2012年08月14日

●「サプライサイド経済学とは何か」(EJ第3364号)

 橋下徹氏の主張について、政治評論家の森田実氏はフランスの
前大統領サルコジ氏に似ているとして次のように述べています。
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 橋下徹氏の主張はニコラ・サルコジ氏の主張に似ています。と
 もに新自由主義の側に立っています。パフォーマンスも似てい
 ます。これに対し、今回勝利したオランド新大統領は、地味で
 堅実という点で平松邦夫前大阪市長や木原敬介前堺市長に似て
 います。ともに、中道的・社会民主主義的政策を主張していま
 す。2011年11月の大阪市長選においては橋下徹氏が勝ち
 平松邦夫氏が敗れました。新自由主義が勝ち社会民主主義が負
 けたのでした。しかし、2012年5月のフランス大統領選で
 は逆の結果になりました。社会民主主義が勝ち、新自由主義が
 負けたのです。               ──森田実著
     『「橋下徹」ニヒリズムの研究』/東洋経済新報社刊
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 新自由主義を理解するには「サプライサイド経済学」について
知る必要があります。経済に関する基本的な考え方として、「需
要」──デマンドサイドにテコ入れをするか、「供給」──サプ
ライサイドに力を取れるかの判断が重要になります。
 サプライサイド経済学というのは、供給側、すなわちサプライ
サイドをテコ入れして経済成長を促すという考え方の経済学のこ
となのです。
 ここでサプライサイドとは、「企業」と考えると分かりやすい
と思います。サプライサイドにテコ入れをする方策としては、企
業減税を実施し、民間投資を促す規制緩和を行い、競争原理を導
入するため、国営企業を民営化するなどがあります。その結果と
して「小さい政府」の実現を目指すのです。
 そして、民営化を進めても競争相手が必要であるので、そのた
め外国資本を積極的に受け入れるのです。各種の関税を撤廃すれ
ば、外資系企業が一気に参入し、民営化された国営企業の供給力
は上がってくるのです。そのため、TPPへの参入も推進するこ
とになります。いわゆる小泉・竹中路線と同様のやり方です。し
かし、その後、格差が拡がるなどの大きな後遺症を残しているこ
とも事実です。
 サプライサイド経済学というと、必ず引き合いに出されるのが
レーガノミックス──第40代米国大統領、ロナルド・レーガン
が取った経済政策です。
 このレーガノミックスについて、国際経済評論家の田中宇氏が
興味深い論文を書いておられるので、その要旨をご紹介すること
にします。
 ロナルド・レーガンが米大統領になったのは、1980年のこ
とです。レーガンと共和党で予備選を争っていたのは、ジョージ
・ブッシュ(パパブッシュ)だったのです。レーガンとブッシュ
は経済理論がまるで違うのです。
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 予備選でレーガン候補は「裕福層に対する減税によって税収入
 を増やす」という政策論を展開した。裕福層は、減税によって
 増えた実収入を株式などの投資に回し、その金は企業の資金に
 なって経済活動を盛んにし、法人税やキャピタルゲイン税(株
 などの売買益への課税)の収入が増えるので、結局は政府の税
 収増につながる、という経済理論だった。
        ──田中宇著「帰ってきたブードゥー経済学」
           http://tanakanews.com/d1227voodoo.htm
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 パパブッシュはこの政策を「ブードゥー教的である」といって
批判したのです。ブードゥー教とは、呪術を使う宗教として知ら
れており、それをレーガンの経済理論に喩えたのは、「減税すれ
ば税収が増える」というレーガンの主張が呪術と同じで根拠がな
いと考えたからです。
 しかし、選挙ではとうてい勝てないし、レーガンなら民主党候
補にも勝てると判断したブッシュは、レーガンと組む戦略を立て
たのです。共和党内で中道派とタカ派が談合し、ブッシュがレー
ガンの副大統領候補になるという「連立」が図られ、実際に民主
党候補を破って、レーガンは大統領、ブッシュは副大統領に就任
したのです。ブッシュとしては、経済でレーガンの暴走を抑えよ
うという気持ちがあったのです。
 案の定というべきか、レーガンが行った富裕層への減税は、税
収の増加にはつながらなかったのです。レーガン政権は増収を前
提に軍事費を拡大し、軍事費が増えた分だけ米国の財政赤字が急
拡大する結果になったのです。
 当然のことながら、大量の国債を発行したのですが、なかなか
売れず、長期金利は14%まで跳ね上がったのです。この高金利
によって米国には世界中から大量の資金が流れ込んだのですが、
それによって起こったのはドル高だったのです。
 ドル高になると、米企業の輸出競争力は弱体化し、輸出入のバ
ランスが崩れて貿易赤字が急拡大したのです。そして、財政赤字
と貿易赤字という「双子の赤字」が経済の足を引っ張り、アメリ
カは不況に陥ったのです。こうしたレーガン政権の下でブッシュ
は副大統領として必死に米国経済を支えたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 レーガンの経済政策は減税案のほか、規制緩和、政府支出の縮
 小(財政赤字の削減)など、企業と投資家(サプライサイド)
 を優遇して経済を活性化させようとするもので、総称して「サ
 プライサイド経済学」「レーガノミックス」などと呼ばれた。
 規制緩和(民営化)の推進はその後、冷戦終結を機にIMFな
 どによって世界中に広げられたが、減税政策は失敗し、財政赤
 字も減るどころか軍事費増加で拡大した。──田中宇著の論文
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                ―── [橋下徹研究/26]


≪画像および関連情報≫
 ●サプライサイド経済学/日経ビジネス経済・経営用語辞典
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  古典派的な前提を一段と強力に推し進めるとともに、税制が
  供給サイドに与える影響を強調した理論。1970年代に発
  展した。サプライサイド経済学を主張する一派(サプライサ
  イダー)は、古典派的な立場から、「供給がそれ自身に対す
  る需要を作り出す」というセイの法則が短期的にも成立し、
  需給ギャップの拡大は起こり得ないと主張。したがって需要
  サイドの調整に焦点を当てた政策はすべて否定した。フリー
  ドマンらのマネタリストは、景気のファインチューニング策
  としての金融政策を否定する一方、中長期的な視点からイン
  フレ期待を安定させるという意味での金融政策の役割を限定
  的に認め、マネーサプライの管理を主張したが、サプライサ
  イダーは実体経済とマネーサプライは無関係とし、金融政策
  は短期的にも長期的にもすべて無効とした。一方で、減税は
  有効とする。
  http://business.nikkeibp.co.jp/article/keyword/20120221/227522/
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レーガンとブッシュ両米大統領.jpg
レーガンとブッシュ両米大統領
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大学のレポートでレーガノミックスについて書いていてサプライサイド経済学でつまずいてネットでこのページを見つけました。とても助かりましたありがとうございます!!!
Posted by ウッディ at 2013年07月21日 18:30
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