2012年06月28日

●「EU統合深化に向けた長期展望」(EJ第3332号)

 本日、6月28日〜29日の2日間にわたってEU首脳会議が
開催されます。EUは26日に今後10年の長期展望を示した報
告書を公表していますが、それに基づいて「銀行同盟」や「ユー
ロ共同債」の導入時期などが話し合われると思われます。目的は
「EUの統合深化」であり、その柱は次の4つです。
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     ≪EUの統合深化の長期展望の柱≫
     1.金融行政の統合
     2.予算の統合
     3.経済政策の枠組みの統一
     4.民主的な正当性、説明責任の明確化
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 このなかでとくに注目すべきは、「金融行政の統合」と「予算
の統合」の2つです。これら2つについて考えます。
 まず、「金融行政の統合」です。
 「金融行政の統合」は、EU全域の銀行経営をEU当局が監視
し、預金保護や銀行救済の仕組みを統一しようというものです。
7月にはESM(欧州安定メカニズム)が発足しますが、当面は
EFSF(欧州金融安定ファシリティー)と共同で、ユーロ圏内
各国の金融・財政危機に対応する救済資金の提供などを行うこと
になっています。
 どうしたいのかというと、EU当局がEU内の全銀行を常時監
視し、銀行危機のさいは遅滞なく、救済資金の直接投入ができる
ようにするというのです。現在の仕組みでは、スペインに対して
行ったように、救済資金を国に融資するかたちしかとれないので
す。これでは、その国の政府債務がかさみ、別の危機を生み出す
恐れがあるからです。これについては、既に述べています。
 続いて、「予算の統合」です。
 問題なのは「予算の統合」の方です。もちろん予算は各国で組
むのですが、他のユーロ加盟国でそれをチェックできる権限を持
つということです。マーストリヒト条約で決まったEUの財政規
律を超える予算を組むときは、ユーロ加盟国の承認が必要になる
というわけです。これでは、国は独立して予算を組めなくなり、
国の自由度はなくなってしまうことになります。こんなことが果
たして実現可能なのでしょうか。たとえ10年かけても実現でき
るかどうか疑問です。
 これに関連して「ユーロ共同債」発行の提案があります。現在
ユーロ加盟国は金融政策をECBに一本化していますが、国債は
自国の判断で発行することができます。それを縛っているのが、
EUの財政規律です。しかし、それを守らない、いや守れない国
があるのも事実です。
 ユーロ共同債は、ユーロ各国が個別に発行している国債を統一
しようというのです。そうなると、各国は金融政策に加えて、国
債を発行するという財政政策の両方を失うことを意味します。こ
れではもはや国として独立性は何もないことになります。
 ユーロ共同債の管理は、ユーロ圏各国の財務相で構成される機
関が行うことになり、それはECBと対極をなす財政政策を担当
する機関になるはずです。
 これは、国際通貨基金(IMF)がユーロ圏に出していた注文
と酷似しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
         ≪主要課題≫
          1.銀行同盟
          2.財政統合
          3.構造改革
         ≪すぐに取り組むべき課題≫
          1.  金融緩和
          2.  財政再建
          3.銀行資本注入
―――――――――――――――――――――――――――――
 「主要課題」として掲げられていることは、EUが長期展望と
して出した内容と同じです。ここで注目すべきは「すぐに取り組
むべき課題」です。
 IMFが求めているのは「金融緩和」です。金融緩和には2つ
のやり方があります。一つは、ECBによる国債買い入れや銀行
に対する長期の低金利融資です。実際には、ECBによる国債買
い入れについては既に相当量が行われています。
 もう一つは、EFSFやESMの資金で、加盟国の国債を買い
入れることです。EFSFやESMにはそれを可能にする規定が
ありますが、今までに使われたことはないのですが、それをやれ
ば、即効性があります。
 続いてIMFが求めているのは「財政再建」です。景気変動に
関係なく構造的に生まれてくる財政赤字を削減することです。し
かし、構造改革はユーロ各国がそれぞれ取り組むべき課題であり
しかも時間がかかります。各国には温度差があり、その取り組み
はばらばらにならざるを得ないのです。
 最後にIMFが求めているのは「銀行資本注入」ですが、これ
については既に述べています。EFSFやESMからの銀行への
直接注入を可能にすべきですが、この前提として「銀行同盟」が
不可欠になります。これには時間がかかると思います。
 しかし、マーストリヒト条約に盛られている緊縮財政一方槍の
やり方ではいずれデフレに突入することは必至です。EU委員会
はGDPに占める財政赤字の割合が2013年には8.4 %にな
ると予測しています。2012年の7.3 %からさらなる悪化で
す。一向に改善していないのです。
 緊縮策で年金や給与がカットされているので、消費が抑えられ
景気が悪化しているからです。そこでフランスを中心に経済成長
に力を入れようとしていますが、そこに立ちはだかるのはドイツ
の経済財政の考え方です。  ―── [欧州危機と日本/61]


≪画像および関連情報≫
 ●EUが欧州統合強化案を発表/WSJ
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  【ブリュッセル】欧州連合(EU)は26日、ユーロ圏の統
  合強化に向けた銀行監督や各国の予算承認手続きなどを含ん
  だ提案を発表した。28、29日に開くEU首脳会合での議
  論の焦点となる。7ページにわたるこの提案書は、政府債務
  の増大と銀行の経営弱体化が同時に進行し通貨ユーロの存続
  を脅かしている現在の危機が再発しないよう、ユーロ圏17
  ヶ国の統合をより緊密にするための諸策を盛り込んでいる。
  その中には多くの加盟国政府がこれまで消極的な姿勢を見せ
  ているユーロ共通債の発行や、各国の予算案に対する実質的
  な拒否権を導入することなどが含まれている。首脳会合で加
  盟27ヶ国、少なくともユーロ圏の全首脳が提案事項を基本
  的に了承すれば、その後提案を具体的に詰める長く困難な道
  のりが予想される。今回の提案は、EU地域の現在の危機に
  対する処方箋としてではなく、今後10年にわたって施行さ
  れていくものと位置づけられている。このため、欧州の各基
  金を使って銀行救済を進める一方で政府支出の削減と労働・
  製品市場を改革するという現在の危機対策が大きく変更され
  るわけではない。ただ、今やスペインとイタリアという域内
  の経済大国にまで危機が波及しそうな様相となっており、両
  国の債務に対応するだけの資金がこれらの基金だけ十分かと
  の懸念が出ている。
        http://jp.wsj.com/World/Europe/node_467860
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ファンロンパイEU大統領.jpg
ファンロンパイEU大統領
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州危機 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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