2011年10月14日

●「人生を左右する誤報を恥じない新聞」(EJ第3160号)

 人間の記憶は曖昧なものです。多くの日本人は、とくに年配者
ほど大新聞の書く記事はおおむね信用しています。ある事件の記
事が大きな見出しで報道されればそのまま素直に受け入れてしま
うものです。しかし、その記事が完全な間違いであったとしたら
どうでしょうか。
 こういう場合、新聞は一応訂正記事を書きます。しかし、そう
いう訂正記事は非常に小さいのが一般的です。新聞社のミスです
から、あまり目立つようには書きたくないのです。
 しかし、この場合、記事が小さいので、大きな記事の報道を見
て、そういう訂正記事を見落としてしまう人もたくさんいます。
そうすると、それらの人たちは、大きな見出しの記事の内容を正
しいと信じてしまいます。
 陸山会事件にはこういうことがあまりにも多いのです。そのひ
とつの例が石川知裕氏に起きているのです。石川氏は2010年
1月15日に逮捕されましたが、その5日後の1月25日(月)
の日本経済新聞夕刊に次の記事が掲載されたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 関係者によると、水谷建設の元幹部は特捜部の事情聴取に対し
 2004年10月15日に東京都港区の全日空ホテル(現AN
 Aインターコンチネンタルホテル東京)で、石川議員に現金5
 千万円を渡したと供述している。特捜部が供述した石川議員の
 手帳には、04年10月15日の欄に「全日空」と書かれてい
 た。横には人の名字が記載。(一部略)特捜部は、この日に水
 谷建設の関係者がこのホテルに宿泊していたことを確認。「授
 受」の3日後の同月18日には陸山会の銀行口座に同額の5千
 万円が振り込まれていたことが判明している。
     ──2010年1月25日付、日本経済新聞夕刊より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この新聞記事を読めば、ほとんどの人が「やはり、石川は水谷
から金を受け取っているな」と思うはずです。金を渡した日と石
川氏の手帳の15日の欄にある「全日空」の文字。さらに18日
に陸山会の口座に振り込まれた5000万円、同月の29日に支
払ったとされる土地代金の4億円──完璧です。真っ黒です。
 しかし、これはとんでもない誤報であったのです。その次の日
の朝刊に掲載された次の訂正記事をご覧ください。
―――――――――――――――――――――――――――――
 25日付、夕刊「手帳にホテル名メモ」の記事で、石川知裕衆
 院議員の手帳でホテル名の記述がある欄は「2004年10月
 15日」ではなく、水谷建設の元幹部が小沢一郎氏側への2回
 目の現金提供の時期と供述しているとされる「05年4月」の
 誤りでした。記事、見出しの一部を削除します。
       ──2010年1月26日、日本経済新聞、朝刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、これはひどい話です。石川議員に対する国民の心証は
真っ黒になってしまいます。ちなみに「水谷建設の元幹部が小沢
一郎氏側への2回目の現金提供」とあるのも何の証拠もない検察
のリークであり、夕刊の記事中の18日の5000万円の入金は
ちゃんと根拠のあるものだったのです。
 しかも、新聞やテレビはそれらの訂正すべき情報を無視して報
道せず、大久保、石川両氏が全否定しているのに、証拠もないの
に水谷建設側からの2回にわたる5000万円ずつの献金──す
なわち、計1億円の献金を執拗に報道し続けたのです。
 そして、陸山会事件の公判において検察は、訴因に関係のない
水谷建設の元社長の川村尚氏ら関係者を証人として次々と出廷さ
せ、水谷マネーがいかにも小沢事務所に渡ったかのような印象を
裁判長に与えたフシがあるのです。そして、登石裁判長はこの水
谷からの裏献金があったと推認して、小沢氏の元秘書3人に対し
て有罪判決を下しているのです。
 なぜ、これほど証拠のない水谷建設の裏献金に執拗にこだわる
のでしょうか。これに関して、「週刊朝日」10/21号は次の
ように書いているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 そもそも「天の声」や「水谷マネー」があったからこそ、虚偽
 記載が「悪質」だとされてきた。だからこそ東京地裁は、石川
 議員らの判決で「法と証拠」を逸脱してまで、その悪質性を認
 定しようとしたのだ。いったい、この裁判にどれだけの意味が
 あるというのか。       ──「週刊朝日」10/21
―――――――――――――――――――――――――――――
 陸山会判決では、胆沢ダムの工事の受注に関して、大久保隆規
元秘書が業者に対し、「天の声」などを発する中心的存在であっ
たとしていますが、大久保氏をよく知る東北の大手ゼネコン幹部
のA氏は次のようにいっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 判決では小沢事務所の大久保元秘書が「天の声を発した」なん
 て決めてかかっていましたが、大笑いです。業者にパーティー
 券の大量購入や選挙協力などムチャなことを言ってきたのは、
 00年まで小沢事務所で秘書を務めた高橋義信氏です。東北談
 合のドンといわれた鹿島の幹部と太いパイプを築き、われわれ
 も仕事欲しさにムチャな注文に渋々従った。大久保秘書は鹿島
 とのパイプを高橋氏になかなか譲ってもらえず、鹿島のドンか
 らはほとんど相手にしてもらえなかった。大久保氏は迫力もな
 いし、紳士。パーティー券の購入枚数を減らして欲しいと頼ん
 でも、文句さえ言いませんでした。
       ──2011年10月5日付、日刊ゲンダイより
―――――――――――――――――――――――――――――
 どうやら、大久保隆規氏のイメージは大きく違うようです。1
億円の裏献金など「100%あり得ない」とゼネコンのA氏はそ
ういってクビをひねっているのでいす。
            ――── [日本の政治の現況/86]


≪画像および関連情報≫
 ●金の受け渡し場所についてのA氏の証言
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ホテルの喫茶店でカネを渡すのは、建築業界の常識としては
  考えられない。渡すなら、料亭の個室など人目につかない場
  所にします。それにただの下請けにすぎない水谷が5000
  万円を2回持って行っていますが、どうしても信じられませ
  ん。100億円の工事を元請けのゼネコンが取っても経費が
  約3割で、残りを複数の下請けに叩いた金額で割り振る。元
  請けならともかく、下請けが1億円もの巨額の裏金を捻出で
  きるはずがない。「ようやく利益が出せる」というのが、下
  請けの実情なんです。
       ──2011年10月5日付、日刊ゲンダイより
  ―――――――――――――――――――――――――――

「週刊朝日」10/21.jpg
「週刊朝日」10/21
posted by 平野 浩 at 02:51| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
このホームページより新聞読んだ方がいいよ
Posted by unko at 2011年10月24日 04:53
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