2012年06月11日

●「スペイン遂にEUに支援要請」(EJ第3319号)

 6月10日、ユーロ圏第4位のスペインが遂にEUに支援を求
める事態にまでいたっています。スペインがこれまでなぜ支援を
求めなかったかというと、それは追加の厳しい財政緊縮策を課せ
られることを恐れたからです。
 現在スペインでは仕事に就けない若者で溢れ、スペインやギリ
シャでは2人に1人が失業中であり、もし支援受け入れの条件と
してさらなる緊縮財政を求められると、景気がもっと悪化するこ
とが必至の情勢です。欧州の若者(15〜24歳)の失業率は、
次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     EU27ヶ国平均  ・・・ 22.4 %
     ギリシャ ・・・・・・・・ 52.7 %
     スペイン ・・・・・・・・ 51.5 %
     イタリア ・・・・・・・・ 35.2 %
     フランス ・・・・・・・・ 22.0 %
     英国   ・・・・・・・・ 21.7 %
     ドイツ  ・・・・・・・・  7.9 %
              ──EU統計局データ
       2012年6月7日付、朝日新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 スペインが求めたのは、欧州金融安定化基金(EFSF)か7
月発足予定の欧州安定化メカニズム(ESM)からスペインの国
内銀行に直接資本注入をして欲しいというものだったのです。現
制度ではいったんスペイン政府に資金を融資し、その資金を国内
銀行に注入するということになりますが、この方法だと政府の財
政負担になるので、スペインは支援要請を渋ったのです。
 しかし、これにはドイツが反対し、その代り、スペイン政府の
一部である基金を通して「政府保証」をつけるが、追加の財政緊
縮策を求めないという配慮を示したのです。明らかにギリシャと
は違う対応ですが、そこにどういう事情があったのでしょうか。
 それは、スペインの場合は、放漫財政で危機を招いたギリシャ
とは事情が異なり、中道右派のラホイ政権による構造改革の取り
組みをドイツが評価しているからです。
 これはドイツの本音ではないと思います。救済しないと、スペ
インは財政破綻し、それが世界経済に与える影響はギリシャどこ
ろではないからです。追加の緊縮財政を求めないという決定はそ
ういう判断から行われているのです。
 スペインにはギリシャと同様に大きな問題があるのです。スペ
インはユーロに加盟して経済が好転し、企業が高い給与を保障し
たので、学校を辞めて建設業やサービス業に就く若者が増えたの
です。しかし、それは一時的なバブルに過ぎなかったのです。
 2008年にリーマンショックが起きると、あえなくバブルは
崩壊し、街には学歴も技術も持たない若者の失業者が溢れたので
す。その結果、仕事にも学業にも従事していない「ナイ・ナイ・
ジェネレーション」は激増し、現在では70万人に達するといわ
れています。社会学者のエンリケ・カレラス氏は、スペインの若
者について次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 (一時的なバブルによって)低学歴、未熟練でもそこそこの収
 入を得た体験から、努力や勉強を軽んずる風潮がある。
            ──社会学者のエンリケ・カレラス氏
            2012年6月7日付、朝日新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 今回の支援資金は最大1000億ユーロ(10兆円)ですが、
果たしてこれだけで足りるのかどうかが早くも懸念されているの
です。さらなる緊縮財政は求めないとしても今回の支援で景気が
良くなる可能性は低いと考えられます。
 スペインはフランコ独裁時代に共産主義の浸透やゼネストを防
ぐ目的で、労働者に有利な雇用制度が定着しており、それがネッ
クになって、企業は新規採用を控えているのです。
 2011年11月に政権交代をした中道右派のラホイ政権は、
解雇金の金額を引き下げたり、労使交渉のできるよう労働法を改
正したりしたのですが、うまくいっていないのです。少数の学歴
のある優秀な若者は海外に出ています。安心して家庭が築けない
ので、このままスペインが経済を立て直せないと、日本のように
少子化が起きる恐れがあります。いずれにしてもスペイン政府は
何とか経済を立て直し、公的な就業支援制度を充実させて、一刻
も早く若者の雇用を改善する必要があります。
 もう一方のギリシャは6月17日に再総選挙を迎えています。
選挙は7つの党で争われていますが、旧連立与党の新民主主義党
(ND)と反緊縮党の急進左派連合が競り合っています。それも
緊縮反対派が先行し、緊縮賛成派が猛烈に追い上げている展開で
す。6月1日の上位3党の支持率は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 新民主主義党(ND) ・・・・・・・ 22.5〜27.1
 急進左派連合 ・・・・・・・・・・・ 23.6〜31.5
 全ギリシャ社会主義連合(PASOK)  9.9〜13.5
         ──2012年6月3日付、日本経済新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在のところ緊縮派と反対派のどちらも過半数の獲得は無理で
あり、またしても連立政権になる可能性が高いのです。もし、緊
縮反対派が勝つと、ギリシャのユーロ離脱は現実のものになるだ
けに結果が注目されます。
 「ギリシャのユーロ加盟は欧州の負担になる」──こう述べて
ギリシャの加盟当時、ドイツのゲンシャー外相は反対しましたが
実際にそうなりつつあります。しかし、本当にギリシャが離脱す
るようなことになると、それはユーロの最大の危機になることは
確かであり、今日から10日までは、ユーロの今後を占う週にな
ると思います。 ―――――――── [欧州危機と日本/48]


≪画像および関連情報≫
 ●スペイン支援の背景/NHK・NEWSウェブ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  財政状況が厳しいスペイン政府は、巨額の不良債権を抱える
  国内の銀行を救済するための資金が必要だとして、EU=ヨ
  ーロッパ連合に対して金融支援を要請することを明らかにし
  ました。この背景には、信用不安の拡大に対するユーロ圏の
  国々の強い危機感があるとみられます。スペイン政府は、こ
  れまで不良債権を抱える銀行が必要とする資本増強の規模に
  ついての監査機関による報告が今月下旬までに出るのを待っ
  て支援を要請するかどうかを明らかにするとしてきました。
  ユーロ圏の国々も当初はスペインが正式に支援要請をしたあ
  とに検討するとしてきましたが、9日に財務相による緊急の
  電話会議を開いてスペインに対する支援について協議を行い
  ました。今回のスペイン政府による支援要請の発表は、この
  電話会議の直後だったことなどから、ユーロ圏の国々がいわ
  ばスペインの背中を押すような形で支援要請の方針を発表す
  るよう促したとみられます。ユーロ圏では、今月17日にギ
  リシャの議会選挙の再選挙が予定され、ユーロ圏からのギリ
  シャの離脱の可能性も指摘されるなど不透明感が広がってい
  ます。これに加えてユーロ圏で4番目に大きい経済規模を持
  つスペインへの対応が遅れれば、市場の不安感をさらに増幅
  するというおそれもあるため、ユーロ圏各国ではこうした強
  い危機感を背景に信用不安の払拭へ向けた対策を加速させた
  ものとみられます。
  http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120610/k10015725921000.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

急増するスペインの失業率.jpg
急増するスペインの失業率
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州危機 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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