2012年06月20日

●「ユーロ・システムに潜む構造的欠陥」(EJ第3326号)

 ユーロのことを「壮大な社会実験」という人がいます。数次に
わたる条約の改正を通して入念に計画され、実際にスネークやE
MS(ERM)などの制度導入の経験を経て、1999年1月の
単一通貨ユーロ導入にいたっているのです。
 EU内で資本移動の自由化をしたのは、1990年代の初頭の
ことです。したがって、ユーロを導入することで、ユーロ圏各国
は為替の変動を排除したことになります。この時点でユーロ圏各
国は、国際金融のトリレンマによって、金融政策を放棄せざるを
得なくなったのです。
 そしてECBが、ユーロ圏全体の金融政策を一元的に管理する
ことになったのですが、17ヶ国もあるのですから、どうしても
お仕着せの金融政策にならざるを得ないのです。ユーロ圏各国は
自国経済がどんなに不況になっても、インフレになっても、そう
いうお仕着せの金融政策を受け入れざるを得ないのです。
 そういう反面、ユーロ圏各国には為替リスクがないため、貿易
・サービス取引において資源の再配分が可能になり、相互に経済
を拡大させることが可能になっています。
 しかし、当然のことですが、為替変動リスクがないのはユーロ
圏内だけであり、ユーロ圏外の、たとえば日本や米国などとの貿
易・サービス取引においては、為替変動リスクを排除できないの
です。したがって、ユーロ圏各国は仮に日本や米国との間にどれ
ほどひどい経常収支の不均衡が生じたとしても、本来為替市場の
変動が持っている調整メカニズムを利用することができないとい
うことになります。
 もうひとつユーロには構造的な問題もあります。ユーロ圏では
「失業率」と「長期金利」の二極化が起きているのです。たとえ
ば、いわゆる南欧諸国のPIIGS、とくにスペインでは失業率
がピークに達し、とくに若者の2人に1人は職がない深刻な状態
にあります。
 また、スペインでは銀行の不良債権の増加による金融危機が深
刻化し、長期金利が上昇しつつありますが、これによってユーロ
の為替レートが下落しています。そのため、スペインはEFSF
から、10兆円規模の支援を受け入れることになったのですが、
ユーロの為替レートが下がったことで、ドイツの失業率が改善し
輸出が好調になってしまうということが起きているのです。同じ
共通通貨を使っているにもかかわらず、雇用環境という重要指数
では真逆の二極化が進んでいるのです。
 ECBによる金利政策でも同じことが起きているのです。たと
えば、ドイツのインフレ率が上がると、ECBは間違いなく利上
げに踏み切るはずです。ドイツはユーロ圏の中心国であり、EC
Bもドイツやフランスの経済の状況に重点を置いて金融政策を決
めるので、どうしてもそうなってしまうのです。
 しかし、ECBが利上げをすると、南欧諸国の危機に油を注ぐ
ことになってしまうのです。こちらを立てればあちらが立たずと
いうわけです。つまり、金融政策のみを統合するという仕組みが
経済の歪みを拡大する構造になっているのです。
 これについて、三橋貴明氏は、ユーロのこの構造的問題につい
て、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 結局のところ、ユーロは1992年以降の「グローバリズム」
 あるいはそれ以前の「地球市民的」な発想により国境線を薄め
 た結果、行き詰ってしまったわけだ。しかも、国境線を薄くし
 たはいいが、各国のナショナリズム(注:国民意識)を取り去
 ることはできなかった。結果、現在のユーロ圏の各国民は、経
 済ナショナリズムに基づき「国民のための政策」を政府に求め
 ているのである。本来であれば、ユーロ加盟国は国境線を薄め
 ると同時に、財政を中心とした政治統合を実現し、「ユーロ国
 民としての経済ナショナリズム」を醸成しなければならなかっ
 た。無論、方向性としてはそちらの方向を目指しており、現在
 も一応、そちらの方向に持って行こうとしているが、もはや手
 遅れだろう。               ──三橋貴明著
   『欧州危機と日本そして世界/ユーロ崩壊!』/彩図社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、金融政策は与えられなくてもユーロ圏諸国の中央銀行
には財政政策が与えられているのです。それは景気調整手段とし
て残しているのです。
 そうかといって、もしユーロ圏各国がばらばらの財政政策を取
ると、どうなるでしょうか。
 一番困るのは、ECBの政策との整合性がとれらくなることで
す。そのためEUは「安定成長協定」という財政規律を設けるこ
とにしているのです。マーストリヒト条約では、ユーロ導入を希
望する国に対して、次の4つの経済収斂基準の達成を求めている
のです。
―――――――――――――――――――――――――――――
          1.  物価の安定
          2.長期金利の安定
          3.為替相場の安定
          4.   健全財政
―――――――――――――――――――――――――――――
 3の「為替相場の安定」というのは、ユーロ導入前の2年間に
わたって、EMS(ERM)に加盟する義務があり、そのさいの
結果の実績を求めているのです。
 これら4項目のうち、加盟国が最も苦労したのは4つ目の「健
全財政」だったのです。その内容は次の2つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.財政赤字がGDP比3%以下である
     2.政府債務残高60%以下であること
―――――――――――――――――――――――――――――
              ―── [欧州危機と日本/55]


≪画像および関連情報≫
 ●EU財政規律強化協定/2012.3.3/ロイター
  ―――――――――――――――――――――――――――
  同協定は、債務危機を招いた財政規律の緩み防止を目的にド
  イツが中心となって推進。均衡財政実現に向け、憲法もしく
  は同等の法律による規律明文化を各国に義務付けるとともに
  規律に違反した場合、自動的に是正措置が発動される制度導
  入も求める。各国の合意取りまとめで中心的役割を果たした
  ファンロンパイEU大統領は調印式での演説で「債務および
  赤字に関する今回の自己規律強化はそれ自体重要であり、ソ
  ブリン債務危機の再来防止に役立つことになる」と語った。
  財政協定はユーロ圏加盟締結国にのみ法的拘束力が発揮され
  他のEU諸国に関しては基本としてユーロを導入した時点で
  適用される。またユーロ加盟17カ国のうち、12カ国が批
  准した時点で発効し、法的拘束力を伴う。ただ、財政協定を
  めぐっては今後克服すべき課題が残っている。EU、国際通
  貨基金(IMF)からの支援を受けているアイルランドは、
  6月にも批准の是非を問う国民投票を実施する。メルケル独
  首相は記者団に対し、新財政協定と常設の金融安全網である
  欧州安定メカニズム(ESM)は「密接に関連している」と
  発言。「新財政協定を順守する国だけがESMの支援を受け
  ることが可能だ」との考えを示した。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE82100920120302
  ―――――――――――――――――――――――――――

ユーロの光の彫刻/ECB.jpg
ユーロの光の彫刻/ECB
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 欧州危機 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
北九州市と同じく瓦礫受け入れを表明して試験焼却した桐生市の市議会議員西牧秀憲氏のブログコメント欄に次のコメントを書き込みました。

>>http://hidenori1212.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-135c.html
転載開始>

斧、振り回しそうな市議会か、スプラッターですね。
でも、今回の「つるし上げ議会」で桐生市議会が地方議会のワーストランキングに
入ったのは事実だと思います。東北から避難して来たお母さんたちが「がれき受け入れ」に
反対したら「へんな人たちが反対運動してる」って暴言はいた北九州市も最低だと思ったけど
桐生市議会も負けてないと思います。私も議会を買いかぶってました。

投稿: | 2012年6月20日 (水) 23時30分

北九州市に秀ちゃんはいません。北九州市のほうが桐生市より格段にひどいです。月とすっぽんです。

投稿: 通りがけ | 2012年6月20日 (水) 23時54分

北九州市市長は試験焼却用瓦礫搬入の当日市長室にこもって市警に個人警備を要請しました。警察は個人警備をしてはならない組織ですが北九州市市警署長は警察法に違反して市長室へ個人警備のための警官を派遣したのです。

市長と市警署長がともに憲法を知らない北九州市が日本いや世界最低の地方自治体であることはこの事実によって明々白々に証明されました。よって桐生市とは月とすっぽんです。

投稿: 通りがけ | 2012年6月21日 (木) 00時06分

<転載終わり
Posted by 東行系 at 2012年06月21日 00:49
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