2012年05月28日

●「ユーロ圏共同債は実現するのか」(EJ第3309号)

 欧州危機が一段と深刻化しつつあります。米シテイグループは
5月23日付のりポートで次の予測を出しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ギリシャは2013年1月1日にユーロ圏から離脱する可能
 性は50〜75%ある。        ──米シテイ予測
―――――――――――――――――――――――――――――
 22日にはギリシャ・パパデモス前首相が米紙のインタビュー
に答えて、「ギリシャはユーロにとどまる必要はあると思うが、
離脱の可能性を排除し切れない」と述べたことで、市場には一層
の緊張感が高まったのです。
 それに加えて、5月23日、ベルギーのブリュッセルで行われ
たEU首脳会議では、今後のEUの戦略を巡って、フランスのオ
ランド新大統領とドイツのメルケル首相の意見が対立する場面が
目立ったのです。なかでも、最も対立したのは、「ユーロ圏共同
債」の導入を巡ってです。これに関してはドイツは絶対に反対の
立場なのです。
 「ユーロ圏共同債」とは何でしょうか。
 ユーロ圏のなかで一番経済が堅実であるのはドイツです。ドイ
ツ国債とPIIGS諸国のそれの金利差は5〜6%、イタリア債
やスペイン債は7%近くに達することもあり、そこには大きな差
が生まれています。これに対してドイツはほぼ2%前後に収まっ
ており、これらの金利差は域内の国々に対する市場の信頼度をス
トレートに反映しています。このようにユーロ圏ではドイツが突
出しているのです。
 ユーロ圏共同債というのは、ユーロ圏各国が共通の国債を出し
同じ金利で資金を調達できるようにしようという構想です。欧州
委員会委員長のマヌエル・バローゾ氏はこの構想の推進者として
知られています。バローゾ委員長は元ポルトガル首相であり、域
内の小規模加盟国の利益を重視しています。
 しかし、これはドイツにとって不利な話です。ドイツが単独で
国債を発行するよりも金利負担は増すことになり、条件は不利に
なります。メルケル首相はもとより、ドイツ国内ではこの構想に
絶対反対の雰囲気があります。
 EU首脳会議で、ユーロ圏共同債を提案したオランド仏大統領
に対し、メルケル首相は次のように反論しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ユーロ圏共同債は、経済政策の統合が前提で、EU条約上
  も困難であり、成長の促進とは無関係だ。それに金利を同
  じにしたら、改革努力が鈍り欧州の競争力が向上しない。
                   ──メルケル独首相
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在のユーロ圏の諸国では、ドイツの信用によって財政運営が
行われているようなところがあります。もちろんドイツにとって
も多大のメリットがあるのですが、PIIGSだけでなく、フラ
ンスを含む他の国もドイツの信用力に頼っているのです。
 ギリシャを例にとります。ギリシャは2001年にユーロに加
盟しましたが、これによってギリシャ国債の利回りはドイツ国債
のそれに向かって急降下したのです。これを受けて世界の投資家
は一斉にギリシャ国債を買いに出たのです。
 どうして投資家はギリシャ国債を買いに出たのでしょうか。
 それには2つの理由があります。1つは、発行通貨がドラクマ
からユーロに切り替わったことです。ドラクマとユーロでは信用
度がまるで違うのです。2つは、仮にギリシャが債務の返済が困
難になってもEUから支援が行われると判断したことです。
 しかし、ギリシャは求められた緊縮財政に取り組んで構造改革
を熱心に行わなかったので、そのため財政は破綻をきたし、危機
を起こしてしまったのです。
 はっきりいって、オランド大統領とメルケル首相の政策は「水
と油」です。メルケル首相は構造改革を重視しているのに対し、
オランド氏は次のような構造改革に逆行する政策を掲げて大統領
に当選しているからです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪オランド氏の公約の一部≫
 1.今後5年間の歳出を見直し、500億ユーロに拡大させる
 2.公的補助金により、今後5年間で15万人の若年層を雇用
 3.公的年金の受給開始年齢を62歳から60歳に引き下げる
―――――――――――――――――――――――――――――
 選挙時点の公約とはいえ、明らかに構造改革に逆行する政策で
あり、市場の信任は得にくいと考えられます。とくに公的年金の
受給開始年齢を下げる公約については、人気取りの政策といわれ
ても仕方がないでしょう。
 ユーロ圏共同債について、同志社大学大学院教授の浜矩子氏は
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ユーロ圏共同債、あるいは欧州共同債構想というのは、この間
 出ては消え、消えては出てきた考え方なのである。厳しい環境
 の中で、ユーロ圏の財政事情を安定させるためには、これしか
 道はない。この主張は、それなりの支持を集めて来た経緯があ
 る。EFSF構想は、ある意味で共同債に向けての布石だった
 といえるだろう。(中略)反対を表明するメルケル首相の語気
 の荒さ、表情の厳しさには、誠に格別のものがあった。鬼気迫
 る雰囲気が出ていた。     ──浜矩子著/朝日新聞出版
      「EUメルトダウン/欧州発 世界がなくなる日」
―――――――――――――――――――――――――――――
 ユーロ圏共同債の構想は、金融政策の統合に加えて財政統合を
進めることを意味します。ドイツの頑強な反対のなかで果たして
実現するのかは不透明です。共同債を巡るEU各国の対立によっ
て金融市場には失望感が広がっています。ユーロに対する円相場
は一時100円を切ったのです。── [欧州危機と日本/38]


≪画像および関連情報≫
 ●「ユーロ圏共同債は大虐殺への罪滅ぼし」/元独連銀理事
  ―――――――――――――――――――――――――――
  元ドイツ連邦銀行理事が、フランスのオランド大統領が導入
  を主張しているユーロ圏共同債(ユーロボンド)を、第2次
  大戦とホロコースト(ユダヤ人大虐殺)をドイツに償わせよ
  うとする構想だとして批判し、ドイツ国内で議論を呼んでい
  る。2010年に独連銀理事を辞任したザラツィン氏が5月
  22日に出版した著書「欧州はユーロを必要としない」で、
  「ドイツでユーロボンドに賛成する人間は、我々の金をすべ
  て欧州の手に渡したときに初めてホロコーストと世界大戦へ
  の罪滅ぼしがなされたと考える、非常にドイツ的な反応に駆
  られている」と書いた。戦争責任と経済危機対応を結びつけ
  る荒唐無稽な議論への批判が多いが、ドイツの信用を主な支
  えにユーロ圏全体が借金をするユーロボンド構想に対して、
  他国を救済するためにドイツばかりが負担を強いられている
  という感情的な不満が広がっていることを反映しているとも
  言えそうだ。           ──朝日新聞デジタル
  ―――――――――――――――――――――――――――

オランド大統領/メルケル首相.jpg
オランド大統領/メルケル首相
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 欧州危機 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「地位協定即時破棄と海外派遣自衛隊即時撤退帰国で世界平和を作る日本人」

吉田茂が日本政府代表として単独署名した日米安保条約。

岸信介が吉田の過ちを正して日米安保条約と日米地位協定に公式に分離してくれた。

佐藤栄作が沖縄返還と非核三原則を打ち立ててくれた。

田中角栄が日中平和友好条約締結の井戸を掘ってくれた。

残るは日米地位協定破棄だけである。

日米地位協定を破棄すれば在日米軍は日本国領土領空領水の治外法権通行権使用権を失い、思いやり予算の要求根拠を失い(日本国民じゃないからね)、基地機能拡大基地施設拡張要求を通す根拠を失い、その他日本へ内政干渉する法的根拠をすべて失うので、米軍を維持するためには全軍米本土へ帰らなければならなくなる。

在日米軍が米国本土へ撤退すれば日ロ友好平和条約が締結できて北方4島が一括有償返還交渉の途につくであろう。

日ロ平和条約締結をもって極東地域全体が平和安定し、欧米ユダ金戦争狂悪魔の対アジア植民地拡大奴隷牧場化戦略を断固粉砕できるのである。

すなわちアジアの平和安定こそがユダ金戦争悪魔を封じ込め世界平和を作る。

ゆえに、地位協定即時破棄と海外派遣自衛隊の即時武装解除全軍帰国が今最も日本国に必要な政策である。
Posted by 東行系 at 2012年05月28日 14:02
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