2012年07月04日

●「ソロスが提言する『3つの措置』」(EJ第3336号)

 「ユーロに入っていなくてよかった」──最近漏らした英国の
キャメロン首相の言葉です。本音です。しかし、EUの中心国の
首脳でありながら、何という発言でしょうか。日本にも心ない政
治家が多いですが、英国よ、お前もかという感じです。
 ユーロ圏が停滞すれば、英国経済への打撃が大きく、金融セン
ターであるシティの基盤が揺らいでしまうのです。シティにとっ
てはユーロの存在は非常に重要なのです。この英国の首相は、日
本の野田首相と同じく、経済というものがまるでわかっていない
ようです。そのためか、いま英国の国内経済は大変なことになっ
ています。
 英国は、自らを通貨統合義務を伴わない「オプトアウト」のポ
ジションに身を置いていますが、EUの中心国としてはあまりに
も無責任であるといえます。
 結局、ユーロというシステムは作ってしまった以上、途中で抜
けることは許されないのです。ユーロには離脱メカニズムが用意
されておらず、離脱という選択肢はないのです。したがって、た
とえギリシャのような小国が離脱しても、ユーロ全体が崩壊する
事態になってしまうのです。
 今年の3月8日にギリシャはデフォルトの寸前まで行ったので
す。そこで、ギリシャの債務を75%棒引きにしてまで守ったの
ですが、これは正解だったのです。いわゆる「秩序あるデフォル
ト」といわれるものであり、既に述べている通りです。
 ジョージ・ソロス氏は、2011年9月15日付のレポートで
次のように述べています。まさに慧眼です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小国のデフォルト、もしくはユーロ離脱の可能性に備えて、そ
 れに対処する仕組みを築くことは、それらの国を見捨てるとい
 うことではない。それどころか、秩序あるデフォルト──他の
 ユーロ圏諸国とIMFが債務を肩代わりするデフォルト──が
 可能になれば、ギリシャやポルトガルはどちらの道をとるかを
 選ぶことができる。そのうえ、現在ユーロ圏のすべての赤字国
 を脅かしている悪循環──緊縮政策が成長の可能性を弱め、そ
 のため投資家が法外に高い金利を要求し、それがこれらの国の
 政府にさらなる支出削減を強いるという悪循環──を断ち切る
 ことができる。    ──ジョージ・ソロス著/藤井清美訳
       『ソロスの警告/ユーロが世界経済を破壊する』
―――――――――――――――――――――――――――――
 ジョージ・ソロス氏は、ユーロ危機を解決するためには、次の
3つの措置を行うべきであるとしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.銀行システムの改革と資本強化策推進
     2.ユーロ参加国共同保証の共同債の発行
     3.ユーロ離脱メカニズムの仕組みを構築
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1の措置は「銀行システムの改革と資本強化策推進」です。
 マーストリヒト条約では、救済基金は銀行を救済する権限がな
かったのです。それにEFSFはたとえ銀行に資本注入する場合
も、その国への融資として出すしかなかったのです。
 ソロス氏は早くから、救済基金が銀行を直接救済できる権限を
持つべきであり、そのためには銀行の監督も行うべきであると提
案してきているのです。
 しかし、これについては7月2日のEJで述べたように、6月
28日〜29日のEU・ユーロ首脳会議において、実現のメドが
立っています。
 第2の措置は「ユーロ参加国共同保証の共同債の発行」です。
 ユーロ圏共同債──これについてジョージ・ソロス氏は、次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ヨーロッパにはユーロ圏共同債が必要だ。ユーロの導入は経済
 の収欽を強化するとされていたが、実際には格差を拡大し、債
 務や競争力のレベルに大きな差異が生じでいる。重債務国が高
 いリスク・プレミアムを払わされたら、これらの国の債務は持
 続不可能になるが、それが今まさに起きようとしているのであ
 る。解決策は明白だ。赤字国が黒字国と同じ条件で債務を借り
 換えられるようにすればよいのである。
            ──ジョージ・ソロス著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 このソロス発言の「赤字国が黒字国と同じ条件で債務を借り換
えられるようにすればよい」という部分は重要です。現在、ユー
ロ圏では、国債発行はばらばらに行われています。それをユーロ
として共同して発行できるようにしようということです。もちろ
ん共同債の発行には、いろいろ制限がかかるでしょうし、最終的
には金融政策に続いて、財務政策までも統合化することを意味し
ているのです。
 共同債についてドイツ国民のほとんどは反対しており、メルケ
ル首相は、先日のEU首脳会議でも強行に反対を貫いているので
とてもすぐには実現できそうにないのです。
 第3の措置は「ユーロ離脱メカニズムの仕組みを構築」です。
 現在のユーロには離脱メカニズムはないので、たとえ離脱せざ
るを得ない国が出てきても、それによるユーロ全体への衝撃を制
御できないのです。したがって、その衝撃をできるだけ低くでき
るような離脱メカニズムを予め作っておくべきであるという提案
です。ソロス氏は、これについて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 秩序ある離脱の仕組みがないなかでは、ユーロ圏共同債体制は
 逃れようのない拘束力を持つものでなければならない。
            ──ジョージ・ソロス著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
              ―── [欧州危機と日本/65]


≪画像および関連情報≫
 ●ユーロ圏共同債についてのメルケル首相の見解
  ―――――――――――――――――――――――――――
  [ベルリン/マドリード 27日 ロイター]メルケル独首
  相は6月27日、下院で演説し、欧州首脳が新たな財政規律
  で合意する以前にユーロ圏共同債の導入を求めているのは本
  末転倒だと批判。「首脳会議では連帯債務に関する案に協議
  が集中し、規制や構造政策に関する議論が軽視されるのでは
  ないかと懸念している」と述べた。(中略)メルケル首相は
  ユーロ圏各国がそれぞれの予算監督権の返上で合意するまで
  共同債に関する検討はできないとの考えを明確に示し、「連
  帯債務は十分な規制がなされた時に初めて可能になる」と述
  べた。さらに、ユーロ圏共通債や債務償還基金などは、ドイ
  ツで憲法違反となるばかりでなく、経済的に誤った、非生産
  的なものだ、との見解を示した。
  【フランクフルト時事】ドイツのメルケル首相は26日の連
  立与党の会合で、ユーロ圏諸国が共同で発行するユーロ共同
  債構想について、「(自分が)生きている限り」はあり得な
  いとして、強く否定した。複数の独メディアが報じた。
  ―――――――――――――――――――――――――――

メルケル首相とユーロ共同債.jpg
メルケル首相とユーロ共同債
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州危機 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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