2012年02月23日

●「超円高の原因はどこにあるか」(EJ第3246号)

 ここまで述べてきたことで、財務省や日銀が今まで何を考えて
何をしてきたか──その正体が少し見えてきたと思います。野田
政権は、これらの黒幕によって動かされているだけです。
 このテーマのしめくくりとして、日本としては今後何をどのよ
うにすべきなのかについて考えることにします。まず、何よりも
「景気回復」をはかることです。そのために、必要なことはこの
「円高」をストップし、「円安」に誘導することです。
 史上空前の円高が日本を襲ったのは、東日本の大震災直後のこ
とです。2011年3月17日早朝、「1ドル=76円25銭」
という戦後最高値(当時)を更新したのです。常識的には大震災
が発生したのですから、円が売られて円安になるはずなのに、逆
に、空前の円高になったのです。
 なぜ、これほどの円高になったのでしょうか。
 これには理由があります。日本企業の決算月のほとんどは3月
と9月であり、各企業は外貨建ての投資資産を決済して、円転、
すなわち、円を買うので、円高になるのです。このように、もと
もと決算月は円高になるのです。この海外の資金を本国に戻すこ
とを「レパトリエーション」といいます。
 それに加えて、決算月の3月に大震災が起こったので、海外の
ヘッジファンドが注目したのです。すなわち、日本企業は通年以
上にレパトリエーションを必ず加速させると考えて、ヘッジファ
ンドなどの投機筋がそれに乗っかったので、結果として史上空前
の円高になったのです。これが第一の理由です。
 このレパトリエーションに加えて、もうひとつ大きな理由があ
るという人がいます。日銀出身の元衆議院議員で、経済に強い鈴
木淑夫氏です。鈴木氏によると、日本は海外の国に対し、260
兆3780億円(2011年6月末時点)という巨大な対外純資
産を持つ世界一の債権国家であり、「日本は必ず立ち直る」と信
じている投資家が多いので、円を買ったというのです。
 さらに、日本に膨大な規模の復興需要が生まれるから、世界の
投資家たちは、そのことも見越して、円を買っていると分析して
いるのです。
 もっと根本的な理由を指摘するのは、嘉悦大学教授の高橋洋一
氏です。彼は、リーマンショック以降、米国や欧州の各国が通貨
量を増やしているなかで、日本だけが増やさなければ、円の刷り
負けで円高になっているといいます。世界中の国が自国の通貨量
を増やしているのに、日本だけが増やさなければ、円高になるに
決まっています。要するに、金融政策の無策なのです。
 そういう意味で、ソニー、シャープ、パナソニックなど日本を
代表する電機メーカーが、2012年度3月期の業績見通しを軒
並み下方修正し、巨額赤字に転落すると発表したことは、現在の
金融当局の怠慢さがその原因です。FRBなら絶対にこんなこと
はさせないでしょう。
 高橋氏にいわせると、突然の為替急変というものは民間企業に
とっては、天から降って来る「天災」と同じですが、政策当事者
にとっては、政策的にコントロールできるものなのです。そうい
う意味で、今回の円高は「当局による人災」であり、メーカーに
とっては大変気の毒なことであったとしかいえないのです。高橋
氏は円高対策は為替介入ではなく、金融政策であるとして、次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私は、小泉政権と安倍政権の中で見てきたが、為替を中期的に
 ある一定の範囲内にすることは可能だ。当時は、竹中平蔵経済
 財政担当相と中川秀直政調会長・幹事長が為替をよく理解して
 おり、適切なタイミングで日銀に働きかけた結果として、平均
 して「1ドル=115円」程度だった。
    ──高橋洋一著「2012/日本の解き方」/夕刊フジ
―――――――――――――――――――――――――――――
 これについて、日銀の白川総裁は、2月2日の衆議院予算委員
会において、自民党の山本幸三氏から「最近の超円高の原因は何
か」と聞かれて次のように答えています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 世界経済全体の不確実性の増大、これはもちろんあの、各国に
 共通している原因でございます。で、現在は為替の取引の金額
 が非常に実物取引以上に大変大きな経済でございます。で、そ
 ういう中でグローバルな投資家がどの通貨に投資をするかとい
 う、まあ判断をする際に、相対的に金融システム、金融市場が
 強い、頑健性が強いというふうに見られている通貨に移すとい
 う傾向が見られます。          ──日銀白川総裁
―――――――――――――――――――――――――――――
 日銀総裁は、「円高の原因が、日本の金融システムの頑健性が
強いため」と答えていますが、当事者意識がないというか、評論
家的というか、あまりにも無責任であるといえます。
 このように白川日銀総裁は、各党の議員から国会に呼び出され
て円高に対する金融政策について質問攻めに遭っています。なか
でもとくに自民党の山本幸三議員は大蔵省出身で、金融・財政政
策について詳しく、山本議員が質問に立つときは毎回白川総裁の
出席を要請しています。日銀総裁をいじめるのが趣味のような議
員なのです。
 しかし、山本議員の鋭い質問にもかかわらず、白川総裁はのら
り、くらりと同じような主張を繰り返しているのです。その白川
日銀総裁が、こうした白川包囲網に負けて「1%の物価上昇率を
めど」というインフレ目標に近い発言をしたとたん、株価は上が
り、円は円安に振れて動き出しています。いかに日銀がこれまで
やるべきことをやっていないかの証明であるといえます。
 ところがこれは世間の非難をかわす日銀のポーズであり、日銀
は自らの責任に言及していないのです。実現させることを国民に
約束していないのです。だから「目標」といわず、「めど」とぼ
かしているのです。      ─── [財務省の正体/72]


≪画像および関連情報≫
 ●森永卓郎氏のコラム/日銀の「インフレ目標」について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  日銀は当面、消費者物価指数の前年比上昇率で「1%をめど
  とする」としている。要は目標としているだけで、実現する
  と国民に約束しているわけではありませんし、失敗したとき
  の責任をどう取るか、たとえば白川総裁が辞任するといった
  ことに言及していません。米国がインフレ目標を導入したと
  き、物価の目標数字を明確に決めた上で、達成するまで金融
  緩和を続けるとした。物価目標が未達成の場合、米国政府が
  中央銀行にペナルティーを与えることも明記しています。つ
  まり米FRB議長は2%目標を達成できなければ、責任を取
  らされる。これが世界の常識です。しかし、日銀の白川総裁
  にはそれがない。責任に全く言及していません。そんな無責
  任な物価安定のめどなど、絵に描いた餅と言わざるを得ない
  のです。  ──森永卓郎氏/2月20日付、日刊ゲンダイ
  ―――――――――――――――――――――――――――

自民党/山本幸三議員.jpg
自民党/山本 幸三議員
posted by 平野 浩 at 03:13| Comment(2) | TrackBack(0) | 財務省の正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ふじふじのフィルターさまにご紹介いただいた米国の偽正義フロンティアスピリットの真実を暴露する「エコノミック・ヒットマンが語る恐るべき真実」。
>>http://www.youtube.com/watch?v=-sS71C6oa8A

(>>http://fujifujinovember.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/ftaisd-c740.html
>米韓FTAのISD条項の狙い【投資家利益優先で国家を無力化】 『現代農業』で金哲洙氏が指摘  "きわめて危険な制度"!から)

エクアドルの国士ロルドス大統領とトリホス将軍の自国民のために身を捨てた生き様に心を強く打たれました。
ご紹介くださったこのエコノミック・ヒットマンyoutubeを拡散したいと思います。

インタビュー中にヒットマンが語った「ジャッカル」の正体は、原潜から直接標的国へ不法入国殴りこみ攻撃できる米海兵隊特殊部隊NavySealsのことでしょう。youtubeがあります。

これが「ジャッカル」です。

アメリカ軍最新式原子力潜水艦(1/6〜6/6)

>>http://video.excite.co.jp/player/?id=919d9b80aa3184ac&title=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E8%BB%8D%E6%9C%80%E6%96%B0%E5%BC%8F%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E6%BD%9C%E6%B0%B4%E8%89%A6%EF%BC%881%EF%BC%8F6%EF%BC%89

1/6だけ紹介、以下はリンク先で。
Posted by 東行系 at 2012年02月23日 20:21
エクアドルの国士ロルドス大統領とパナマの国士トリホス将軍の自国民のために文字通り我が身を捨てた生き様に心を強く打たれました。

中南米のその後について長周新聞が最近の状況を報じています。アフリカについては残念ながら長周新聞は取材が及んでいないようですが、オバマ大統領とオバマ以前の黒人大統領候補No.1のパウエル統合参謀本部長の祖国ですから米国ジャーナリズム自身が調査することと思います。

長周新聞2月15日、2月17日、2月20日付け記事(2)面下段「国際通信」シリーズから「中南米」の項をタイプ転載します。

【貧困撲滅を促進】ベネズエラ「子供や老人支援」

 ▼ベネズエラのチャペス政府は2012年2月9日に、「社会改革事業の一環として国内の貧困問題を解決するために2011年に施行された、”ベネズエラの子どもたち”計画ならびに”ベネズエラの敬愛する高齢者”計画に登録された人の数が200万人を上回った」ことを明らかにした。
 ▼「ベネズエラの子どもたち」計画は、貧困家庭の子どもたちを支援することによって、17歳までの子どもたちの就学を促進し、貧富の格差の拡大をくいとめるためのものである。同計画にもとづいて児童手当の支給対象名簿に登録された人の数が105万1770人にのぼった。児童手当の支給額は一ヶ月につき430ボリバル(約8000円)である。
 ▼「ベネズエラの敬愛する高齢者」計画は、社会保険料を納めていない雇用主のもとで働いていたために満額の年金を受給できない60歳以上の男性および55歳以上の女性に対する年金給付を保障するためのものである。同計画にもとづいて年金の支給対象名簿に登録された人の数が103万6791人に達した。
 ▼野党勢力が貧困撲滅に向けた政府の一連の社会改革計画を「貧しい子どもや高齢者に施しを与えるもの」と誹謗中傷したのに対して、チャペス大統領は「ベネズエラの子どもたち計画やベネズエラの敬愛する高齢者計画は、著しい社会的不平等の解消を切望する貧しい人々に援助の手を差し伸べるものにほかならない」と反駁した。(了)

【中南米ALBA首脳会議】(上)
「独自経済圏作る」ユーロ危機に対処

 ▼中南米8カ国の反米・左派政府によって結成された政治・経済協力機構「われらのアメリカ人民のためのボリバル同盟(ALBA)」が2月4日と5日の二日間にベネズエラの首都カラカスの大統領府で第11回首脳会議をおこない、ベネズエラのチャペス大統領、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長、ボリビアのモラレス大統領、エクアドルのコレア大統領、ニカラグアのオルテガ大統領、アンティグア・バーブーダのスペンサー首相、セントビンセント・グレナディーンのゴンザルベス首相、ドミニカのスケリット首相が参加した。またグレナダ、スリナム、セントルシア、ハイチの各首脳が招待された。
 ▼今回の首脳会議は、1992年2月にベネズエラのペレス政府の新自由主義政策にもとづく緊縮財政政策に反対してチャペス空軍大佐(当時)率いる将校団が反乱に立ち上がった出来事から20周年を迎えるのに符合して開かれた。
 ▼各国首脳は、ALBAを強化し発展させるために常設事務局をカラカスに設置すること、政治経済委員会を設立すること、加盟国から代表者を常駐させること、独自の経済圏である「ALBA経済地域」を二年以内に創設することで合意した。
 ▼ベネズエラのチャペス大統領は、現在のユーロ危機に対処するために、AJBA銀行に社会開発事業を支援するための基金を創設し、各国から外貨準備高の1%を拠出することを提案し、各国首脳によって承認された。(つづく)

【中南米ALBA首脳会議】(下)
「米欧の介入阻止」防衛委員会を設立

 ▼ALBA銀行は、米国主導の国際通貨基金(IMF)にとってかわり、中南米地域の経済や社会の持続的発展に寄与する銀行として2008年に創設された。域内決済通貨は、2010年に導入されたスクレ(米ドルと等価)が使用されている。ALBA加盟国間でスクレを用いた貿易取引の数が2011年に431件に達し、取引額が2億1600万ドル(約183億円)にのぼった。
 ▼またチャペス大統領は、「オリノコ川流域の油田地帯には豊富な石油資源が存在する。ベネズエラは、2012年に同油田の石油採掘量を現在の日産300万バレルから350万バレルへと引き上げる計画である。それによってALBAの経済社会開発事業の発展のために大きく寄与することができる。ALBAや中南米地域の経済的独立を守るために、オリノコ川流域の石油開発を強化することが求められる」と語った。
 ▼また国際問題に関して各国首脳は、米国の植民地にされてきたプエルトリコの民族自決権と独立権を支持する宣言、ならびにシリアに対する外国の干渉を非難するとともに政治危機に立ち向かうアサド政府の基本的立場を支持する宣言、およびイギリスが軍事演習をくり返しているマルビナス(英語名はフォークランド)諸島に対するアルゼンチンの領有権を承認するとともにアルゼンチンを支援する宣言を採択した。
 ▼エクアドルのコレア大統領は、「4月中旬にコロンビアのカルタヘナでおこなわれる米州機構(OAS、加盟国は社会主義キューバを除く中南米34カ国)首脳会議にキューバが招待されない場合、ALBAとしての共通政策を策定するために、キューバの首都ハバナで外相会議を開くことが必要である」と提案し、各国首脳によって支持された。
 ▼そして各国首脳は、米欧諸国による植民地化や軍事干渉を阻止するためにALBA防衛委員会を設立することの重要性を強調した。
 ▼首脳会議は最後に、シリアに干渉し政情不安をあおる米欧諸国の策動を非難する声明を発表して閉会した。
 ▼スリナムとサンタルシアの両国が正式加盟の手続きに入っているため、ALBAの加盟国は10カ国になる。そしてハイチが準加盟国になり、正式加盟をめざしている。
 ▼ALBAは、米国ブッシュ政府がすすめていた米州自由貿易地域(FTAA)に対抗して、2004年にベネズエラのチャペス大統領とキューバのカストロ議長を中心にして結成された、相互協力と連帯と補完の原則にもとづいて政治的経済的統合をめざす地域機構である。(おわり)
 
Posted by 東行系 at 2012年02月23日 22:59
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