2006年11月07日

フリーメーソン結社への女性の入会(EJ1956号)

 『魔笛』において、タミーノとパミーナの火と水の試練を見て
いると、フリーメーソンには女性も入会が認められることがわか
ります。火と水の試練をクリアしたタミーノとパミーナは最終的
に聖職者の衣装を着てあらわれるからです。
 モーツァルトの女性観をあらわすオペラに、『コシ・ファン・
トゥッテ』というのがあります。このオペラは次のような内容を
持つ作品です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪第一幕≫
  中世のナポリ。フェランドとグリエルモは軍人で友人同士。
 またドラベッラとフィオルデリジは姉妹。それぞれフェランド
 はドラベッラと、グリエルモとフィオルデリジは婚約者同士で
 ある。二人の男性は共通の友人である老哲学者ドン・アルフォ
 ンソと女性の貞節について賭をする。
  軍隊の出征を告げる太鼓。二人は偽って戦地に向かうことに
 なる。フェランドとグリエルモは賭で約束したとおり、変装し
 て互いの相手の婚約者の前にあらわれアタックする。女 中の
 デスピーナもドン・アルフオンソに買収され、彼に協力する。
 ≪第二幕≫
  はじめは固く拒否していた姉妹も次第にこころを動かしはじ
 める。デスピーナもこれに拍車をかけるようにけしかける。ま
 ずはフィオルデリジが陥落して、ついでドラベッラも相手を受
 け入れる。新しい恋人同士の結婚式が始まろうとする。
  そのとき太鼓が鳴って、軍隊が出征から帰ってくる。二人の
 男性は変装からもとの軍人にもどる。青ざめる姉妹。真相があ
 かされる。四人はもとのさやにおさまって、めでたしめでたし
 となる?
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/3174/cosi.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 要するに、このオペラは女性が偽りの愛の誘惑に負けるかどう
かという賭けがテーマなのです。しかも本当の恋人同士が入れ替
わるという仕組みになっていて、観客は二重の意味でモラルに反
した禁断のゲームを味あうことになります。
 それに、このオペラの題名は「女は皆こうしたもの」という意
味であり、そこには女性に対する軽蔑感が感じられます。モーツ
ァルト自身がそういう考え方であったかどうかはわかりませんが
18世紀の欧州社会全体が、表面的には女性に対して親切な態度
を装いながら、その奥底にそういう軽蔑感を包み隠していたこと
は間違いないと考えられるのです。
 カトリック教会をみればわかるように、いかなる宗教団体もそ
の初期の段階においては、多かれ少なかれ男性支配、少なくとも
男女分離の世界であったのです。すなわち、女性が入信式ないし
それに類するものに近づくことを絶対に排除したのです。
 カトリック教会においては、現在でも一部の例外として下位の
地位に就くことはあるものの、女性が聖職に就くことは基本的に
抑制されているのです。その点については、自由、平等、友愛を
掲げるフリーメーソン結社も例外ではないのです。
 フリーメーソン結社には、アンダーソン憲章というものがあり
ます。これはジェイムズ・アンダーソン(1680〜1739)
が起草し、1723年にロンドンで公表されています。各ロッジ
は、これをベースにしてロッジの規約を作成したのです。
 この憲章は二部から成っており、第一部では「フリーメーソン
の歴史」、第2部は「フリーメーソンの責務」と題する6ヶ条が
定められています。その第2部の第3条に「入会規定」として、
次の趣旨のことが記述されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪入会規定/第3条≫
  健全なる肉体と精神を持つ、神を信じる名声ある男性である
  こと。奴隷、女性、品行が悪いかあるいは汚名を受けた人は
  資格がない。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ロッジの中には、この入会規定に疑問を抱き、女性の加入を認
めるところも出てきたのです。この場合、正規の男性ロッジとは
別に女性だけのロッジを作り、それを「養子ロッジ」とするかた
ちをとったのです。しかし、そのロッジは男性ロッジよりも一段
低い位置に置いたのです。
 そういう中にあって、「モプス結社」と名乗るロッジが登場し
てきます。この結社は、男性の役員が義務的に存在していたもの
の、女性に広く門戸を開いた結社で、慈善事業の実行を使命とし
て活動したのです。
 しかし、英国の大ロッジは「ロッジは完全に男性によって構成
されていなければならない」とし、「男女混合ロッジ」や入会規
定において女性の入会を認めているロッジとは、いかなる関係も
持ってはならない――こういう厳しい根本原則を掲げて反対した
のです。その結果、非正規のフリーメーソンロッジがたくさん生
まれることになります。
 さらに1784年になると、錬金術師といわれるカリオストロ
が「エジプトの儀礼」という名称で、男女両性から成るフリーメ
ーソン結社を設立し、自らは男性ロッジ「偉大なるコプト人」と
いう称号を名乗り、妻のロレンツァ・フェリチァーニには「シバ
の女王」という名称を与えて、女性ロッジの「偉大なる女親方」
の地位に昇進させたのです。
 この「エジプトの儀礼」は、あくまでも男性ロッジと女性ロッ
ジを同格に位置づけていますが、男性ロッジの位階の数を3から
7に増やして、結果として男性ロッジを高い位階を持つ上位のフ
リーメーソン結社に位置づけたのです。
 このカリオストロの儀礼の考え方を『魔笛』の台本作家は取り
入れているフシがあるのです。『魔笛』は、結社への女性の入会
に関して一つの道を拓いているのですが、これについては明日の
EJで述べます。      ・・・・  [モーツァルト34]


≪画像および関連情報≫
 ・モプス結社の「モプス」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「モプス」が何を意味するかはっきりとはわからないが、予
  言者「モプスス」ではないかと考えられる。ギリシャ神話の
  中にはこの名前を持つ予言者は2人いる。ヴィヴァルディは
  「モプスス」についてのカンタータを書いている。
  ―――――――――――――――――――――――――――
 ・歌劇『コシ・ファン・トゥッテ』から

1956号.jpg
posted by 平野 浩 at 06:50| Comment(0) | TrackBack(0) | モーツァルト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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