主としてスペインやイタリアに対するセーフティーネットを構築
することです。これら2国は、政府負債残高の規模が大きく、数
兆円で済む話ではないので、EUとしては、多額の資金を用意し
ておく必要があるのです。
しかし、EFSFの資金は既にギリシャなどの救済に使われて
いるので、資金を拡充する必要があります。その資金拡充の合意
については、ユーロ加盟17ヶ国で協議し、難産のすえ既に合意
がとれているのです。
さて、集める1兆ユーロのうち、EFSFの資金は20%であ
り、これをテコにして5倍のレバレッチをかけ、残りの80%を
集めようというのです。そのためにデリバティブを活用すること
にしたのです。
まず、証券化について知る必要があります。EJ第2399号
〜第2400号をベースにして説明します。住宅ローンを証券化
する手法について考えましょう。証券会社は、証券化するための
原材料に当たる多数の住宅ローンを買い集めます。そのうえで住
宅ローンをファンド化して、証券に加工するのです。このように
して加工された証券は「資産担保証券」――MBS(モーゲージ
・バックト・セキュリティ)に組成されるのです。
サブプライム問題に例をとります。住宅ローンが100憶ドル
あったとして過去の実績からそのうち2億ドルぐらいが焦げ付く
可能性があるとします。この損失が最大で20憶ドルまで拡大す
る可能性が0.1 %あったとします。
この場合、100憶ドルの住宅ローンのうち、80憶ドルに対
してAAAの格付けの証券として発行が可能になります。この部
分を「シニア」というのです。
残る20憶ドルの部分ですが、このうち実際に焦げ付く可能性
が高いのは2億ドルだけです。そうすると、残りの18憶ドルは
50〜99.9 %で元本は償還される可能性が高いのです。そこ
で、この部分を「メザニン」と呼ぶのです。これは「中2階」と
いう意味です。
最後の2億ドルは、最もリスクが高いクラスなので、当然ハイ
リスク・ハイリターンを求めることになります。こういうところ
に投資する投資家もいるのです。この部分を「エクイティ」と呼
ぶのです。
証券化のプロセスを川の水を飲み水に変えるプロセスに例えて
説明すると、次のようになります。
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川の水を飲み水に変えていくプロセスを証券化になぞらえると
浄水場が証券化の機関となる。ここで一定に沈殿やフィルター
を通すことにより、飲料用として適した上水(優先部分)とそ
うでない下水(劣後部分)に分け、さらに下水を同様の浄化過
程により水道水(ストパーシニア)、工業用水(メザニン)、
下水(エクイティー)に分解して再利用するのがCDOだと言
えば、かなり具体的なイメージがわくと思うが、いかがであろ
う。再利用した水道水もきちんと処理されていれば飲料用とし
て問題ないだろう。しかし、サブプライムローンで問題になっ
たのは、その浄化プロセスがサブプライムの属性に適して修正
されていたのか、ということである。――倉橋透・小林正宏著
『サブプライム問題の正しい考え方』/中公新書/1941
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説明のなかにあるCDOというのは、MBSをさらに証券化し
たものをいうのです。売れ残ったシニアやメザニンを集めて、再
度リパッケージして、優先劣後構造に組み替えたものをいうので
す。上記をまとめると、次のようになります。
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1. シニア ・・・ 優先部分 ・・・ 水道水
2. メザニン ・・・ 中間部分 ・・・ 工業水
3.エクイティ ・・・ 劣後部分 ・・・ 下 水
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「優先劣後構造」とは、証券化の仕組みの中で、対象資産から
の回収(返済)順位を優先部分と劣後部分に切り分け、優先部分
はリスクが低いので低い利回りを設定し、劣後部分はリスクが高
いので高い利回りを設定することです。リスク回避を重視する投
資家は優先部分に、リターンを重視する投資家は劣後部分に投資
することとなります。
EFSFはCDOの一種であり、優先劣後構造を持っているの
です。これについて、経済アナリストの朝倉慶氏は、自著でEF
SFについて次のように述べています。
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わかりやすいように1兆ユーロを大雑把に日本円にして総額約
100兆円として、話を進めましょう。特別目的会社の基金は
100兆円、そのうち80兆円は、世界中の投資家から集め、
EFSFの予定している20兆円と足して100兆円となりま
す。もし、仮にこの資金の投資先であるイタリアやスペインの
デフォルトないしは国債価格の下落が起こって特別目的会社の
投資した資金の全額回収が難しくなれば、まず、EFSFの出
した20兆円は一番先に損金の処理に充てられることになりま
す。簡単に言えば損失が出た場合は、まずはEFSFが優先し
て支払うという契約なのです。 ──朝倉慶著/徳間書店刊
『もうこれは世界大恐慌/超インフレ時代に備えよ』
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EFSFの資金は主としてスペインやイタリアに投資されます
が、もしその投資先がデフォルトしてしまうと、最初の20兆円
はEFSFが支払いますが、20兆円以上の損失が発生すると、
丸損になってしまいます。このように損失が出た場合、それをカ
バーする優先順位があらかじめ決められているのです。これが優
先劣後構造です。 ── [欧州危機と日本/26]
≪画像および関連情報≫
●全く吟味もせずにEFSFに投資する日本政府/朝倉慶氏
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ギリシア国債は、現在100の物が30台での取引です。実
質7剖の暴落です。EFSFは今回レバレッジを5倍にして
いますので、その投資した商品が2割棄損すれば投資金額す
べてを失うのです。ギリシア国債は現在7割も暴落している
のです。2割の下落なんて相場では日常茶飯事です。この程
度の下げですべてを失うという極めて危険な投機性の高い投
資なのです。このような投資を、欧州17ヶ国の保証の下で
行うというのです。これほど危険な投資を行うのがEFSF
なのです。それを全く吟味もせずにEFSFに投資すること
を約束した日本政府は何を考えているのでしょうか?金融の
プロは一人もいないのでしょうか?日銀も財務省も含めてど
んな頭脳構造なのでしょうか? ──朝倉慶著/徳間書店刊
『もうこれは世界大恐慌/超インフレ時代に備えよ』
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SPCを活用したEFSF拡充イメージ


