2011年10月18日

●「すべてが闇の中で決まる検察審」(EJ第3162号)

 小沢一郎氏に対して東京地検が「不起訴」の判断を下したのは
2010年2月4日のことです。東京地検特捜部は1年前に小沢
事務所の大久保公設第一秘書(当時)を逮捕した時点から、小沢
氏を起訴しようとして狙っていたフシがあります。
 しかし、どうしても小沢氏を起訴するに足る証拠を揃えること
ができず、不起訴にせざるを得なかったのです。これは特捜部に
とって相当重い決断であったはずです。
 仕掛けはもうひとつあったのです。それが検察審査会での強制
起訴です。ところで、検察審査会とはどういう機関なのでしょう
か。知識を整理しておきましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察審査会とは、検察官が独占する起訴の権限(公訴権)の行
 使に民意を反映させ、また不当な不起訴処分を抑制するために
 地方裁判所またはその支部の所在地に設置される、無作為に選
 出された国民(公職選挙法上における有権者)11人によって
 構成される機関である。        ──ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察審査会は、検察の公訴権の行使に民意を反映させるための
ものです。検察による不当な不起訴ないし起訴猶予処分に関して
無作為に選出された11人の審査員によってその処分の是非につ
いて審議を行い、「起訴相当」や「不起訴相当」などの裁定を下
す機関です。そして、2回続けて「起訴相当」が出ると、検察側
が不起訴であっても、強制的に起訴できるのです。
 裁判所の判決においては、既に裁判員制度による裁判員によっ
て民意が反映される仕組みになっており、これらの制度が正しく
運用される限りにおいては悪い制度ではないと思います。
 しかし、検察審査会は1948年(昭和23年)に設置され、
既に50年以上が経過して制度疲労を起こしており、次のような
大きな問題点がそこに横たわっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.審査員を選ぶプロセスがブラックボックスであり、審議
   会での審議記録も一切が公表されない
 2.審査会の審議に関与できる者は、検察官と審議補助員と
   して委嘱された弁護士だけであること
 3.検察審査会は検察をチェックする機関であるが、裁判所
   や検察に非常に近い機関になっている
―――――――――――――――――――――――――――――
 この制度は、検察の公訴権をチェックするのが目的であるにも
かかわらず、検察側にとっていくらでも恣意的に運用できる制度
であるといえます。以下、検察の立場に立って、小沢氏の強制起
訴のケースについて考えることにします。
 かなり以前から岩手県の胆沢ダムの利権をめぐり、東京地検特
捜部は小沢事務所の調査をやっていたのです。しかし、確たる証
拠がないのです。こういう場合、検察としては相手が有力な政治
家であるので、事情聴取をかけたり、まして逮捕することなど常
識的にはできないことなのです。
 ところが、その小沢一郎氏が民主党代表になり、2009年の
衆院選で政権交代を成し遂げる可能性が出てきたので、それを阻
止したいあるグループの何らかの意向によって、ほとんど証拠も
ないのに公設第一秘書をいきなり逮捕し、起訴したのです。これ
によって小沢氏は選挙が迫っていることでもあり、代表を辞任せ
ざるを得なかったのです。
 このさい、特捜部は記者クラブメディアを使って反小沢キャン
ペーンを大々的に展開して小沢氏を徹底的に貶めたのです。これ
によって、社会的に「小沢一郎=悪人」のイメージ醸成をするこ
とに成功しています。これは彼らにとって次の展開を見据えた戦
略であったのです。
 小沢氏が代表を降りたことによって、民主党は支持率を回復さ
せ、政権交代は実現したのです。しかし、小沢首相を阻止したい
グループは一定の成果を上げたことになります。それに彼らは、
まだ小沢排除をあきらめていなかったのです。それが元秘書3人
を逮捕した陸山会事件です。特捜部はこの事件に関して小沢氏に
対して事情聴取を繰り返し行ったのですが、小沢氏については起
訴できなかったのです。しかし、これによって、「小沢一郎=悪
人」のイメージはさらに鮮明になったといえます。
 しかし、ここで検察にとって思わぬ事態が起こります。厚生省
の村木厚子氏の裁判における前田元検事の証拠改竄の発覚です。
これによって検察の権威は地に落ちるのです。それでも小沢氏に
はもうひとつの罠が仕掛けられていたのです。それが検察審査会
です。検察としては、小沢氏の評判は地に落ちており、検察審査
会が必ず取り上げることを想定して不起訴にしたのです。検察審
査会では審査員の選定から審議の内容、決定のプロセスにいたる
まで、すべてがブラックボックスであるので、不正が行われやす
いし、結果のコントロールもできるのです。小沢氏のケースでも
実際におかしなことがたくさん起こっています。
 もし、検察側が小沢氏を起訴する証拠が揃わず、起訴が困難で
あったとします。この場合、検察は小沢氏をいったん不起訴にし
その後で検察審査会で審査させて2回の「起訴相当」を議決させ
裁判に持ち込む──この方が小沢氏を有罪にする可能性は高いと
考えたのです。すべてがブラックボックスの中で行われるのです
から、どうにでもできるからです。
 審査員を選定するプロセスもブラックボックスですから、審査
員の中に検察側の意を組んだ者を入り込ませ、議決を誘導するこ
とも可能です。そもそもこのような制度を作った責任は政治家に
もあり、制度内容を大幅に改正する必要があります。
 まるで暗黒裁判そのもの、小沢氏はこのような不可解な制度に
よって強制起訴されたのです。そういう状態に追い込んだグルー
プには強い悪意があるので、小沢氏の政治生命は大きな危機にさ
らされているのです。  ――── [日本の政治の現況/88]


≪画像および関連情報≫
 ●「検察の正義」のない裁判なら小沢氏は無罪/田原総一朗氏
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  自らの政治資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐり、政
  治資金規正法違反(虚偽記入)罪で強制起訴された小沢一郎
  被告の初公判が10月6日、東京地裁で行われた。小沢氏の
  意見陳述の怒りがよくわかる。これは普通の裁判ではない。
  小沢氏はこれまでに東京地検特捜部の捜査を受け、2度にわ
  たり「不起訴(嫌疑不十分)」になった。その間、検察審査
  会の審査が行われ、2010年4月に「起訴相当」と議決。
  さらに検察審査会は同年9月に強制的に起訴すべきだとする
  「起訴議決」を決め、翌10月に公表した。これにより、裁
  判所が指定する弁護士が検察官役となり、小沢氏は「強制起
  訴」され、今回の初公判が行われたのである。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20111012/287029/?top_f2&rt=nocnt
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傍聴券を求める長蛇の列.jpg
傍聴券を求める長蛇の列
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
仰るとおり、審査員選出プロセスもブラックボックスです。
審査員の平均年齢も30.9歳→33.91歳→34.55歳と2度も訂正しました。あまりに不可解なので、検察審査会事務局に乗り込み確認をしました。事務局の訂正の理由はメチャクチャで、嘘をついていることが確認できました。
彼らの説明から、彼らの嘘を解析し、審査員選出の謎を解きました。拙ブログに載せましたので、検証お願いします。
「一市民が斬る!」
『10月10日 検察審査会事務局の"審査員平均年齢の大嘘"を暴く! 最高裁よ!審査員と選管選出候補者の生年月日を公表しろ!』
http://civilopinions.main.jp/2011/10/post_44.html
事務局は審査法に違反した審査員選出を行っています。みんなで検察審査会事務局のインチキを暴きましょう。
Posted by 志岐武彦 at 2011年10月18日 08:36
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