2012年04月12日

●「『財政赤字3%以内』の困難度」(EJ第3280号)

 ユーロ圏に入るには、当然のことですが、EU加盟国の資格を
持つ必要があります。そのうえで次の4条件を満たすことが求め
られます。今日から、この4条件について考えていきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
          1.物価安定維持
          2.低い長期金利
          3.為替相場安定
          4.財政規律厳守
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1条件は「物価安定維持」です。
 これには、具体的な数値目標がついています。ユーロ圏で消費
者物価指数が最も低い3ヶ国の平均値から1.5 %以内です。
 第2条件は「低い長期金利」です。
 消費者物価指数が低い3ヶ国の長期金利(10年物国債)の平
均値の2%以内です。
 第3条件は「為替相場安定」です。
 ユーロとの2年間にわたる為替相場の安定が求められているの
です。以上の3つの条件は必須条件になります。
 第4条件は「財政規律厳守」です。
 これは日本にとって一番の関心のある条件です。具体的には、
次の2つの条件を含むのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.財政赤字がGDP比3%以下である
     2.政府債務残高60%以下であること
―――――――――――――――――――――――――――――
 このなかで、2の「政府債務残高60%以下であること」につ
いては、60%に向かって縮小していればよいという救済措置が
ありますが、その救済措置が適用されるには、第1条件、第2条
件、第3条件がすべてクリアされている必要があります。
 財政赤字とは、国の経済活動における赤字のことです。歳出が
歳入で賄えない場合には財政は赤字となり、これを補うために公
債(国債、政府関係機関債、地方債)を発行します。つまり、公
債発行額が財政赤字額ということになります。このGDP比がま
ず、3%以下であることが求められているのです。
 「財政赤字3%以内」という基準を守ることの困難さについて
考えてみることにします。
 ユーロがスタートした1999年から2011年までの13年
間にわたって、ユーロの中心国であるドイツとフランス、それに
参考までに日本の数字を比較すると次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
          ドイツ   フランス     日 本
  1999年 −1.5 %  −1.8 %     ――
  2000年 +1.3 %  −1.5 %  −7.6 %
  2001年 −2.8 %  −1.6 %  −6.3 %
  2002年 −3.6 %  −3.2 %  −4.0 %
  2003年 −4.0 %  −4.1 %  −5.0 %
  2004年 −3.8 %  −3.6 %  −4.4 %
  2005年 −3.3 %  −3.0 %  −3.3 %
  2006年 −1.6 %  −2.3 %  −2.2 %
  2007年 +0.3 %  −2.7 %  −2.9 %
  2008年 +0.1 %  −3.3 %  −6.3 %
  2009年 −3.0 %  −7.6 % −11.3 %
  2010年 −3.3 %  −7.0 % −10.6 %
  2011年 −2.1 %  −5.6 %  −9.6 %
                ──総務省/財務省資料
―――――――――――――――――――――――――――――
 ドイツだけは財政収支が黒字の年が3回もあります。そして、
「財政赤字3%以内」を達成した年の数は、ドイツが7回、フラ
ンスが5回あるのに対し、日本は2回しかないのです。
 それでは、ユーロ圏の他の国ではどうでしょうか。
 添付ファイルを見ていただきたいと思います。
 これは、2001年から2010年までの欧州諸国の財政収支
対GDP比率の推移を示すグラフですが、3つの国が財政収支を
黒字化させていたことが読み取れると思います。アイルランド、
アイスランド、スペインの3ヶ国です。
 これらの国は、世界的な好景気の中で、国内経済がバブル化し
結果的に財政収支が黒字化したものです。しかし、そのバブルが
崩壊すると、アイスランドは2008年10月にIMFに支援を
要請して破綻、アイルランドも2010年10月にやはりIMF
とEUに支援を求めて破綻しています。スペインはIMFには支
援を要請していないものの、2010年7月の数値で20.2 %
という欧州最悪の失業率に苦しんでいます。
 日本はどうでしょうか。
 日本もプライマリーバランスが黒字化した時期があるのです。
1987年〜1992年までの期間です。まさにバブルの時期に
該当します。米国にもそういう時期はあったのです。1998年
〜2000年までの3年間、財政が黒字化したのです。ビル・ク
リントン大統領の時代です。もちろん当時の米国は、ITバブル
に沸き立っていたのです。やはりバブル期の財政黒字化です。
 しかし、米国では2001年9月11日に同時多発テロが発生
し、米国はアフガニスタンとイラクに戦端を開き、財政はあっと
いう間に赤字基調に逆戻りしてしまっています。
 それでは、バブル経済とは一体何なのでしょうか。三橋貴明氏
はこういっています。「バフルとは、民間が借り入れを増やし、
資産を購入した結果、資産価値が急騰する──このことが経済の
のバブル化の本質である」と。すなわち、借金して投資しても自
らの資産を増やすことができない状態になった時点で、資産価値
が暴落を始めるのです。そうなったとき、その後処理のやり方が
経済に大きく影響します。   ── [欧州危機と日本/09]


≪画像および関連情報≫
 ●バブル経済とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  バブル経済とは、概ね不動産や株式をはじめとした時価資産
  の資産価格が投機によって実体経済の経済成長以上のペース
  で高騰し続け、投機によって支えなければならない市場が、
  投機によって支えきれなくなるまでの経済状態を指す。「急
  激な資産価格の上昇=バブル経済」かのように表現されるこ
  ともあるが、ある資産価格の上昇がバブル経済であったか否
  かの判断は、投機による下支えが不可能な状態となって初め
  て可能となる。すなわち、俗に言うバブル崩壊が起こって初
  めてそれまでの経済がバブル経済であったということが分か
  る。経済学や市場分析の初心者が言いがちな「ソフトランデ
  ィングしたバブルは歴史上存在しない」というような表現は
  本末転倒であり、ソフトランディングした資産価格の上昇は
  そもそもバブルではない。      ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

欧州諸国の財政収支対GDP比率の推移.jpg
欧州諸国の財政収支対GDP比率の推移
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州危機 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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