2012年04月05日

●「デフレ下の経済財政政策の基本」(EJ第3275号)

 バブルが崩壊したギリシャ──経済を立て直すには何をすれば
よいかを考えるに当って、国として取るべき経済財政政策の基礎
を振り返ってみることにします。
 「赤字」というのは嫌な言葉です。とくに経営者にとって一番
耳にしたくない言葉です。これに対して「黒字」は歓迎すべき言
葉です。「財政赤字」と「財政黒字」についても同じことです。
 しかし、企業や家計は別として国の場合は、「財政黒字」がよ
くて、「財政赤字」はわるいという考え方では困るのです。国は
必要に応じて、財政赤字を促進する政策をとったり、財政黒字を
達成するための政策をとったりしなければならないからです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    デフレ下の国 ──→ 財政赤字を増やす政策
   インフレ下の国 ──→ 財政黒字を増やす政策
―――――――――――――――――――――――――――――
 バフルが崩壊すると、経済はデフレ化します。そういうときは
国の財務当局は、財政赤字を増やす政策をとる必要があります。
健全な資本主義の下では、デフレにおいては、財政赤字を増やす
ことが健全な財政政策になるのです。
 デフレ下においては、GDPが成長しないため、財政赤字が増
えて、政府の負債残高対GDP比が高くなっていきます。つまり
財政は中期的に悪化していくのです。まさに現在の日本と同じで
あるといえます。
 それなら、中期的に政府の負債残高対GDP比を改善するには
どうしたらよいでしょうか。
 プライマリーバランスの黒字化を図る──これが必要です。そ
のために政府は財政赤字の拡大を躊躇ってはならないのです。デ
フレ下で民間の資金重要が枯渇しているので、長期金利は低迷し
ており、政府は財政支出を増やしても問題はないのです。財政支
出の原資は国債発行に求めればよいのです。
 過去に発行した国債による政府負債累計残高が巨額化している
ときに、それを解決するためにさらに国債を発行して財政赤字を
増やす──普通の人からみると、それは逆じゃないかと思っても
不思議ではないのです。しかし、デフレ下の国の経済政策として
は、それは正しいのです。
 デフレになると、企業はバランスシートの修復を行い、借金を
返そうとするので、資金需要が枯渇します。民間企業や家計がこ
の時期に積極的な借り入れをすることはほとんどないのです。国
民は給与水準の低下や将来不安から可処分所得から貯蓄に回す割
合を増やすことになります。その結果、銀行には大量の資金が集
まり、そこに過剰貯蓄が形成されることになります。
 この過剰貯蓄はそのままにしておいてはならないのです。民間
企業も家計も借りようとしないのですから、政府が借りて使う必
要があるのです。そのうえで、中央銀行は積極的な通貨発行によ
り、政府をサポートするのは当然のことです。こんなときに日本
の中央銀行は「中央銀行の独立性」を主張して政府に協力しよう
としないのです。
 この状況は現在の日本そのものです。しかし、日本では過剰貯
蓄をそのままにして、財政出動どころか、増税をしようとしてい
るのです。これはデフレ下では真逆の政策です。デフレ下で財政
黒字を増やそうとすると、ますますデフレは深化してしまうので
す。しかし、日銀は、何としてもデフレから脱却しようという意
思をまるで持ち合わせていないようです。
 これには野党の気鋭の政治家が日銀法改正を迫ったので、日銀
は危機感を感じてか、ほんの少しの事実上のインフレ目標を掲げ
金融緩和を宣言したところ、それだけのことで、わずかながら、
円安と株価回復をもたらしているのです。
 増税は財政黒字を増やす政策──財政緊縮政策です。これはバ
ブルが拡張しつつあるときにこそとる必要があるのです。こうい
うときは、財政を引き締めることによって、バブルを崩壊させな
いようコントロールするのです。
 このことは学説の違いなどではないのです。国の経済財政政策
の基本です。しかし、現在の野田政権は、不退転の決意で、真逆
の政策をやろうとしています。それを記者クラブメディアは全面
支援し、反対派を押え込もうとしています。
 政府の財政当局の要である財務省は、意図的にマクロ経済を家
庭の家計簿に喩えてホームページなどで国民に訴えていますが、
これは完全な誤りです。国家と家計は同じではありません。それ
をあたかも同じであるかのように説明しているのは、国民を騙し
ていることになります。
 家庭の借金は全額返却する必要がありますが、国家の借金はす
べてを返却する必要はないのです。国は永遠に存続する存在であ
るからです。現在の日本は、40万円の収入で90万円を支出す
る生活をしているという類の国家財政を家計に喩えるのは国民を
騙す策略であるといえます。
 ここで、ギリシャの問題に戻します。ギリシャはバブルが崩壊
してデフレなのですから、財政赤字を増やす政策をとらないとい
けないのです。しかし、ギリシャは日本と違って負債に見合う資
産も少なく、政府が使える貯蓄も乏しいのです。
 もし、ギリシャ国債がユーロ建てではなく、かつての自国通貨
であるドラクマ建てであったのなら、お札を大量に刷り、通貨量
を増やして対応できたのです。そうすれば国内はインフレになり
通貨安になります。通貨安になると、経常収支が改善するので、
経済は回復するのです。
 しかし、ギリシャはユーロの一員であり、勝手にユーロを刷る
ことはできないのです。つまり、金融政策を放棄しているからで
す。ギリシャはユーロに参加したことによって、お隣のクロアチ
アやトルコに比べて通貨高になってしまい、外国から見ると、観
光施設も割高になっているのです。だからこそ、事態は深刻なの
です。           ─── [欧州危機と日本/04]


≪画像および関連情報≫
 ●野田政権(財務省)の経済財政政策の間違い
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  なぜ「国の借金(=政府の負債)が大変だから増税しよう」
  という主張がマクロ的に間違っているのか。それは、バブル
  崩壊後の国は国内の民間経済主体(家計や企業)が負債削減
  を始めるため、税収の「源」となる名目GDPが成長せず、
  税収が伸びないため、短期的に財政を健全化することは不可
  能だからだ。それどころか、バブル崩壊後の政府は積極的に
  財政赤字を増やさなければならない。さもなければ、どこか
  の国のように増税や政府支出(公共投資など)の削減により
  短期的に財政健全化を目指すことによって、かえつて中期的
  に財政が悪化する──政府の負債残高対GDP比率が悪化す
  るということを繰り返すことになる。   ──三橋貴明著
  『2012年/大恐慌に沈む世界/甦る日本』/徳間書店刊
  ―――――――――――――――――――――――――――

アクロポリスの丘(アテネ).jpg
アクロポリスの丘(アテネ)
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州危機 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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