2006年10月25日

通過儀礼とは何か(EJ1948号)

 『魔笛』というオペラを鑑賞するとき、基本的二元論を頭に置
いておく必要があります。それはJとB――あのフリーメーソン
の2本の柱です。
―――――――――――――――――――――――――――――
        J ・・・・・ ヤキン
        B ・・・・・ ボアズ
―――――――――――――――――――――――――――――
 JとBの関連語を並べると、次のようになります。昨日のEJ
では、○印のついている部分を使って説明しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     ヤキン(J)       ボアズ(B)
     オシリス         イシス
   ○ 男 性          女性
   ○ 太 陽          月
   ○ 昼            夜
     火            水
     金            銀
     能 動          受 動
     3            5
     赤            白または黒
     啓 発          無駄口
     牡牛座          双子座
―――――――――――――――――――――――――――――
 フリーメーソンでは、自然界は次の4つの元素によって形成さ
れているという考え方があります。これを「4大元素」といって
います。
―――――――――――――――――――――――――――――
     火            水
     空気           大地
―――――――――――――――――――――――――――――
 この4大元素は、「太陽」と「月」、「男性」と「女性」に関
連しており、これによって次の図式を描くことができます。これ
は、ジャック・シャイエの考え方に基づいています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     ――「太陽」―――――――「月」――→
       ザラストロ・・・・・ 夜の女王
        I          I
        I          I
     ――「火」――――――――「水」――→
       タミーノ ・・・・・ パミーナ
        I          I
        I          I
     ――「空気」―――――――「大地」―→
       パパゲーノ ・・・・ モノスタトス
―――――――――――――――――――――――――――――
 4大元素の2つである「火」と「水」は、それぞれ「太陽」と
「月」に対応し、同時に「男」と「女」――つまり、タミーノと
パミーナを暗示しています。
 4大元素の残りの2つである「空気」と「大地」には、パパゲ
ーノとモノスタトスが対応しています。ジャック・シャイエはパ
パゲーノとモノスタトスについて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 パパゲーノの場合を見てみよう。空気中に住まう鳥の捕獲者で
 あり、タミーノが鳥の一種と取り違えるほどの鳥の羽根を身に
 まとい、笛(通風楽器)を吹き、羽根が生えているかのように
 身軽であわて者でもあるパパゲーノは、「空気」の王国のあら
 ゆる特徴を所有している。彼とは対照的に正反対なのがモノス
 タトスである。モノスタトスは、地下の闇の黒いシンボルであ
 り、夜の女王と侍女たちの案内人として慣れ親しんだ地下道を
 かけ巡り、ヴァルカンのような地下の洞窟で鍛えられた鎖で誰
 彼なくひっ捉えてやろうと躍起になっている。
      ――ジャック・シャイエ著/高橋英郎・藤井康生訳
            『魔笛/秘教オペラ』より。白水社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、この図式は、物語の最初の部分ではパパゲーノとモノ
スタトスは逆になっています。パパゲーノは夜の女王に仕えてお
り、モノスタトスはザラストロに仕えていたのです。しかし、最
終的には本来のポジションに戻っています。
 『魔笛』では、これらザラストロ、夜の女王、タミーノ、パミ
ーナ、パパゲーノ、モノスタトスは主要登場人物ということにな
り、それぞれについて詳しく知っておく必要があります。
 フリーメーソンでは、入会希望者があると、ロッジの幹部が集
まって会議を開き、試練を受けさせる資格があるかどうかを協議
します。実際にこのシーンはオペラの中にありますが、そこでタ
ミーノを自分の後継者とする意思を明らかにしているのです。
 フリーメーソンでいう「通過儀礼」という言葉の意味は、ひと
つの世界から他の世界へと通過することをいうのです。考えてみ
ると、『魔笛』というオペラは、タミーノとパミーナがザラスト
ロに主導され、厳しい試練を乗り越えることによって、それぞれ
が住んでいた世界から、フリーメーソンの世界に通過する儀礼全
般について描いたものであることがわかります。
 とくにパミーナについては、彼女の意思に反する誘拐にはじま
り、モノスタトスの執拗ないやがらせに耐えてタミーノと出会う
が、すぐ引き離される――そして「ザラストロを殺せ」と迫る母
の訴えに悩むなど、涙と煩悶のプロセスを辿ってはじめてザラス
トロを信ずるようになるのです。このパミーナの通過儀礼につい
ては非常に説得力があります。
 そのきっかけになったのが、第2幕でザラストロがパミーナを
いたわりながら歌うアリア「この神聖な神殿の中では」(「関連
情報」参照)なのです。   ――――  [モーツァルト26]


≪画像および関連情報≫
 ・「この神聖な神殿の中では」/ザラストロのアリア
  ―――――――――――――――――――――――――――
    この神聖な神殿の中では
    人々は復讐ということを知らない
    ひとりの人間があやまちを犯せば
    愛がそのひとを本来のつとめに導く
    こうしてそのひとは友の手にすがって
    楽しく満ち足りて、よりよい国にいくのだ
    この神聖な壁の中では
    人間が人間を愛するところでは
    裏切り者のひそむ余地はない
    人々は敵を赦すのだから
    このような教えを喜ばない者は
    人間であることに値しないのだ
  ―――――――――――――――――――――――――――

1948号.jpg
posted by 平野 浩 at 11:24| Comment(0) | TrackBack(0) | モーツァルト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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