2012年07月05日

●「ユーロに果たして未来はあるか」(EJ第3337号)

 「GREXIT」という言葉がヨーロッパのメディアによく登
場するそうです。どういう意味でしょうか。
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   Greece (ギリシャ)+ exit(退出)= GREXIT
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 「GREXIT」は、ギリシャのユーロ離脱を意味しているの
です。6月17日の総選挙が終わり、緊縮賛成派の政権が樹立し
何となくギリシャは落ち着いた感じになっていますが、実は問題
は何も解決されていないのです。
 一応ギリシャは、今まで通り緊縮賛成派が政権を握り、現状維
持を保つ体制ができただけです。しかし、米国スレート誌のビジ
ネス・経済担当のマシュー・イグレシアス記者は次のように書い
ています。
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 問うべき疑問は、ギリシャの現状維持を図るという「常識的」
 選択のどこが安心なのか、だろう。短期的にいえば、今回の再
 選挙の結果が意味するのは、緊縮路線を維持するということ。
 そして、ギリシャの事情を無視したドイツ仕込みの金融政策を
 続けるということだ。つまりギリシャは長期的な競争力を回復
 するため、痛みに耐えながら、構造改革を進めなければならな
 い。だがそんなことができるのか。74年に軍事独裁政権が崩
 壊して以来、ギリシャは統治の機能不全と汚職の泥沼にはまっ
 ている。2大政党のND(新民主主義党)とPASOK(全ギ
 リシャ社会主義運動)はカネで動き、国民のためでなく、支持
 者のために政府を運営してきた。
              「世界を絶望に導くユーロ恐慌」
     「ニューズウィーク日本版」/2012年7月4日号
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 7月3日のEJ──同志社大学浜矩子教授は、ユーロ存続の条
件として「域内で経済実態の収斂度が完璧である」(第1条件)
と「域内で所得再分配の仕組みが確立されている」(第2条件)
の2つを上げています。しかし、ギリシャの場合、第1条件を大
幅に満たしていないことに加えて、その格差を埋めるための第2
条件──中央所得分配装置の確立にドイツが強硬に反対している
ので、解決不能の状態であり、このままでは崩壊必至なのです。
 これを受けて浜矩子教授は、本来合理的な解決策は、「ALL
EXIT」であるが、何とか存続を図るのであれば、次の3つの
アイデアを実施することであると述べています。
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       1.ユーロ圏の複数リーグ化実現
       2.ユーロをやめてERMを復活
       3.ユーロ圏への複数金利を導入
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 第1は、「ユーロ圏の複数リーグ化実現」です。
 これは、野球と同じように、ユーロ圏をメジャーとマイナーに
分割しようという構想です。
 現在、ユーロへの新規参入国に対しては、「ERM2」という
ものに2年間にわたって所属することが義務づけられています。
自国通貨の変動をユーロに対する平価の上下15%の範囲に抑え
ることが求められるのです。
 2リーグ制のユーロの場合は、どちらもユーロなので、その差
をどのように設定するか検討する必要があります。ユーロの基準
に合わなくなった国は、しばらくマイナーに属して経済状態を調
整し、基準をクリアしてメジャーに戻るのです。
 第2は「ユーロをやめてERMを復活」です。
 これは、ユーロをやめて各国それぞれの通貨に戻すのですが、
ばらばらになるのではなく、ユーロになる前に実施したERMに
戻すという構想です。浜矩子教授は次のように述べています。
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 単一通貨方式がもたらす諸問題を排除しながら、統合された通
 貨圏としての形は残すという発想である。既に見てきた通り、
 経済格差が存在する中で国々が単一通貨を共有することには、
 実に弊害が多くて無理がある。軟弱者のただ乗りを許してしま
 う。お仕着せワンサイズの政策運営に服従することを強いられ
 る。体制維持のための弱者救済にカネがかかって仕方がない。
 こうした諸問題を回避しながら、通貨統合の形を維持していく
 には、存在にERMの復活が効果的でありそうに思う。
                ──浜矩子著/朝日新聞出版
      「EUメルトダウン/欧州発 世界がなくなる日」
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 第3は「ユーロ圏への複数金利を導入」です。
 通貨はユーロ一つであるが、金利を複数にしてはどうかという
発想です。そんなこと無理、ありえないという人が多いが、あえ
て提案する──このように浜矩子教授はいうのです。
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 実際問題として、ECBが決める一本の政策金利を共有しなけ
 ればならないことは、経済実態に大きな開きのある現ユーロ圏
 の各国にとって、誠に窮屈なことである。各国それぞれ、身の
 丈に合った金利を採用する余地が残るよう、工夫が出来ないも
 のかと思う。          ──浜矩子著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 そんなのは荒唐無稽という人が多いでしょうが、そういう教科
書にない構想でもをやらない限り、ユーロは維持困難と浜矩子教
授はいうのです。だから、「ALLEXIT」だと。
 浜矩子教授はこれを「プレスクヴェ」と呼んでいます。これは
「デジャヴェ」の対称概念で、「ほのかに見える」「かいま見え
る」という意味だそうです。「ほのかに見えるユーロの姿」とい
う意味でしょうか。逆にいうと、「はっきり見通せない未来」と
いう意味にもなる。     ―── [欧州危機と日本/66]


≪画像および関連情報≫
 ●ユーロに未来はあるか/ハーバート大教授の予想
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  EUとユーロの未来はどうなるか?その答えは、「EUは解
  体するが、ユーロは生き残る」──そう予言する学者がいま
  す。経済・金融史を専門とする、気鋭のハーバード大教授・
  ニーアル・ファーガソンです。スコットランド出身のファー
  ガソン教授は約10年後の欧州世界についての予想を米「ウ
  ォール・ストリート・ジャーナル」紙に昨年末発表し、その
  大胆極まりない内容が大きな話題を呼びました。発売中のク
  ーリエ2月号(2012年)では、その記事「2021年の
  ヨーロッパを案内しよう」を掲載しています。ファーガソン
  教授の予想によると、2012年に「ある国の離脱」によっ
  てEUの解体が始まるといいます。しかも、その国とはギリ
  シャやイタリアではなく、英国だといいます。ユーロを導入
  していなかったため、ユーロ圏の危機による被害を最小限に
  抑えられた英国は、保守党内のEU懐疑派に促されて「EU
  に留まるか否か」についての国民投票を実施。その結果、約
  6:4でEU離脱が支持されるというのです。
              http://courrier.jp/blog/?p=9566
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ファーガソン教授(ハーバード大).jpg
ファーガソン教授(ハーバード大)
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州危機 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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