2011年10月04日

●「不利なことは強調、有利なことは無視」(EJ第3153号)

 西松建設事件や陸山会事件については、ネットまで含めると、
非常に多くの人が記事を書いています。それらの記事のなかには
最初から「小沢=悪人」という前提で記事を書いている人がいま
す。いい換えると、小沢氏に対して何らかの悪意を抱いて記事を
書いており、小沢氏にとって都合の悪い情報を強調し、逆に有利
な情報は知っていてもを書かないのです。
 その一つの例を取り上げてみましょう。『WiLL』11月超
特大号に掲載されているフリージャーナリストの長谷川学氏の論
文の一部です。ちなみにこの雑誌は小沢一郎のことを絶対によく
書かないことで知られています。なお、長谷川氏の論文は陸山会
判決以前に書かれています。
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 西松建設事件についてはすでに〇九年七月、東京地裁が西松建
 設の国沢幹雄元社長に対し、禁固一年四ヵ月、執行猶予三年の
 有罪判決を出していた。判決によると、西松建設は公共工事の
 談合で受注を確実にするために、一九七七年頃から実体のない
 ダミー団体(未来産業研究会、新政治問題研究会)を通じて、
 陸山会などに違法献金を行った。一方、大久保被告に関して検
 察側は、ダミー団体から献金を受ける際に、大久保被告が西松
 建設の幹部と折衝するなど「ダミーと知りながら違法な献金を
 受けた」と指摘。この点について、証人として出延した西松建
 設元総務部長(献金の窓口役)が、「西松本社に大久保被告が
 前年の実績を示す表を持ってきて、小沢氏側のどの団体に献金
 するか割り振りを決め、元社長に承諾をもらった」と、検察側
 主張を裏付ける証言を行った。       ──長谷川学氏
    『「小沢一郎、無罪」でも無実ではない』/ワック出版
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 西松建設事件の裁判における重要ポイントは、西松建設の2つ
の政治団体──未来産業研究会、新政治問題研究会がダミー団体
であるか否かにあります。もし実体のある政治団体であれば、献
金は何も違法ではないのです。多くの自民党などの議員も同じ団
体から献金を受けているのです。
 これについて、上記記述に出てくる西松建設元総務部長(献金
の窓口役)の岡崎彰文氏は2010年1月13日に検察側(弁護
側ではない!)の証人として出廷し、同政治団体は実体のある政
治団体であることを明確に証言したのです。2010年1月13
日付の読売新聞の記事を読んでください。
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  準大手ゼネコン「西松建設」から小沢一郎・民主党幹事長の
  資金管理団体「陸山会」などへの違法献金事件で、政治資金
  規正法違反(虚偽記入など)に問われた小沢氏の公設第1秘
  書で同会の元会計責任者・大久保隆規被告(48)の第2回
  公判は、13日午後も、岡崎彰文・元同社取締役総務部長の
  証人尋問が行われた。岡崎元部長は、同社OBを代表とした
  二つの政治団体について、「西松建設のダミーだとは思って
  いなかった」と証言した。公判では、大久保被告が両団体を
  同社のダミーと認識していたかどうかが争点で、審理に影響
  が出そうだ。岡崎元部長は、裁判官の尋問に対し、「二つの
  団体については、対外的に『西松建設の友好団体』と言って
  いた。事務所も会社とは別で、家賃や職員への給料も団体側
  が支払っていた」と説明。前任者に引き継ぎを受けた際にも
  「ちゃんとした団体で、問題はないと言われていた」と答え
  た。昨年12月の初公判で、検察側は、同社が信用できる社
  員を政治団体の会員に選び、会員から集めた会費を献金の原
  資にしていたと指摘したが、岡崎元部長は「入会は自分の意
  志だと思う。私自身は、社員に入会を強要したことはない」
  と述べた。     ――2010.1.13付、読売新聞
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 長谷川学氏は、西松事件についてこの裁判の第1回公判のさい
の岡崎彰文氏の供述のみを取り上げ、第2回公判の同氏の証言を
あえて無視しています。これでは大久保被告は限りなく疑わしい
存在になってしまいます。もし、『WiLL』11月超特大号の
長谷川氏の論文を読んだ人は、このように書かれると、大久保は
クロだなとだれでも思ったでしょう。
 驚くべきことに、登石裁判長も大久保氏にとって有利な証拠で
ある第2回公判における岡崎彰文氏の証言を無視して、第1回公
判の同氏の証言に基づいて判決をいい渡しています。いったいど
うなっているのでしょうか。はじめから大久保氏を有罪にするつ
もりだったといわれても仕方がないでしょう。
 まして日本の大新聞やテレビ──記者クラブメディアで小沢氏
のことを好意的に書くところは一社もないのです。したがって、
小沢氏の心証は限りなくクロに近いものになります。それに加え
て新聞社は世論調査を頻繁に行い、小沢を支持しない人を無限に
作り出そうとしています。あえて意図的にそういう工作をやって
いるようにさえ思えるのです。
 陸山会判決の出た翌日の27日のテレ朝の「ワイドスクランブ
ル」で大澤孝征弁護士は判決について、「裁判員裁判時代の現代
的感覚に基づいた判決」と裁判長を評価し、コメンテーターの須
田慎一郎氏は「この判決はある意味において国民の期待に応える
もの」という妙なコメントをしたのを違和感を持って覚えていま
す。大澤弁護士はもともと小沢氏に対して好意的なコメントをす
る人ではないし、須田氏にしても最近テレビの出演者は下手に小
沢氏の擁護をすると、コメンテーターから外されるので、発言が
慎重になっている傾向があるのです。まさに、「ものいえば唇寒
し」の状況になのです。
 どうしてここまで小沢氏は貶められなければならないのでしょ
うか。これはウォルフレン氏のいう通り、小沢氏への人格破壊そ
のものです。この状態はけっして正常ではなく、異常のそのもの
といえます。      ――── [日本の政治の現況/79]


≪画像および関連情報≫
 ●なぜ自民党は調べないのか/西松建設献金
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  小沢と同様に西松建設から献金を受け取った議員のうち、二
  階を除く自民党議員(森、尾身など)に対し検察側が捜査の
  動きを見せていないことについて、『SAPIO』は角福戦
  争以降歴史的に旧田中派と敵対して来た清和政策研究会の意
  向が検察の捜査に反映されていると指摘した(同誌は、小泉
  政権以降の自民党が検察に対して強い影響力を持つようにな
  ったことを指摘している)。また、陸山会が提出した政治資
  金収支報告書について、「公表義務の無い5万円以下の個人
  献金から西松の政治団体からの献金まで詳細に記載されてお
  り、透明性が高い」と指摘した上で、二階俊博による政治資
  金収支報告書では献金のほとんどが公表義務の無い5万円以
  下の個人献金であるかのように処理されている点を挙げて、
  検察による捜査の公平性について疑問を呈している。一方、
  「政治家側がダミー団体と認識していた明確な証拠がないだ
  け」とする報道もある。       ──ウィキペディア
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「WiLL」.jpg
「WiLL」
posted by 平野 浩 at 03:02| Comment(0) | TrackBack(1) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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陸山会事件判決の論理的分析 1
Excerpt: 陸山会事件判決を論理的側面から考えてみました。その考察を進める上で当ブログの記事を参考にさせていただきました。敬意を込めてトラックバックを送ります。
Weblog: 数学屋のメガネ
Tracked: 2011-10-08 11:49
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