2012年07月06日

●「ユーロ危機は何も解決されていない」(EJ第3338号)

 2012年4月2日から本日まで67回にわたって欧州危機に
ついていろいろな角度から述べてきましたが、本日でひとまず終
了することにします。
 ちょうどこのテーマについて執筆している期間中、欧州では事
態が日々変化し、それを追いながらの記述であったことや、日本
では欧州についての情報が少ないということもあって、意を尽く
せなかったところも多々あったと思いますが、ある程度欧州危機
の本質に迫ることはできたと思います。
 そこで、このテーマの最後に欧州危機の本質を改めて整理して
おくことにします。欧州危機は現在でも何ら解決しておらず、こ
れからも何が起きるかわからないからです。
 リーマンショックは基本的には「銀行危機」です。これによっ
て多くの銀行が潰れましたが、国家がその救済を行い、何とか沈
静化させたのです。しかし、今回の欧州危機、すなわちユーロ危
機は銀行だけでなく、国家の発行する国債も信頼を失うという危
機に陥ったのです。これは国家の家計に火がついたことを意味し
ます。リーマンショックのときにはなかった現象です。
 国債というのは、国家が保証する最も安全確実な債券です。そ
こには国の信用がかかっているのです。しかし、ユーロ危機では
その国債の元本や金利が返済されないで、踏み倒されるデフォル
トが起きる寸前まで行ったのです。これは大変なことです。
 国債が破綻するということは、財政が破綻することであり、国
家が破綻することを意味します。銀行危機だけならば、国家が救
済することができますが、ユーロ危機は、銀行を救うはずの国家
財政に火がついているのですから、リーマンショックよりも危機
の度合いは深刻なのです。戦後において、先進諸国の国債が破綻
の危機に瀕することは一度もなかったことです。
 佐賀大学経済学部教授米倉茂氏は、ユーロ危機の原因として次
の3つを上げています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.欧州の銀行のドル依存性が高いこと
     2.欧州の銀行の過小資本性と不良債権
     3.ユーロ圏の国債バブルの発生と崩壊
―――――――――――――――――――――――――――――
 欧州の銀行は、世界金融危機が発生する2007年〜2008
年まで、過去10年間にわたって、ドル資産を膨らませてきたの
です。外国為替スワップにおいて、欧州の銀行はユーロで資金を
調達し、為替リスクを負うことなく、ドル資産の保有をひたすら
増やし続けたのです。
 具体的には、安価なドルを入手し、これを高利回り格付けのド
ル建て金融商品で運用して利ザヤを稼ぐやり方です。当然、あの
サブプライム関連証券も大量に扱っていたのです。このように欧
州の銀行はドル依存性が高いのです。
 それに欧州の銀行の自己資本は「薄皮饅頭」といわれるように
きわめて薄いのです。現在でも、欧州の銀行の自己資本の充実化
はあまり進んでいないのです。かつて日本もそういう時代があっ
たのですが、日本の場合は既に構造改革をやっており、自己資本
は十分に厚くなっています。
 欧州の銀行は、ドルの短期借りで資金を調達し、それを更新さ
せながら、ドル資産を長期運用していたのです。もし、短期ドル
の返済を迫られたときは、ドル資産をそのつど売却して対応して
いたのです。
 しかし、2007年8月のBNPパリバ・ショック、サブプラ
イム問題、リーマンショックが起きると、金融市場は大混乱にな
り、ドル資産は市場では値がつかなくなったのです。市場の流動
性が枯渇し、ドルの資金調達が難しくなったのです。そのため、
支払い危機から破綻する銀行が頻出したのです。この深刻なドル
不足について、米倉茂教授は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 そこでドル不足に慌てたユーロ圏の銀行は為替スワップ市場に
 殺到します。しかし米国の銀行によるユーロ需要と欧州の銀行
 によるドル需要の関係は大きな不均衡が生じます。為替市場で
 一方的にドル需要が膨張するので、ドル調達コストがドルイン
 ターバンク市場のコストをも凌駕します。米国の銀行が欧州の
 銀行の支払い能力を疑うカウンターパーティリスクも合わさり
 為替スワップによるドル調達コストは禁止的な高さになってし
 まいます。            ──米倉茂著/言視舎刊
  『すぐわかるユーロ危機の真相/どうなる日本の財政と円』
―――――――――――――――――――――――――――――
 ユーロ圏の国債バブルの発生は、当然予測されていたのです。
 ユーロ導入前の時点で、長期金利の利回りはギリシャについて
は22%〜23%、イタリアやスペインは11%〜12%だった
のです。それに対して、ドイツのそれは5〜6%です。これほど
金利が違う国を一本化するのは乱暴な話です。
 ユーロ圏の一員になると、PIIGPS諸国にとっては信じら
れないような低金利で国債が発行できるので、どんどん国債発行
を行ったのです。これでは不動産バブルが発生することは不可避
です。実際にその通りになってバブルがはじけた結果、危機は起
きたのです。このことはこれまでに詳細に述べています。
 繰り返しますが、問題は解決していないのです。米倉茂教授の
指摘したユーロ危機の3つの原因のうち、第2の「欧州の銀行の
過小資本性と不良債権」の問題について、その救済システムの方
向が見えた程度です。
 ユーロ危機は世界経済の火薬庫になりつつあります。もし、危
機が深刻化すると、世界経済を道連れにすることは確実であり、
もちろん日本にも大きな影響が及びます。「目下の危機において
先進諸国のすべてがレントゲンにかけられ、骨と皮と脆さがさら
け出されている」──ECB前総裁トリシェ氏の印象に残る言葉
です。       ―── [欧州危機と日本/67/最終回]


≪画像および関連情報≫
 ●ヨーロッパ版「失われた数10年」/ビル・エモット
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ユーロを維持するコストは極めて高いものになる。財政基準
  を緩める妥協によって、ドイツなど北ヨーロッパの国々はイ
  タリアとスペインの国債を買い支えるために何千億ユーロも
  の資金を共同基金に投入しなければならない。そうした負担
  に対する世論の反発がドイツでどこまで強まるか、金融市場
  は注目するだろう。もし反発が強まれば、金利はますます高
  くなり、成長もますます鈍化する悪循環に陥る。まさに悪夢
  だ。ヨーロッパは妥協によって何とか破滅を切り抜けられた
  ことを誇りに思うしかない。ただし副作用は深刻で長く続く
  だろう。ユーロ圏諸国の長期的な成長力が削がれていく可能
  性も大きい。要するにヨーロッパには「失われた数10年」
  が待っているのだ。たとえユーロ崩壊と大恐慌を免れても、
  1991年後の日本のようにユーロ圏の成長は止まり、おそ
  らくデフレに陥る。日本が「失われた10年」も「失われた
  20年」も耐えてこられたのは、社会に強い連帯意識と団結
  力があり、しかも隣に急成長する中国市場があって輸出がで
  きたからだ。ユーロ圏にはいずれの強みもない。従って長い
  停滞に苦しむうちに、ヨーロッパは予測のつかない深刻な政
  治危機を抱え込むことになる。    ──ビル・エモット
              「世界を絶望に導くユーロ恐慌」
     「ニューズウィーク日本版」/2012年7月4日号
  ―――――――――――――――――――――――――――

米倉茂氏の本.jpg
米倉 茂氏の本
posted by 平野 浩 at 03:15| Comment(3) | TrackBack(0) | 欧州危機 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
《ムーの遺民扶桑の秋津島豊葦原瑞穂の洲を伝える人々》

比類なき素晴らしい推理と名文です。

「人類は原始時代500万年に亙って恒常的な餓えに晒され、共認充足を唯一の命綱にして生き延びてきた。そして、元々同類を対象とする共認回路を自然・宇宙に対して作動させ、宇宙との共認(対話)を試みた。そこで人類が万物の背後に観たのが精霊である。この回路が観念原回路である。
この回路は360度外向きに放射する徹底した前方思考であり、ここから予知・霊感思考が生まれた。」

(2012年07月05日
近代科学の源流2 ギリシア哲学から近代科学を貫く架空観念への短絡思考→素粒子論のカルト性と地球破壊)
>>http://www.sa-yu.net/blog/2012/07/002309.html
Posted by 東行系 at 2012年07月06日 06:56
今日は長周新聞HP記事から一部よくまとまっている部分を転載させてください。長いですが元記事はもっと長いです(笑)

>公約全て覆し自・公と合体
野田民主党が分裂
            「米国の為」の翼賛政治    2012年7月4日付

>>http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/kouyakusubetekutugaesijikoutogaltutai.html

>> 分厚い堤防決壊し行動波及 新しい情勢が到来

 民主党は総選挙以後の3年間で公約をすべて覆し、自民党となんら変わるところがなくなった。そして自民党、公明党と合体して、なるほど圧倒的な多数派となって消費税増税法案成立をなにがなんでもやるというのである。戦前の戦争に突き進んでいった過程と同じ政党政治の崩壊であり、翼賛政治のできあがりである。昔は「天皇のため」、今は「アメリカのため」、国民の生活や生命を踏みにじってかまわぬというものである。
 小沢は「金権政治の権化」としてメディアが標的にしてきた。金権政治なら自民党も民主党も同じことをやっていてめずらしくもない。小沢がターゲットになったのは、小沢が反米というほどではないが、アメリカの望む方向にあわなかったからである。「在日米軍は第7艦隊だけでよい」といったり、大量の国会議員を引き連れて中国訪問をして中国・アジア重視の姿勢を見せたりしたことがアメリカ中枢の怒りにふれたからである。
 検察が小沢とその周辺を無理を重ねて締め上げたのも、メディアがつねに悪党扱いをしてきたのも、背後勢力の意志を代弁したからである。そして鳩山、菅、野田とアメリカへの全面服従のレベルを上げてきた。
 どの政党・政治家が政府を担当してもやることは変わらない。みなアメリカのいいなりである。総理大臣をはじめ大臣や議員どもはアメリカの代理人にすぎない。財務省、防衛省、検察をはじめ官僚組織、軍事・司法組織はアメリカや財界と直結して実際の政治を動かす。大メディアもアメリカ直結で真実はかき消してアメリカおべんちゃらの大本営報道が染みついている。一群の御用学者も、革新系と称されるものもアメリカで飼い慣らされた連中が権威者となっている。そういう権力構造が政党を操って政治を動かしている。
 日本の政治がそのようにして動いているのに対して、それを規制する力は大衆的な直接の政治行動である。首相官邸前の、1万人、4・5万人、20万人とふくれあがっていく原発再稼働やめよの大行動は、60年安保斗争の13万人という国会前デモの規模を上回った。そして日本全国で「みんな思っていることは同じだ」との共感を広げている。それは政党政治の崩壊のなかで、「政治を変える」という大衆の直接の政治行動が、これまでの分厚い堤防を決壊させて広がりはじめたことを示している。疑いなく新しい情勢の到来であり、それが多くの人人に「日本を変えることができる」という希望を感じさせている。
 原発再稼働にせよ、消費税増税にせよ、米軍再編大増強にせよ、TPPにせよ、日本民族の根本的な利益を売り飛ばす政治は、日米安保が根本問題であり、安保にしがみつくのか、安保と手を切るのかの対立としてあらわれている。
<<

これが扶桑の人々、渋沢敬三の曰く「常民」である。
Posted by 東行系 at 2012年07月06日 20:49
「欠陥機オスプレイが製造され続け配備されるわけ。」ふじふじのフィルターさま
>>http://fujifujinovember.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/http.html
 我が国のというか米国防省支配下の防衛省の森本防衛相が、アメリカ様がオスプレイには根本的欠陥はないと言っているのだから、欠陥はないと申しております。この人には自分の脳みそはついていません。オウムとか九官鳥とほとんど変わらない人です。
(中略)
 野田政権だとか自民党というのは、こんな欠陥機の日本持ち込みを拒否するどころか唯々諾々と受け入れれ、米軍事産業に儲けさせるために日本人の命をホイホイと差し出す人たちだということがわかりました。

 そして、オスプレイの一件で、米軍基地なんて軍事産業の商売道具でしかないということが明快にわかってしまいました。

2012年7月 7日 (土) オスプレイ, 米軍再編, 自民党, 野田内閣 | 固定リンク
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
天災と人災の違いがわかるかな?国語力がある者ならすぐわかる。

人災とは人が起こす災いである。

参照:「国会事故調・報告書「地震で損傷の可能性」言及・菅直人他の反応:動画・報告書」ざまあみやがれいさま
>>http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65813724.html
>7. 通りがけ 2012年07月06日 21:10
>人災とは過失にしろ故意にしろ必ず犯人が存在する刑事犯罪のことである。

>つまり国会事故調の会見での人災発言は、菅内閣東電保安院霞ヶ関NHK記者クラブマスゴミの共謀共同正犯の犯罪放射能棄民テロの存在を調査で突き止め被疑者を刑事告発したと言うことだ。


天災とは地震や津波や台風など自然が起こす不可抗力の災いのこと。


さて人災でばらまかれた放射能は無主物ではなくばらまいた犯人の責任所有物である。
これに対して天災の不可抗力で破壊された所有物たとえば津波によって押し流された家屋や自動車は無主物となる。

福一事故放射能を無主物と判決した東京地裁の裁判官は小学生レベルの国語力もない知的障害者であるか故意の犯罪者であるかの二つに一つでしかあり得ない。


これで人災テロリスト野豚逮捕内閣総辞職にてスパイ政府終了である。政局も選挙も全く必要ない。

そのあとは直ちに福一石棺桶化に着手し、選挙があれば地位協定破棄動議を提出する候補者にだけ黒ボールペン投票すればよい。

さすればスパイ霞ヶ関を一網打尽にして日本が江戸時代以来の独立を取り戻せる。
Posted by 東行系 at 2012年07月08日 00:45
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