2012年05月01日

●「SFと自殺の欧州支援メカニズム」(EJ第3292号)

 欧州金融危機のさいのセーフティーネットとして用意されてい
るEFSFとEFSM──これらはユーロにおいて起こる、あら
ゆる事態を想定して作られたものとはとても思えないのです。
 まず、EFSFから考えてみます。EFSFとは、次の言葉の
略記です。
―――――――――――――――――――――――――――――
      EFSF/欧州金融安定ファシリティ
      European Financial Stability Facility
―――――――――――――――――――――――――――――
 EFSFの対象は、EUのうちのユーロ導入17ヶ国です。E
FSF債を発行して4400億ユーロ(約45兆円)の資金を調
達するのです。EFSF債にはユーロ圏各国政府の保証が付いて
いるので、主要格付け会社からトリプルAの格付けを獲得してい
ます。債券発行額の120%をユーロ圏各国で分担保証すること
になっています。主要国の保証比率は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
         ドイツ ・・・・ 27%
        フランス ・・・・ 20%
        イタリア ・・・・ 18%
        スペイン ・・・・ 12%
        その他国 ・・・・ 77%
―――――――――――――――――――――――――――――
 金融危機が起こったとき、対象国につなぎ融資をしたり、その
国の国債を購入したり、危ない金融機関に資本注入したりするの
です。しかし、高い保証割合を担う国の中にPIIGSのIであ
るイタリアとスペインが入っているのです。
 浜矩子氏は、このEFSFの後の2文字「SF」は、サイエン
ス・フィクションと読めるとして、次のようにEFSFについて
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 このやり方が全くSF的だと思うのである。なぜなら、保証責
 任を負えば、その分各国の財政負担は増えることになる。この
 仕組みには、ユーロ圏の全ての国々が参加している。つまり、
 当のPIIGS諸国も財政負担増にコミットしているわけであ
 る。さすがに、支援融資を受けている間は、保証責任の履行を
 求められることはない。したがって、目下、実際にEFSF融
 資の対象となっているポルトガルとアイルランド、そしてEF
 SFとは別枠ながら支援を受け入れているギリシャは実質的な
 負担を免れている。だが、枠組みには参加しているわけである
 から、支援対象からはずれれば財政負担が強まることになる。
                ──浜矩子著/朝日新聞出版
      「EUメルトダウン/欧州発 世界がなくなる日」
―――――――――――――――――――――――――――――
 要するにこの救済システムは現実離れしているというのです。
EFSFは、財政難に陥った国を救済するために、ユーロ圏全体
として大きな財政負担を負うシステムなのです。しかもその制度
は、2013年6月までの期限付きなのです。
 続いて、EFSMについて考えます。EFSMは、次の言葉の
略語なのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
      EFSM/欧州金融安定メカニズム
      European Financial Stabilisation Mechanism
―――――――――――――――――――――――――――――
 EFSMがEFSFと違うのは、EFSFの対象国がユーロ圏
17ヶ国に限られるのに対し、EFSMの対象国はEU27ヶ国
である点です。資金は、EFSFと同様に債券を発行して集め、
EUの政府予算で保証します。融資枠は600億ユーロ(約6兆
円)と少なく、主要国の保証割合は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
         ドイツ ・・・・ 20%
        フランス ・・・・ 18%
        イタリア ・・・・ 14%
        イギリス ・・・・ 11%(非ユーロ圏)
        スペイン ・・・・ 10%
        その他国 ・・・・ 73%
―――――――――――――――――――――――――――――
 EU27ヶ国が対象ですから、イギリスは非ユーロ圏ですが、
11%の負担を負っています。しかし、融資条件が極めて厳しく
条件をクリアするのは至難の業です。
 浜矩子氏は、EFSFと同じようにEFSMの後の2文字「S
M」は、スアサイド・モーション(自殺)であるとして、次のよ
うに述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 なぜ、そこに自殺行為性を見出すのか。この場合も、問題は資
 金調達方式にある。EFSMを所管しているのが、欧州委員会
 である。欧州委員会はEUの行政組織だ。日本でいえば、省庁
 に相当する。この欧州委貞会が差配して債券を発行し、民間金
 融機関などから資金供与を受ける。こうして調達した資金を、
 欧州委員会が救済を要する国々に再融資するわけだ。そして、
 資金受け入れ国が債務返済難に陥った時は、その返済をEU予
 算の中から肩代わりする。要は、EU予算による保証付きの融
 資だということである。    ──浜矩子著/朝日新聞出版
      「EUメルトダウン/欧州発 世界がなくなる日」
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在EU財政は厳しい状況、もっとストレートにいえば、火の
車なのです。このような状況で不確定性の多い財政の負担増を負
うのは大きなリスクであり、浜矩子氏はこれを「自殺行為」だと
いっているのです。しかし、現在の危機を乗り越えるにはもうひ
とつの仕組みが必要なのです。 ── [欧州危機と日本/21]


≪画像および関連情報≫
 ●単一通貨「円」窮地に/浜矩子氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ユーロ圏のドタバタ悲喜劇をみながらふと思うことがある。
  日本経済は、単一通貨圏である。その単一通貨は円である。
  日本経済は、いつまで円単一通貨圏であり続けられるだろう
  か。ある領域が単一通貨圏として安定的に存続できるために
  は、条件がある。二つの条件だ。そのうちのいずれか一つが
  満たされていなければ、その領域は単一通貨圏とは成り得な
  い。条件その一が経済実態の完全収斂(しゅうれん)。その
  二が中央所得再分配装置の存在だ。その一からみていこう。
  経済実態が完全に収斂しているとは、どういうことか。要は
  そのエリアの津々浦々、どこに行っても、経済実態が完璧に
  同じだということである。どこに行っても物価水準は同じ。
  失業率も同じ。賃金水準も同じ。金利も同じ。このような状
  態であれば、そのエリアの中に複数の通貨が存在することに
  は、意味がない。たとえ、その領域の中に多数の国々が含ま
  れていたとしても、経済実態が同じだということは、すなわ
  ち、それら各国の購買力が皆同じだということだ。A国とB
  国との間で購買力が同じなら、A国の通貨とB国の通貨は1
  対1の関係にある。1対1の関係で交換可能な二つの通貨な
  ら、それらを一つの共通通貨、すなわち単一通貨に置き換え
  ることに、何ら問題はない。
  http://now2chblog.blog55.fc2.com/blog-entry-2347.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

浜矩子教授.jpg
浜 矩子教授
posted by 平野 浩 at 03:12| Comment(1) | TrackBack(0) | 欧州危機 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
Posted by ビジネスマナーの出張 at 2012年05月01日 16:24
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