2012年01月30日

●「橋本政権の失敗に学ぶべきである」(EJ第3228号)

 橋本首相が政権を担っていた1997年の消費税国会で、当時
新進党の鈴木淑夫議員と橋本首相との間で次のやり取りがあった
のです。鈴木議員は元日銀理事であり、当然経済に詳しい議員で
あったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 鈴木議員/金利のコストがこれだけ低いのだから、財政赤字の
      削減を急ぐ必要はないのではないか
 橋本首相/財政赤字はこのままでは拡大し続ける。そうすれば
      クラウディングアウトになる可能性を心配している
 鈴木議員/民間資金が市場で遊んでいるときにクラウディング
      アウトを心配して財政再建を優先するのは、見当違
      い。むしろ民間市場を活性化するために財政出動を
      するべきだ
 橋本首相/・・・・・。          ──三橋貴明著
  『2012年/大恐慌に沈む世界/甦る日本』/徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 増税を急ぐ必要はないのではという鈴木淑夫議員の質問に対し
て、橋本首相は「クラウディングアウトになる可能性を心配して
いる」と専門用語を使って応酬しています。現在の国会答弁より
もかなり高度なやり取りをしているようにみえます。
 橋本元首相はなかなかの勉強家で、政策に詳しい議員として定
評のあった政治家ですが、やはり大蔵省の影響を強く受けている
のです。1989年8月から1991年10月まで大蔵大臣を務
めているからです。
 橋本元首相の蔵相時代の答弁や首相時代の受け答えをテレビで
よく試聴して知っていますが、専門用語を好んで使うものの、表
層的な感じがします。それが「クラウディングアウトになる可能
性を心配している」という答弁によくあらわれています。
 クラウディングアウトとは何でしょうか。定義は、次のように
なっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 クラウディングアウト(crowding out)とは、行政府が資金需
 要をまかなうために大量の国債を発行すると、それによって市
 中の金利が上昇するため、民間の資金需要が抑制されること。
                    ──ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――――
 たとえば、失業対策などを目的として国が大量の国債を発行し
公共事業や福祉政策を拡充させようとすると、新規国債の発行に
よって市中金利が上昇し、民間の経済活動──投資のための資金
調達や住宅購入などの消費行動を抑制してしまうことをいうので
す。クラウディングアウト本来の意味は「押しのける」という意
味なのです。
 鈴木議員のいう「民間資金が市場で遊んでいるとき」というの
は、銀行にはたくさんお金があるのにその運用先に困窮している
こと、すなわち、デフレの状態を意味しているのです。鈴木議員
は、そのようなときにクラウディングアウトなど起きるはずがな
いし、このような時期に財政再建を優先するのは見当違いだと断
じているのです。
 普通の議論であれば、完全に橋本氏の負けですが、彼はそのと
きの経済の状況とクラウディングアウトとの関係が十分理解でき
ていなかったので、消費増税を強行したのです。ルーズベルトと
まったく同じ間違いをやってしまったのです。何が何でも消費増
税をしたい大蔵省の洗脳が功を奏したのです。
 その結果何が起こったでしょうか。増税を実施した1997年
度についていえば、消費税収は4兆円増えているのですが、2年
後の1999年度には1997年度対比で所得税収と法人税収の
合計額が6兆5000億円の税収減になってしまったのです。
 このことを知って橋本氏は愕然とします。彼はその時点で自分
のやったことの間違いに気が付いたのです。そして、2001年
4月の総裁選に出馬するとき、自らの冒した間違いを率直に国民
に詫びています。あのプライドの高い橋本氏にしては考えられな
いことです。総裁選では、小泉氏に敗れたものの、その態度は立
派であるといえます。産経新聞・編集委員の田村秀男氏によると
橋本氏は、財務官僚の言いなりになって間違った政策を取ったこ
とを亡くなる間際まで悔いていたそうです。
 それに比べて、菅直人前首相と野田佳彦首相の薄っぺらなこと
──橋本元首相の失敗に何ら学ぶことなく、財務官僚にいちころ
に洗脳され、財務省の宣伝マンに成り下がっています。
 田村秀男氏は、菅氏が財務相のとき、有識者代表とともに日本
の財政について1時間余り議論したことがあるそうです。そのと
き、田村氏は、民間金融機関の持っている政府短期証券100兆
円を日銀に買い取らせて、建設国債を出してその100兆円を吸
い上げるとともに、その100兆円を新成長戦略用の財源にして
使ってはどうかと提案したそうです。
 それに対して、菅前首相は「そんなことをしたら、政府の債務
が増えるじゃありませんか」の一点張りであったというのです。
完全に骨の髄まで洗脳されてしまっています。田村氏はそのとき
のことを2010年6月15日に「カンノミクスの勘違い」と題
してネット上で書いています。その内容は大変興味深いので、ご
紹介しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
   「カンノミクスの勘違い」/田村秀男氏
   http://tamurah.iza.ne.jp/blog/entry/1653758/
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 菅前首相はそれでも必ずしも自分と意見の合わない人も含めて
招集し、議論するだけマシ(?)ですが、野田首相は財務官僚の
説明にほとんど発言しないままメモを取り、あとは人が変わった
ように「不退転の決意」で強行突破ですから、まったく打つ手な
しです。         ――――─ [財務省の正体/54]


≪画像および関連情報≫
 ●橋本龍太郎元首相の人物像について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「見識はあるが、人望はない」が党内での一般的な評価。政
  界随一の政策通として知られ、いささかの揶揄を込めて「課
  長補佐」などといわれるほど、各政策部門の細かな部分まで
  精通していたが、何かわからないことを聞いたりすると「お
  や、そんなこともおわかりにならない?」、「あなたが知ら
  ないことを、どうして私が知っていると思うのです?」など
  と必ず嫌味な返答をしたとされる。花街で最も嫌われている
  政治家という不名誉な噂もあった。橋本の兄貴分である竹下
  登は、「怒る、威張る、拗ねる」が橋本になければとっくの
  昔にアイツは総理になっていた」と評した。田中角栄は「橋
  龍は、こまっちゃくれた風切り小僧だ。備前長船の出身。切
  れそうだけど、あの手は人様に好かれない。親父の龍伍は切
  れ味抜群だったが、仲間がいなかった」と評した。梶山静六
  は「橋龍というのは遠くで見ている富士山」と評したことが
  ある。つまり近くに寄って接していくと理論に走りすぎたり
  白黒をはっきりさせないと気のすまない性格で欠点ばかりが
  目立つというのである。 小沢一郎は「龍ちゃんは一人で遊
  ぶ。だから友達ができない」と述べている。
                    ──ウィキペディア
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橋本龍太郎元総理.jpg
橋本 龍太郎元総理
posted by 平野 浩 at 03:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 財務省の正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
共産党風に言えば、企業・金持ち減税するために消費税を上げる・・・んじゃないでしょうか? 過去、法人税減税額は消費税分に匹敵しています。
Posted by ma-gee at 2012年01月30日 11:01
まず避難と同時に全原発停止。福一石棺化して除染。

メルトアウトした核燃料の臨界暴走を止める石棺化は技術的には簡単です。パチンコ球サイズの大量の錫の金属球を原子炉の上部から流しこめば良い。

参照:「2011年8月15日月曜日
メルトアウトした燃料を冷却・固化するには、スズを用いた金属棺しか無いのではないか」
福島原発災害の見方さま
>>http://mononomikata-kerogg.blogspot.com/2011/08/blog-post_15.html
Posted by 通りがけ at 2012年01月31日 01:29
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