2012年05月16日

●「ネイキッド・CDSとは何か」(EJ第3301号)

 「裸のCDS」というものがあります。これについて理解して
おく必要があります。家を購入したら、それが焼失してしまう危
険に備えて、誰でも火災保険に入り、保険料を支払って大損を避
けようとする──人間として合理的な行動です。
 保有している、ある企業が発行する社債について、その企業が
倒産するリスクに備えて、社債の額面の数%の保険料を支払って
保険をかけるのも合理的な行動であるといえます。
 このことは、ある国の国債に保険をかける場合も同じことがい
えます。CDS──クレジット・デフォルト・スワップはそうい
う保険の一種であると考えている人は多いと思います。しかし、
米英法によると、こうした「社債保険」や「国債保険」などは保
険契約ではなく、保険法の規制を受けないのです。
 保障されているのは「証券」であるからという理屈で、証券法
で規制されているのです。米英法は、金融機関にとって、きわめ
て都合の良い法律になっているわけです。これによって、次のこ
とがいえるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     CDSは「証券」であって「保険」ではない
―――――――――――――――――――――――――――――
 火災保険を例にとります。火災保険はあくまで自分の家にかけ
るものですが、当然のことながら、他人の家に勝手に火災保険を
かけることはできないのです。しかし、証券ならそれも可能にな
るのです。
 他人の家に火災保険をかけ、実際に火事になったら保険金を受
け取る──これは博打(ばくち)です。それにそんなことを許す
と、保険をかけた家に火をつける誘惑に駆られる人も出てくる可
能性があります。したがって、火災保険はあくまで保険です。
 しかし、米国を含む多くの国では、社債や国債を一枚も持って
いなくてもその社債や国債に対するCDSをいくらでも市場で購
入できるのです。つまり、CDSとは、企業や国家がデフォルト
するリスクを対象にした一種の金融派生商品なのです。
 A社という企業が社債Xを発行したとします。このときある証
券会社が、次のような募集をしたとしましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、社債Xがデフォルトしたら、その元本を支払います。
 掛け金は〇〇〇です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 この募集にYが応じたとします。この場合、Yは社債を一枚も
持っていないのですが、それは可能なのです。これを「裸のCD
S」というのです。これは、社債Xをネタにした賭け事です。も
し、A社が倒産すると、Yは大儲けをすることになるからです。
CDSにはこういう面があることを知っておく必要があります。
 ヘッジファンドの雄といわれるジョージ・ソロス氏は、CDS
について次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 CDSは、他人に保険をかけ、その人間を殺すようなもので
 ある。             ──ジョージ・ソロス氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここでいう「裸のCDS」は、ジョージ・ソロス氏のいう通り
一種の保険金殺人のような側面があることは確かなのです。多く
の金融業者やヘッジファンドにとって裸のCDSは、格好のギャ
ンブル市場になっているのです。
 確たる情報があるわけではないのに、ある会社が危ないという
噂が拡がったとします。そういう情報に基づいて、ある有力ヘッ
ジファンドがその会社の社債のCDSを買ったとします。そうす
ると、その情報が情報を呼んで多くの金融機関やヘッジファンド
がその社債のCDSを買うようになっていきます。そのさまは、
あたかもハゲ鷹が腐肉にたかるようなものです。
 そうしているうちに「あの会社は危ない」という噂は大きくな
り、取引会社や下請け、資材供給会社などが警戒し、信用売りを
拒むなど、仕入れや取引に影響が出てきます。このようにして、
当該会社の業績は悪化し、評判はさらに落ち、市場で新CDSの
掛け金は3〜4%に上昇します。かくして、そういう「人工的」
スパイラルに陥り、不合理にも本当に倒産してしまう企業は少な
くないのです。まさにソロス氏のいう通りのことが起こっている
というわけです。
 あのGMが倒産寸前になり、国が何とか救おうと乗り出したと
き、CDS保有の投資家はGMの救済に最後まで「イエス」とい
わなかったのです。彼らにとっては、GMが倒産した方が大儲け
できるからです。
 ギリシャに対しても同じようなことが行われたのです。朝倉慶
氏は、ギリシャについて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ギリシアはこんな投資家のターゲットとなって噂を広められ、
 挙句の果てに自国の国債価格は急落させられ、結果ギリシア国
 債の金利急騰、ついには、デフォルトの危機が叫ばれるように
 なったのですから怒りが収まりません。なぜ、ギリシアばかり
 を標的にしてそんな取引を国際的に展開するのか?なぜそれほ
 ど大きなニュースにして投資のターゲットとするのか?ほっと
 いてくれ!手を出すな!と言いたいところでしょう。
                 ──朝倉慶著/徳間書店刊
     『もうこれは世界大恐慌/超インフレ時代に備えよ』
―――――――――――――――――――――――――――――
 まず、CDS市場が上昇します。そして、国債価格の急落、金
利の急騰、国債市場からのマネーの流出、そして資金ショートに
いたるのです。この流れは、物凄い怒涛のような勢いで押し寄せ
てきます。こうなると、止められないのです。ギリシャ危機はま
だ収まったわけではないのです。この市場の暴走に対して、EU
は思い腰を上げます。     ── [欧州危機と日本/30]


≪画像および関連情報≫
 ●ジョージ・ソロスですら未来を知ることはできない
  ―――――――――――――――――――――――――――
  市場は本来不完全なものであり、政府など外部からの介入が
  なければ正常に機能しないものであるにもかかわらず、「市
  場原理主義者」は市場がそれ自体で完全だと考え、野放図な
  規制緩和を行なってきた。サブプライム問題に端を発する世
  界金融危機はその典型であり、FRB(米連邦準備理事会)
  の低金利政策で不動産投機が過熱し、信用の過度の膨張がバ
  ブルを誘発し、それを最先端の金融工学が加速させ、ハイリ
  スクな不動産担保証券を世界中にばら撒くことになった。こ
  の「超バブル」が崩壊したいま、市場原理主義の時代は終焉
  を迎えた――。
        http://www.tachibana-akira.com/2011/08/3070
  ―――――――――――――――――――――――――――

ジョージ・ソロス氏.jpg
ジョージ・ソロス氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州危機 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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