
                ―── [橋下徹研究/31]


≪画像および関連情報≫
 ●『橋下語録』/産経新聞出版:「まえがき」から
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「橋下さんって、本当はどういう人ですか」
  私たちは、よくそうした質問を受ける。読者や有権者にして
  みれば、常に橋下徹氏の身近で取材を続ける私たちは、何か
  よほどの素顔を知っていると思われがちだが、実際にほ「よ
  くわからない」というのが正直なところでもある。なぜか。
  彼はほとんど裏表を見せないからである。有権者にしてみれ
  ば、メディアを通じて見たまま、しやべったまま。取材者側
  にしても、自論を述べたまま、質問に答えたまま、が全てで
  あり、それ以上でも以下でもない。よく言えば、「本音の政
  治家」、あえて言えば、膨大な「本音」を発信し続けるがゆ
  えに、「本当は何が本音なのか」「本音の向こうが見えにく
  い政治家」のような気もするのである。
  ―――――――――――――――――――――――――――

『橋下語録』/産経新聞出版.jpg
『橋下語録』/産経新聞出版
posted by 平野 浩 at 03:30| Comment(1) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今日の「ぼちぼちいこか。。。」さまのエントリーをご紹介します

>8月20日 去年の動画ですが・・・
http://bochibochi-ikoka.doorblog.jp/archives/3528399.html

政治的・経済的なことでぶつかっていても、いざ向き合ってみると人ってこういうことができてしまう。その壁をひょいっと超えてしまったりできる。

去年の動画ですが、今だからこそご紹介させていただきます。

動画のURL
>>http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=kXqWJNOAX8M

彼の行動力に感服します。

失礼します。
Posted by 東行系 at 2012年08月21日 16:50
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