2011年09月30日

●「いまだに天皇機関説に立つ官僚」(EJ第3151号)

 羽毛田宮内庁長官の発言についてさらに考察を続けます。この
問題については、メディアは一方的に「小沢一郎の天皇の政治利
用」と批判を強めていますが、事実はかなり異なるのです。
 たまたま小沢幹事長が大勢の民主党議員を連れて中国に行き、
戻ってきたばかりだったので、メディアは小沢氏が中国側の要請
を受け入れて宮内庁に圧力をかけたというストーリーになってい
るのですが、EJの調査ではまったく事実と異なるのです。小沢
氏は次のように発言しています。
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 私が中国要人を天皇に会見させよと言ったことはない。自分は
 この件には関係していない。    ──小沢幹事長(当時)
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 この件に関し、あの評論家・副島隆彦氏は次のやりとりがあっ
たことを明かしています。これは内閣の仕事であり、幹事長の小
沢氏の仕事ではないのです。
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 事実はどうやら、まず、羽毛田長官のほうが平野博文官房長官
 に対して、天皇会見の要請を拒絶した。そのあと、再び、今度
 はアメリカ国務省が日本外務省に「習近平を天皇に会わせろ」
 と要求してきた。それを外務省は鳩山首相に直接連絡したとこ
 ろ、平野官房長官が再度羽毛田に「なんとかならないか」とお
 願いした。それでも羽毛田が首を縦に振らなかった。そうした
 ら、なんと今度はヘンリー・キッシンジャーを通して、子分の
 中曽根康弘・元首相に直接電話が行き、「習近平を天皇に会わ
 せろ」となった。そこで中曽根は平野官房長官に電話して「習
 近平を天皇に会わせろ」と圧力をかけた。困った平野官房長官
 が再々度、羽毛田に会見を要請したら羽毛田が怒りだして、そ
 れで12日の宮内庁長官としての暴走会見をしました。
           ──副島隆彦/佐藤優著/日本文芸社刊
  『小沢革命政権で日本を救え/国家の主人は官僚ではない』
―――――――――――――――――――――――――――――
 副島隆彦氏の情報というと、その真偽を疑う人もいますが、私
の知る限り、副島氏の情報は正確です。ちなみにこの件に関し、
中曽根氏自身のコメントは産経新聞の記事として載っています。
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 中曽根康弘元首相は、12月24日、都内の事務所で記者団と
 懇談し、天皇陛下と中国の習近平国家副主席との会見を実現さ
 せた政府の対応について「慎重に処理してきたと思う。あの程
 度の時間的ズレは(30日ルールの)原則の枠内のことなので
 認めていい」と述べた。自らが首相官邸サイドに会見の実現を
 要請した点に関しては「ノーコメント」とした。
          ──産経新聞/2009年12月25日付
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 問題はどうして羽毛田長官はここまで抵抗したのでしょうか。
 それは羽毛田長官をはじめとする官僚が、現在でも自分たちが
明治維新以来の「天皇の官僚」という考え方に立っているからで
す。この考え方は、終戦で天皇は象徴天皇になり、天皇の地位は
憲法第3条に示されている通り、天皇は「内閣の助言と承認に基
づいて国事行為を行う」と定められているのですが、意識の方が
それについていっていないのです。これは「天皇機関説」そのも
のであるといえます。
 したがって、今でも官僚は天皇を擁して日本国を支配している
と思っているのです。そのため、宮内庁は「1ヵ月ルール」なる
ものを作って天皇を管理し、その慣例を金科玉条のものとしてい
るのです。これこそ天皇の政治利用そのものです。
 しかもこの「1ヵ月ルール」を守らなかったケースは1995
年以降22回もあり、この事実を羽毛田長官自身が知らないはず
がないのです。それに宮内庁の長官ともあろう人が官房長官との
内輪の話を記者会見を開いて勝手に公表するのは言語道断なこと
であり、思い上がりも甚だしいといえます。
 これに対して小沢幹事長(当時)が「内閣の一部局にすぎない
宮内庁が内閣の指図にあれこれ反対するのは許されないこと」と
批判すると、マスコミは「小沢がそういうことをいうのはけしか
らん」と書き立てて、大騒ぎになっています。
 これほど黒白が明白なことでも、小沢氏がいうと、何でも批判
する人が多いのは明らかに異常です。これは改革派官僚といわれ
る人でも同じなのです。その意見を何回も取り上げている元経産
省官僚の原英史氏も、こと小沢一郎のことになると、羽毛田擁護
に回ってしまうのですから、唖然とします。やはり、官僚の側か
らはそう見えてしまうようです。
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 30日ルールを破って、会見実現を働きかけた鳩山総理や平野
 官房長官の対応に、羽毛田信吾宮内庁長官が異例の批判会見。
 これに対し、小沢幹事長が「日本国憲法、民主主義というもの
 を理解していない人間の発言としか思えない」と強烈に批判し
 て、騒ぎとなった。(中略)しかし、一連の発言は、民主党政
 権の「脱官僚」の危うさを世に知らしめるものだったといって
 よい。特に、小沢氏の「国民の選んだ内閣だから、天皇に何を
 させても自由」と言わんがばかりの発言は、憲法と民主主義に
 対する理解の浅さを露呈するものだった。言うまでもなく、憲
 法上、天皇は「日本国および日本国民統合の象徴」だ。天皇を
 政権の外交の道具として利用することは、「象徴」としての地
 位を脅かしかねないので、あってはならない。「政権として、
 日中関係が重要と考えるので、中国の要人と会っていただくこ
 とを『優位性が高い』と位置付ける」という小沢氏の発想は、
 まさに「天皇の政治理由」そのものであって、認められないの
 だ。     ──原英史著『官僚のレトリック』/新潮社刊
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            ――── [日本の政治の現況/77]


≪画像および関連情報≫
 ●羽毛田長官の事件について/佐藤優氏
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  この間題は、今起きている「小沢政治資金問題」における検
  察の態度と一緒です。このように「官僚が権力を握るのか」
  あるいは「選挙によって選ばれた政治家が権力を握るのか」
  という権力闘争が、日本の国家のあらゆる場面で出てきてい
  る感じがします。ここのところが見える人と見えない人、こ
  の基本線が見える人と見えない人で、今、世の中が違って見
  えてくると思うのです。村上春樹さんの『IQ84』(新潮
  社刊)を読むと問題の本質をとらえることができます。ある
  特殊な人たち、ある特定の経験を遂げた人たちには、月が2
  つ見えるというのです。『IQ84』というのは、「198
  4」、と「クエッション(Q)」の84を含意しています。
  別の世界ではなくて、同じ世界がある人にはこう見えて、別
  の人にはこう見える、と。仏教で言うところの「地獄の血の
  池」と、「天上の蓮の池」が同じというのと一緒です。だか
  ら、2009年12月の羽毛田長官の不当な会見に対しても
  どこに自分の視座を置くかによって、全然異なる事件に見え
  るはずです。   ──副島隆彦/佐藤優著/日本文芸社刊
  『小沢革命政権で日本を救え/国家の主人は官僚ではない』
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副島隆彦氏.jpg
副島 隆彦氏
posted by 平野 浩 at 03:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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