2005年01月31日

死せる火星/死につつある地球(EJ1522号)

 今日からしばらく「火星」について考えます。今年に入って3
番目のテーマです。今日はそのプロローグ――予告編であると考
えてください。
 ところで、「紅白歌合戦」、「ハウルの動く城」ときて、次は
なぜ「火星」なのでしょうか。
 別に天文学をやろうというのではないのです。EJのテーマは
ニュース性のあるものを取り上げることにしていますが、いま、
火星はいろいろな意味で注目されているのです。最近米国をはじ
めとする世界各国で宇宙探査がさかんですが、どうしてだかわか
りますか。それは、単なる学問的探求だけでなく、ゆっくりとで
あるが、確実に迫りつつある、人類にとって深刻にして切実な問
題を解決することを目指して行われているのです。
 今年は2005年、京都議定書の第1期である最初の5年間は
2008年からスタートします。京都議定書は気象変動――地球
温暖化防止に向けて定められた最初の国際規則です。京都議定書
はまだ発効されていませんが、まもなく発効される見通しになっ
ています。既に日本をはじめEUなど125カ国・地域が批准し
ているのに、なぜ、ここまで遅れたのか、わかるでしょうか。
 京都議定書が発効するためには、批准した先進国の二酸化炭素
の排出量が90年時点の55%以上なければならず、これまで発
効できなかったのです。それは、最大の温室効果ガス排出国であ
る米国とロシアが参加していなかったからです。
 しかし、2004年11月に、京都議定書の批准案にプーチン
大統領が署名し、ロシアが批准したことによって、米国抜きでも
二酸化炭素の排出量が61%を超えるため、ようやく京都議定書
が今月中にも発効できる見通しとなったわけです。
 それにしても米国のブッシュ政権は、京都議定書を拒否する姿
勢を示し、2001年に離脱しています。しかしながら、その一
方において米国は、世界環境研究の分野ではトップレベルにある
――米国という国はそういう国なのです。
 その米国の火星科学の研究者が書いた次の本があります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  ブランデンバーグ&バクソン著/藤倉良訳 講談社刊
  「沈黙の惑星――火星の死と地球の明日」
   ―― DEAD MARS.DYNING EARTH ――
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 原題が凄い――戦慄的です。そのまま訳せば「死んだ火星、死
につつある地球」となります。地球は死につつある――われわれ
はいま「地球号タイタニック」に乗っているようなものだと著者
はいっているのです。それは地球温暖化が深くかかわっているの
でしょうか。
 環境問題の中でも気象変動は目に見えないだけにわかりにくい
のです。100年後に気温が5度〜6度上がるといわれたって、
そんな先のことは誰もピンとこないはずです。それだけに恐ろし
いといえるのです。
 著者は、海洋に長い間にわたって蓄積された二酸化炭素が何か
のはずみで突然大気中に吹き出す可能性にも言及しています。実
際に、湖底の二酸化炭素が噴出して村が全滅した例があるという
ことから推論しています。本当にそんなことが起こるのかどうか
はわかりませんが、可能性はあるといえます。
 著者は、「温暖化の末路は火星を見ればわかる」といっていま
す。火星はなぜ「死の惑星」になったのか――その原因を究明す
ることによって、地球の危機を救うヒントが見つかるのではない
かと提案しているのです。
 確かに、2004年は、明らかに気象は大きく変動しているこ
とが誰の目にも明らかになっています。異常に暑い夏と異常に寒
い冬、台風、地震、津波、竜巻、大雪などが世界レベルで起こっ
ているからです。何かが狂っています。
 しかし、「沈黙の惑星――火星の死と地球の明日」の著者によ
る提案は、火星はかつて生物が住めるような緑の惑星であったこ
とを前提としているのです。火星は太陽から遠くて寒いけど、か
つては大気中に二酸化炭素と水蒸気があって温暖に保たれていた
という前提です。本当でしょうか。果たして、火星には本当に生
物がいたのでしょうか。
 2004年4月に米国のブッシュ大統領は「2020年までに
月と火星の有人探査を行う」と宣言しており、今後5年間、NA
SAにはその有人宇宙探査のために年間1000億円の予算が与
えられることになったのです。
 地球上に問題が山積しているこの時期に、果たして月と火星の
有人探査について米国民の理解が得られるかどうか――諮問委員
会は智恵を絞ったすえにSF作家のレイ・ブラッドベリに次のよ
うな質問をしています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 諮 問委員会:実用的なアメリカ国民に、有人の月と火星の探
        査を理解してもらえるだろうか。
 ブラッドベリ:新しい自由、地球上の政治と恐怖のテロから離
        れる動きを強調すれば、人々はその重要性を認
        識するでしょう。
 諮 問委員会:地球上に課題が山積しているのに、宇宙探査に
        予算を費やしていいのだろうか。
 ブラッドベリ:地球上では毎日1000億円ものお金が、戦争
        や紛争に費やされているのです。1年のうちの
        1日分を宇宙旅行に使うことにすればできるこ
        となのです。たとえばコロンブスが大航海に出
        なかったら、すべての問題は解決できたでしょ
        うか。アメリカも発見されなかったでしょう。
        あきらめたら、ダメなのです。
        ――竹内薫著、

『火星地球化計画』より。実業
                        之日本社刊
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


≪画像および関連情報≫
・地球を構成しているすべての物質は宇宙からやってきた。われ
 われの現在の安住の地としての故郷、「天」と「地」は一体で
 ある。               ――カール・セーガン

1522号.jpg
「沈黙の惑星――火星の死と地球の明日」

→次の記事(第1523号)へ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 火星探査 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
平野様、

 拙文に対してトラックバックしていただきありがとうございます。早速、火星に関する記事を読ませていただきました。非常に興味深い内容ですね。私も火星表面にある顔面をかたどった(或いはそのように見える)構造物には衝撃を受けましたが、その後の私の認識は平野様も文章中でふれられておりますように、NASAの公表した「光線による陰影」というものを鵜呑みにしておりました。もちろんその可能性も未だ否定できませんが、平野様の議論及びその根拠としての例示には多々頷かずにはいられませんでした。

 またNASAとJPLの確執というのもおもしろいですね。確かに両者の画像著作に関するスタンスが異なるのもうなずけます。(JPLはその利用の自由を明示しているのですが、NASAはそういった事項を掲示してある場所さえも見つけられませんでした。)

 ところで私は仕事柄、二酸化炭素による温室効果よりも亜酸化窒素(笑気ガス)によるそれに興味をそそられます。理由は二酸化炭素の代謝は多くの高等植物が持っておりますが、亜酸化窒素のそれは微生物に限定されます。確かにその相対量は前者の方がはるかに大きいのですが、(速度論的)化学安定性は後者がずっと大きいのです。そういった意味においても脱窒化過程(denitrification)の最終中間体である亜酸化窒素の重要性はもっとクローズアップされても良いと思いますが。

 延々と駄文をコメント欄に残してしまい申し訳ございません。今後も楽しく、また興味深く拝見させていただきます。それでは失礼いたします。

cooyou
Posted by cooyou at 2005年09月23日 07:23
研究もいいけど実際こういうこともやらないとねぇ...。
日本みたいに排出量が多いとこや人は特に。
汝の行いが善である事を期待しますよ?
http://www.futsugou.jp/takeaction/index.html
Posted by ' at 2007年10月21日 02:46
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