現職のサルゴジ氏が敗れ、オランド氏による政権交代が実現した
のです。このニュースは今後の欧州問題に大きなインパクトを与
えることは確実です。これについては、さらに情報を集めたうえ
で、改めて書く予定です。
ユーロという共通通貨のアイデアを出したのは、実はフランス
なのです。1990年にドイツの再統合が実現したときのことで
すが、当時のフランスのミッテラン大統領は、ドイツが欧州統合
に背を向けて独自の行動をとるのではないかと懸念したのです。
そこでドイツをEUの枠組みに縛り付けるために考え出したの
がユーロなのです。当時のドイツ首相だったコール氏はユーロに
乗ったのですが、多くのドイツ国民や経済の専門家は相当の危惧
を抱いていたのです。ドイツはEUの中心国ですが、何かという
といちばんユーロから撤退する恐れがあるのもドイツなのです。
したがって、オランド新大統領はドイツとうまくやれるかどうか
が注目されているのです。
浜矩子同志社大学教授は、EFSF──欧州金融安定ファシリ
ティーのことをSF──サイエンス・フィクションといって、そ
の不安定さを揶揄していますが、なぜ、EFSFがSFなのかに
ついて考えてみます。その謎解きをすると、欧州危機の本質が見
えてくると思います。
ユーロは既にエンドゲームに突入している──このようにいう
人がいます。「エンドゲーム」といっても「ゲームエンド」では
ないのです。エンドゲームとはオンラインゲームのことばで、こ
の種のゲームは、複数のステージを経て展開されていきます。
最初のステージは比較的スムーズに進むことができますが、第
2ステージ、第3ステージへと進むにつれて難しくなり、最後に
ファイナルステージに入るのです。これが終わるとゲームエンド
になるわけです。つまり、ユーロはもはや次のステージのないエ
ンドゲームに突入しているというのです。最初に問題を起こした
のはギリシャですが、EUは、ギリシャ危機に対して「欧州危機
を解決する包括戦略」として、次の3つのことを行っています。
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1.ギリシャ国債の50%債務カット
2.域内銀行への10兆円の資本投入
3.EFSFの仕組みによる資金拡充
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これによって世界市場としては、小国ギリシャの問題であり、
欧州危機はひとまず収まったと好感したのです。しかし、この包
括戦略を巡って関係国の間で議論が紛糾し、合意を得るのが容易
ではなかったのです。そのため、再び危機が起こったのです。
とくにEFSFの仕組みはきわめてずさんなものなのです。な
ぜなら、危機が拡大するにつれて集める資金の額が拡大し、最終
的には1兆ユーロを集めるというのですから、不安になるのは当
たり前です。
具体的には、2010年6月の包括合意のときは、2500億
ユーロであったものが、2011年7月の合意のときは4400
億ユーロになり、2011年10月には1兆ユーロということに
なったのです。
よくこのような包括戦略に堅実派のドイツが乗ったか不思議で
すが、それは逆にこの包括戦略にドイツがイニシアチブをとって
決めていないことをあらわしているといえます。フランス主導な
のです。しかし、他の国から見ると、あの堅実派のドイツが決め
ているのだから、大丈夫だろうと考える傾向があります。ドイツ
の存在によってユーロ圏の信用が保たれているのです。
EFSFは債券を発行し、資金を集めるのですが、その資金で
イタリアやスペインの国債を購入したり、ユーロ圏の銀行に資金
を貸し付けたりする業務は、EFSFの子会社のSPC──特別
目的会社が行うのです。
既に述べたように、EFSFの対象国はユーロ圏17ヶ国なの
です。それらの国々の保証が付いているとはいえ、危機の火種に
なっているPIIGSが入っての17ヶ国ですから、信用力がな
いので、どうしても金利は高くなってしまいます。そこでドイツ
やフランスなどトリプルAの6ヶ国で保証できる範囲でしか金利
の安い債券の発行ができないのです。
また、EFSFでは、欧州各国によって7800億ユーロ近い
金額が積まれていたのですが、それらの資金は、既にギリシャ、
アイルランド、ポルトガルの救済に使われており、約2000億
ユーロくらいしか、残っていないのです。そこで考え出したのが
「レバレッチ」なのです。レバレッチといえば、リーマンショッ
クのさい、使われた金融工学のデリバティブの手法です。
EFSFの手元資金約2000億ユーロをベースとして5倍の
レバレッチを掛けて残りの約8000億ユーロを集めようという
わけです。つまり、EFSF債は、デリバティブの手法を使った
複雑にしてリスキーな金曜商品なのです。
デリバティブ手法を駆使した金融商品といえば、リーマンショ
ックの原因になった「CDO」──債務担保証券というのがあり
ますが、EFSF債は基本的にはCDOと同じ仕組みの債券であ
るといえます。
CDOについては、2008年にEJで取り上げたテーマ「サ
ブプライム不況と日本経済」で詳しい説明があります。
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≪EJ第2399号≫/2008年8月28日
http://electronic-journal.seesaa.net/article/105544934.html
≪EJ第2340号≫/2008年8月29日
http://electronic-journal.seesaa.net/article/105659055.html
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CDOの仕組みについては、そのポイントについて明日のEJ
で説明します。 ── [欧州危機と日本/25]
≪画像および関連情報≫
●CDO(債務担保証券)とは何か
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債務担保証券は、証券化商品ないし広義の資産担保証券(A
BS)のうち、国や企業に対する貸付債権や公社債といった
大口金銭債権を裏付資産とするものである。裏付資産が公社
債のみで構成される場合はCBOと呼ばれ、同じく貸付債権
のみで構成される場合はCLOと呼ばれるが、いずれもCD
Oに含まれる。CDOは、証券化商品として、優先劣後構造
をを持っていることを特徴とする。優先劣後構造は、CDO
を構成するアセットにデフォルトやクレジットイベント等が
発生した際に元本が優先的に確保される順位を設定している
ものであり、シニアから順番に優先的に元本が確保される。
つまり劣後部分についてはかなりのリスク断崖リスクがある
ため、利回りも高い。シニア部分やメザニン部分には高格付
けが付与されることが一般的であり、機関投資家の投資対象
となっている。 ──ウィキペディア
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コール元ドイツ首相


